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第6章 友達の家に遊びに行きます、夏休み後半戦
温泉都市、友達の家に遊びに行きます
しおりを挟む何はともあれ、無事に鳥籠を脱出した俺たちは、無事にダンジョンを攻略した。鳥籠から無事?に脱出して、カプリスに冒険者装備を返してもらう。
「記念に、その装備あげるよ!」
「……」
カプリスが指を1回鳴らしただけで、ドレスから冒険者装備に変わったのには驚いた。マジックバッグの中には、勝手に『漆黒のドレス一式』という装備が、新たに追加されて遠い目をした。
しかも、『譲渡、売買、破棄不可』と言う文字が頭に浮かんでくる。何てことだ、手放せない代物になっている。
……いや、もう着ないからな……??
ご丁寧にカツラまでセットについてきたけど、着ないからな?
カプリスと、漆黒の神官服を着た兄であるリベルは、俺たちをダンジョン外まで転移魔法で送ってくれた。
「君たちなら、いつでもこの空間に来て良いよ。また遊びにきてね?」
鳥籠があったのはダンジョン『幻想遺跡』の最奥で、2人の暮らしている城の中だったらしい。ダンジョンの入り口に、俺たちがここへ直通で来れる転移魔法陣を用意してくれるという。
大人びた目を僅かに揺らして、寂しそうに微笑んだカプリスに、俺は「またな」と言って外へと出た。
ソルの長剣の柄に、ここに来るまでには無かった青色の宝石が嵌めこまれている。どうやら、無事に魔道具も手に入ったらしい。あのダンジョン入った本来の目的も達成できた。
それからの休日は、孤児院の皆に王都のお土産を渡しに行って一緒に遊んだり、カンパーニュの町で簡単の冒険者の依頼を受けたりして、穏やかに過ごした。
アトリともお茶をしながらゆっくりと話が出来たし、とても充実した日々だった。気が付けばあっという間に、ガゼットの領地に行く日が来てしまった。
「それじゃあ、今度来るのは冬休みになるだろうけど、それまで皆元気でな」
「学園でも頑張れよ!ソル、ヒズミのこと頼んだぞ!!」
「任せろ。皆も元気で」
顔馴染の冒険者が、乗り合い場所乗り場までわざわざお見送りに来てくれた。右肩のモルンは、年配冒険者に貰った木の実のたくさん入った布袋を抱えて、満足した様子でご機嫌に座っている。
町を出るときは、町中の人が別れの挨拶と「また、帰っておいで」という言葉を言ってくれた。また、ここに帰ってきて良いんだと、心にじんわりと広がる温かさに自然と頬が緩んだ。
「ヒズミ、ソル。身体に気を付けて。学園での思い出は人生でとても貴重な経験になるでしょう。ぜひ楽しんでください。また、お会いしましょうね?」
アトリが俺とソルを、そっと抱きしめて送り出してくれた。そうして、俺たちはガゼットの領地へと旅立った。
ガゼットの領地は、カンパーニュの町から馬車を乗り継いで数日かかる。行きと同じように護衛の依頼をしつつ、いくつかの町を経由した。
「立派な街道だね。カンパーニュの田舎道とは大違いだ」
観光地と言うだけあって、ガゼットの領地までいく街道は綺麗なレンガで整備されている。時々豪華な馬車が行き交うから、貴族もこぞって訪れているのだろう。
雲を突き抜けるほどの大きな火山が見えると、温泉都市『フェーレース』が目前という証拠だ。立派な石造りの門はかなり大きく、沢山の門番たちと係員がせっせと手続きをしていた。
身分証明書を門番に見せると、事前に俺たちが来ることが知れ渡っていたらしい。別の馬車に乗るように門番に指示をされて、俺とソルは乗り心地の良い馬車へと乗り換えたのだ。
「賑やかで、楽しいな。」
「異国の人もいるみたいだね。」
観光客の買い物を楽しむ声や、街道をはしゃいで走る子供の足音が耳に楽しい。異国の言葉も飛び交っているなが聞こえてくるから、国外から観光客が来ているようだ。
見上げる程に高い建物は、どれも趣があって上品だ。建物の影から沸き立つ白い湯気。そこかしこから湯気が立ち昇り、どことなく街もほのかに霞ん見える。
「あっ、温泉まんじゅうがある」
こじんまりとしたレンガ造りのお店は、軒先で大きなせいろから湯気を立ち上せていた。煙が上るせいろには、可愛らしい白色の丸が連なっていた。
看板にも確かに『温泉まんじゅう』と書いてある。乙女ゲームでも、温泉まんじゅうは外せなかったようだ。お店近くのベンチに腰掛けたカップルが、温泉まんじゅうを半分にして仲良く食べていた。
ちらりと見えた温泉まんじゅうの中の餡が、見事な蛍光色のショッキングピンクだった。
中身が何なのか気になる……。
「凄い……、川全体が温泉なんだね」
馬車に乗りながら、窓から見える町並みを見て俺とソルは感嘆の声を上げた。俺もゲームで、一度しか訪れたことが無い場所だけど、景色の美しさに興奮したことをよく覚えている。
「確か、温泉都市名物『大露天風呂』だったか?」
渓谷の地形を生かして川を見下ろすように、崖に老舗の温泉宿が立ち並ぶ。透明な水面に趣のある景色が映るだけでも綺麗だ。
でも、驚くのはここからである。実はこの川は温泉で出来ていて、露天風呂として実際に入ることができるのだ。
所々にそれぞれの宿が作った東屋と、趣向を凝らした湯舟が川の奥から川下の先までずっと続く。いくつもの露天風呂が続いていく様は圧巻で、見ているだけでも楽しい。
壮大なのに、どこか穏やかで温かい雰囲気が漂うのは、温泉に浸かっている人の顔が心地よさそうに綻んでいるからだろう。
馬車は川に掛かる橋をのんびりと通過して、賑やかな大通りを通り越し奥地の山岳部へと進む。緑が多くなり森林の澄んだ空気が包む中、突然そこは現れた。
「ガゼットって、やっぱり貴族なんだよな……」
平民である俺たちにも気さくに接してくれるガゼットだが、住んでいる屋敷を見るとやはり格式の高さが伺える。
エメラルドグリーンの湖畔に建つ大きな屋敷。横にも縦にも大きい屋敷は、落ち着いたベージュの石壁に、赤色の屋根と重厚で趣がある。なんか、隠れ家的高級ホテルみたいだな。
馬車は森の中を抜けて、湖畔の屋敷の鉄門を止まることなく通過した。広い敷地をさらに馬車が進むと、屋敷の玄関に到着する。既に開かれた重厚な扉の向こうに、赤茶色の短い髪をした青年が、そわそわとしているのが見えた。
青年の猫のように目つきが悪い緑色の瞳と目が合うと、ニヤッと口角を上げた。
「ヒズミ、ソレイユ。ようこそ、我がフェーレース家へ」
終業式以来となる、ガゼットとの再会だった。
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