暗闇を超えてきた君が僕を離してくれない

もこ

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僕は君の趣味じゃないし、君は僕の趣味じゃない

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「色が白くてさ、そして真っ赤な唇で。いつも公園で俺を見ると駆け寄ってきたんだ。『お兄ちゃん!』って。」

「近所の子?」

 穏やかな笑みを浮かべた嶺さんが、遠くを見つめて思い出に浸っていた。少し無精髭が生えた顔。それでもイケメンなのには違いない。起きた時には明らかにクシャクシャだった癖のある髪は手櫛を通したのか、いつものように整っていた。

「たぶんな。でも俺の母親が死んで、引っ越しちまったから分からない。もしあそこに住んでいたら、今頃付き合ってたかもしれないな。美人になっただろうな。」

「そうですか。」

 黒のTシャツに目を移す。僕が寝室から出た時には、もう半袖のTシャツを着ていた。下はパンイチのままだけど……。寒くはないのか?

「友だちとサッカーしている時にも割り込んできてさ。女の子だっていうのに足が速くて一生懸命に追いかけてくるんだ。」

 嶺さんの言葉でその情景が目に浮かんできた。きっと遊具がぐるりと周りに配置された公園で、中が広くなっているんだ。子どもたちがサッカーやドッジボールで遊ぶ場所は芝生が削られて地面が剥き出しだけど、遊具の周りは草がいっぱいで、蝶や虫もたくさんいて……。

「残念でしたね。」

「そうだよな。」

 それからは無言で、嶺さんが作ってくれた味噌汁を飲み続けた。

 

 丼いっぱいのなめこ汁をお腹に収めた僕は、お礼を言って早々に嶺さんのマンションを後にした。マンションは佐々木公園の北側にある6階建て。そんなに高くはないけど、敷地が広くてわりと目立つ。戸数は多そうだ。

 僕のマンションまでは直線距離で3kmほど。街を抜けるのに時間はかかりそうだけど、かつて歩いたことのある道を見つけて、記憶を辿りながら、のんびりと自分の家へと向かった。
 
『ズボンがヨレヨレだ。』

 嶺さんの家に着いた時のことは何ひとつ覚えていない。微かにタクシーに乗ったような記憶があるだけ。昨日の朝から丸一日着ていたワイシャツとスラックスは、ヨレヨレになっていた。

 今はネクタイも外してボタンも開けてある。まさに飲みに行って一晩潰れていました、というような格好。

『ま、いいか。』

 まだ9時前の休日の街は人通りも少なく、静かだった。とりあえず家に帰ったらシャワーを浴びて、もうひと眠りしよう。仕事のことを心配することのない最高の3日間の休みが始まったんだ。

 僕はあと1時間程で着くはずの自分の城へ向かい、今日一日をどんなふうに過ごすか計画を立てながら、ただ足を動かし続けた。

 

 
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