不遇な神社の息子は、異世界で溺愛される

雨月 良夜

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第四章 火精霊の棲み処へ

不気味な変化

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金色の蔦がよりゴーレムの腕に食い込み、ギシギシと軋む音が聞こえる。両腕の動きを封じたと同時に、ヒューズがゴーレムの左腕、俺とスフェンが右腕を駆け上がった。

ヒューズが先に頭部に到達し、長剣を左頭部にむけて勢いよく振り下ろした。

グゥオォォォオー

ゴーレムの口から悲鳴に似た絶叫が発せられ、周囲にビリビリと木霊した。左頭部が粉々に砕ける。


俺とスフェンは、傾くゴーレムの右腕をなおも駆け上がる。パジャッソまであと数メートルまで来ていた時だ。


「うぜえ!!!てめえら、食い殺せ!」

ゴーレムの右肩から立ち上がったパジャッソの呼応する。狼型の獣が6匹が地面から飛んで、俺たちに向かってきた。正面と後方から1匹ずつ、左右から2匹ずつ。周囲を囲まれた。


「ぬるい。」

スフェンが右手に握っていた長剣に、ビリっと雷が纏ったのが一瞬だけ見えた。次の瞬間にはドゴォオンっという雷鳴が響き、周囲の6匹の魔物を雷が貫いた。感電した魔物は力なく地面に落ちていく。


「ゴーレムが倒れます!」

ヴェスターの声が聞こえる。
ヒューズに頭部を砕かれたゴーレムが絶命したようだ。力を失った岩の巨体が大きく前に傾いている。
ゴーレムが倒れる勢いを利用して、俺とスフェンが同時にゴーレムの岩肌を蹴り上げた。

パジャッソへと日本刀の刃を向け、袈裟切りをしようと振りかぶったときだった。


「クソがっ!」

パジャッソが悪態を吐いたと同時に、身体から黒い邪気を一気に放出した。視界を黒い粒子で覆われ、一瞬パジャッソの姿を見失う。


「っ!?」

咄嗟に俺はスフェンにも結界魔法を施し、邪気に当てられない様に後ろに飛んだ。視界の端でスフェンもゴーレムから離れていくのが微かに見える。

周囲にはかなり濃い邪気が広がり、霧のように煙たい。感知でパジャッソの気配を感じるため、逃げたわけではないようだ。
気味の悪い黒色の靄が、風に乗って薄くなっていく。

 
「アハハッヒャー!イイねー!サイコーだ!」

甲高くしゃくりあげたパジャッソの笑い声がする。完全に視界が晴れたとき、目にしたものは異形だった。

 
赤黒く、血を滴らせる肉そのもののような色の全身。筋肉が異様なほど隆起した身体。鋭く刺さるような爪。
背中にはコウモリのように黒く骨ばった大きな翼。
顔全体も赤黒く変化し、目は吊り上がる。赤色の瞳孔はさらに血走り狂人的になった。
ピエロのような服は上半身が千切れたのだろうか。ダボっとしたズボンのみを身に着けている。


「使えねえ岩のやつも、吸収すれば少しは役に立ったようだなぁっ!!」

舌先が細い、顎よりも長い舌を出して、露骨にパジャッソが舌なめずりをする。

先ほど地に伏せたはずのゴーレムの姿がどこにも見当たらない。本当に、あの巨体をその身体に吸収してしまったのだろう。


「なんとおぞましい姿だ……。」

スフェンが眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように呟いた。


「いくぜぇぇぇぇーーー!!!!」

叫びながらパジャッソが両手を天へと向ける。中心が赤く、周囲を茨のような黒色の闇が覆う球体が現れる。その球体はパジャッソの手の平で大きくなり、俺に向けて手を振り下ろした。

途端に地面には、黒い針を思わせる衝撃波が地面を駆け抜けて、俺に向けて一直線に放たれた。

その衝撃波を、なんとか俺は左に身体を避けた。魔法の発動を感知で感じ取った俺でも、着ていた服の裾が切られてしまっている。
後ろで攻撃を喰らった魔物の身体が、綺麗に真っ二つに切れた。地面には刃が食い込んだ亀裂が残っている。

俺の周りにいたパーティーメンバーの魔力が、高まっていくのが分かった。皆が警戒を強めて臨戦態勢に入る。


『……ミカゲ、俺たちで敵の動きを止める。その間に矢を射ろ。浄化の矢で完全に動きを封じて、魔石を剣で砕け。』

敵に知られないために、伝令魔法によってスフェンが短く指示をする。周囲の邪気が濃い。このまま邪気に当てられ続ければ、皆の身体が重くなり動きが鈍くなるだろう。

呪文詠唱だけでの浄化も考えたが、パジャッソから生み出される邪気にはキリがない。弓矢で戦闘不能にまで持ち込むほうが、確実に邪気を抑えられるだろう。
他の皆にも一斉に指示は伝わっているようだ。俺と皆が小さく頷いた。


『行くぞ。』

スフェンがそう言ったと同時に、皆が一斉に動き出した。

俺は剣を鞘に納めマジックバッグから和弓を取り出す。白銀の矢を和弓に番えて、いつでも放てるように魔力を込めた。ギリギリと弦を引く。

ヴェスターが俺を守るために、傍らで光の結界を築いてくれる。ヴェスターが創り出した結界は半円のドーム型。優しく温かな光が俺とヴェスターを包み込む。

魔物たちが俺とヴェスターを襲おうと近づくが、障壁に触れようとした瞬間に光の蔦によって身体を縛られた。容赦なく光の蔦は魔物の脳天を貫いたり、締め上げていく。
ヴェスターが結界内から周囲を見回しつつ、光魔法で敵を屠っていく。

 
「ミカゲは矢を射ることだけに、集中してください。」

 
俺はヴェスターに言われるまま、弓を構えながらパジャッソの動きを注意深く探る。

俺たち以外の4人は、パジャッソの動きを止めるために地を駆けていた。

 

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