暗闇を超えてきた君が僕を離してくれない

もこ

文字の大きさ
38 / 100
僕の気持ちはどこにある? そして君は今、どこにいるの?

5

しおりを挟む
 今まで打ち込んでいた仕事をファイルに保存して確認し、パソコンをネットに繋ぐ。検索画面でキーワードを打ち込む手が震えた。

 ニュースと打ち込んだ途端に出てきたのは、台北発の便が空港を出発して程なく消息を経ったという記事だった。

「これ、こ、こ、これに嶺さんが乗ってたというわけではないでしょ?」

 一縷の望みに縋る思いで呟く。僕の言葉を聞いた伊東さんが、うううっと奇妙な呻き声を上げた。

「商談が予定通り終わったから計画通りの便で帰国すると、朝、連絡があったらしい。そして、その便が……。」

 ニュースで見る限り、消息をたったのは3時間近く前。本来ならば後1時間ほどで羽田に着くころだ。確か予定では、午後3時前には帰国して、嶺さんは夕方会社に戻るはずだった。

「い、い、い、伊東さん、み、嶺さんの電話番号は知っていますか?」

「会社の携帯も、個人の携帯も知ってる。両方かけたけど繋がらねえ。」

 何か腹の奥底から迫り上がってくる恐怖が僕の声を震えさせた。また何かカチャカチャとキーボードを叩き始めた伊東さんは、こちらを見ようともせずに呟いた。

「も、もう一度。伊東さん、もう一度。」

 僕の言葉を聞いた伊東さんが、ズボンのポケットからスマホを取り出して操作をし始めた。嶺さんに電話をかけているに違いない。僕は固唾を飲んでそれを見守っていた。

「……やっぱりだめだ。機内モードにしていたのか、それとも……。」

 その先は言わずとも分かる。僕は全く仕事に手がつけられず、それ以上ニュースを漁る勇気もなく、ただただ第一報のニュースを伝えるパソコンの画面を見ながら呆然としていた。

「伊東くん、聞いた?」

 部屋の外の通路は、相変わらず足音と話し声でいっぱいだった。扉が開いて鈴木さんが飛び込んできた時、何人かの女の人がこちらを覗き込んでいるのが見えた。

「ええ、今ネットで情報を集めていたところです。」

「電話も繋がらないって。」

「知ってます。」

「……顔が真っ青よ? 伊東くん大丈夫?」

 鈴木さんが僕の左に座り、斜め前の伊東さんに向かって前のめりになって呟いた。

「……かろうじて。まだ。」

「出発の前の日にも一緒に飲んだって言ってたわよね。」

 鈴木さんの言葉に、また伊東さんがうううっ、と唸り声を上げた。

『嶺さん……。』

 伊東さんと、とても仲が良かったことは知っている。でも僕も、僕だって……。でもそれ以上は考えられずに、ただパソコンの画面を見つめているより他はなかった。

「やっぱり、もう一度出てくるわね。」

 今戻ってきたばかりの鈴木さんは、そう言うとすぐに席を立って出ていった。僕も何かしたいのに何もできない。ニュースを漁る気持ちにもならない。

 ただ何もしないままに、再び顔を覆うようにして俯いた伊東さんを眺めていた。その時は、嶺さんの無事を願う気持ちだけしかなかった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

圭琴子
BL
 この世界は、αとβとΩで出来てる。  生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。  今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。    βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。  小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。  従って俺は戸籍上、β籍になっている。  あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。  俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。  今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。  だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。  だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。  学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。  どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。  『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

処理中です...