暗闇を超えてきた君が僕を離してくれない

もこ

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もうどこにも行かないで? 僕を独りぼっちにしないで?

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 シュシュシュシュシュシュシュシュ

 何かの音がする。頭の隅が覚醒してそんなことを思った。でも今見ていた夢の続きを。

 嶺さんが帰ってきて、茶色の髪に手櫛を通しながら笑いかける。健康そう。体にも顔にも傷一つない。良かった。後ろにいる女性は? 結婚したの? 女性の肩を抱いて僕の隣にいたセイちゃんと握手を……。

 ヒタ、ヒタ、ヒタ……コン

『?』

 コン、という音で目が覚めたことを実感した。重い瞼をこじ開けるようにして薄目を開ける。目の前に黒い短パンに同じ色のTシャツを着た男が後ろを向いて立っていた。目の前には例の窓。カーテンが開いている。

『セイちゃん……。』

 何をしてるの? 帰るつもり? 僕を置いて行かないで。言いたいのに言葉が出せない。重い瞼がまた降りてきていた。

 ベッドが揺れる……。僕の後ろに誰かが横たわって、温かい腕が僕の左腕に重ねられた。

「ベッドの向きが違うだろ。南枕の方がいい。」

 背後で聞こえる呟き。毛布から出て冷たくなっていた腕が、温かい体温を移しとっていく。気持ちがいい。そのまま、また深い眠りに落ちていった。



 
 目が覚めた。目の前には喉仏。羨ましくなるぐらいの大きさだ。僕もこのぐらいあったら、セイちゃんぐらいの低い声が出るのだろうか。無精髭が出てる。僕も……。

『セイちゃん!?』

 右腕を動かそうとして我慢する。僕は何故かセイちゃんの体にしがみつくようにして寝ていた。右足も絡めて。僕の耳のところにあるのは……セイちゃんの右腕!?

『!』

 やばい、ヤバすぎる。スースー寝息を立てているセイちゃんは熟睡中。でもヤバいんだって。僕の股間が、健全男子を地でいくように盛り上がってる。それこそセイちゃんの体に押し付けるように……。

 セイちゃんが起きないようにゆっくりと、ゆーーっくりと足を離す。そして少しだけ後退を。

『トイレに行きたい。』

 腕を外したら起きちゃうだろうか? 頭を上げたら?

『っていうか、何で腕枕してるわけ?』

 夕べはリビングでお休みの挨拶を交わしたはず。僕のお気に入りの水色Tシャツを「似合うな。」と言ってくれたセイちゃん。セイちゃんも僕のところの風呂に入って全身黒づくめでキメていたんだ。

『くろ? 黒?』

 何か思い出しそうで思い出せない。何だっけ? ええっと……。

「おはよ。」

 頭の上から降ってきた言葉に、ハッとして顔を上げる。セイちゃんがバッチリ目を開けて、こちらを見ていた。

「お、お、おっ、おはよ。」

 慌てて吃ってしまった僕の声を聞いて、にっこり笑ったセイちゃんがの唇が、僕の額に落ちてきた。

 


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