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第一章『性なる力に目覚めた勇者!?』
第12話 お姫様を迎えに
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窓の外の景色が石畳から草原に、さらに今度は深い森林に切り替わる。
今まで乗ったことも見たこともない豪奢な馬車の中。
場合によっては物語に出てくるお姫様みたいな気分を味わえたのかもしれない。
だが、生憎今は身体を縄で縛られている。
(これって誘拐、よね)
馬車は駆け足で森を駆け抜けている。
荷物用だろうか、後方にはこちらに比べて質素な馬車が追随していた。
ヒミカの乗る馬車には、御者以外に二人の騎士が、頭まで厳めしい鎧を身に着けたままヒミカを取り囲んでいる。
隣に座るのはどこか気怠気な雰囲気を漂わせた騎士。多分四十代くらい。腕を組み、無言のままヒミカを監視している。
一方、正面に座る騎士は鎧姿こそ一緒だが、年齢は分からない。随分と小柄で、ヒミカを前にどことなく落ち着かないような様子だった。
鎧の特徴から、彼らはトーラスの街に近い、この大陸を統べるセントエルディアの王国騎士団であることが分かる。事実、彼らは自分たちをそう名乗った。
「一体、貧乏人の私を捕らえて何のつもりですか!」
「と、捕らえた訳ではありません。貴方が大人しくしてくだされば縄で縛るような真似は……」
小柄な騎士は身長だけでなく気も小さいのか思ったより低姿勢だった。
「じゃあ何ですか? 私を誘拐してどこぞの変態貴族にでも売り渡す気?」
「変態貴族……………………? そ、そそんな破廉恥なことは決していたしません!」
「今の間は? 破廉恥って何? 一体何を想像したわけ!?」
「いえ! 我々は誇り高くて高潔なセントエルディア王国騎士団! けっして勇者様のような美しい方をオカズに卑猥な妄想をするなど!」
「私、今ここで舌を噛んでもいいかしら?」
「すまんな嬢ちゃん。こいつはまだ騎士になって日が浅いんだ。騎士団は野郎ばかりだからつい舞い上がっちまってるのさ」
無言だった隣の騎士がやれやれといった仕草をしながら弁明した。
図星だったのか、小柄な騎士は反論する気もなく、しょんぼりと肩を落としている。
「変態貴族に売り渡さないのなら、なんで私は貴方達に連行されているの」
「はぁ……。ですから、それも既に十回以上説明している通り……」
小柄な騎士がもう何度目か分からないため息をついて、再度ヒミカを連行している経緯を話し始めた。
「昨夜、トーラスの街の上空で夜空へ迸る黄金の光が見えました。あれは、伝承に聞く勇者誕生の知らせ。そして同時に世界が闇に包まれることの暗示でもあります。我々は危機に備えるため、勇者様を我が王の前に連れてくるよう、王に命令されております」
なんということ。
ヒミカが自慰行為中に感じた光は幻覚などではなく、家の屋根を突き破り遥か遠くのセントエルディア城からも見えたらしい。
(うん、意味がわからない)
「知りませんって。勇者、世界の危機? そんなもの、今日一日を生きる私に何の関係もないでしょう? 早く妹の所へ返してください!」
「ご安心を。我がアウザー王と謁見して頂ければ、すぐにまた会えますよ」
「謁見って何をするんですか? 私みたいな小市民に構う程、王様は暇なんですか?」
「いえ。王は他でもない勇者であるヒミカ様をご覧になるため、こうして我々を差し向けたのです」
「要件は? まさか魔物を倒すための剣術でも教えてくださるんですか? 冒険者ですらない踊り子の私に? メイドとして雇ってくれた方が役に立つと思いますけど」
「それは玉座の間に着いてから、王から直々にお伝えします」
「なら王様の方が来てください!」
「我が王は今年で齢一〇〇のご老体ですので。それと、城へ着きましたら王へのご無礼は控えますようお願い申し上げます。王様はその……少々気難しい方でして」
「今一番気難しいのは私だと思いますけど」
「す、すみません」
こんなやり取りをもう二日も繰り返していた。日が暮れると近くの宿屋で休憩し、日の出と共に出発する。
小柄な騎士は終始あわあわしているし、隣に座る騎士はやる気がないのか、以降話すことはせず、ずっと腕を組んだまま座っていた。寝ていたのかもしれない。
腹立たしいことに、騎士達はずっと兜を取らないものだから表情が見えず、ヒミカがどれだけ文句を言ってもまるで響いているように見えなかった。
(疲れた……。ユミカに会いたい)
今まで乗ったことも見たこともない豪奢な馬車の中。
場合によっては物語に出てくるお姫様みたいな気分を味わえたのかもしれない。
だが、生憎今は身体を縄で縛られている。
(これって誘拐、よね)
馬車は駆け足で森を駆け抜けている。
荷物用だろうか、後方にはこちらに比べて質素な馬車が追随していた。
ヒミカの乗る馬車には、御者以外に二人の騎士が、頭まで厳めしい鎧を身に着けたままヒミカを取り囲んでいる。
隣に座るのはどこか気怠気な雰囲気を漂わせた騎士。多分四十代くらい。腕を組み、無言のままヒミカを監視している。
一方、正面に座る騎士は鎧姿こそ一緒だが、年齢は分からない。随分と小柄で、ヒミカを前にどことなく落ち着かないような様子だった。
鎧の特徴から、彼らはトーラスの街に近い、この大陸を統べるセントエルディアの王国騎士団であることが分かる。事実、彼らは自分たちをそう名乗った。
「一体、貧乏人の私を捕らえて何のつもりですか!」
「と、捕らえた訳ではありません。貴方が大人しくしてくだされば縄で縛るような真似は……」
小柄な騎士は身長だけでなく気も小さいのか思ったより低姿勢だった。
「じゃあ何ですか? 私を誘拐してどこぞの変態貴族にでも売り渡す気?」
「変態貴族……………………? そ、そそんな破廉恥なことは決していたしません!」
「今の間は? 破廉恥って何? 一体何を想像したわけ!?」
「いえ! 我々は誇り高くて高潔なセントエルディア王国騎士団! けっして勇者様のような美しい方をオカズに卑猥な妄想をするなど!」
「私、今ここで舌を噛んでもいいかしら?」
「すまんな嬢ちゃん。こいつはまだ騎士になって日が浅いんだ。騎士団は野郎ばかりだからつい舞い上がっちまってるのさ」
無言だった隣の騎士がやれやれといった仕草をしながら弁明した。
図星だったのか、小柄な騎士は反論する気もなく、しょんぼりと肩を落としている。
「変態貴族に売り渡さないのなら、なんで私は貴方達に連行されているの」
「はぁ……。ですから、それも既に十回以上説明している通り……」
小柄な騎士がもう何度目か分からないため息をついて、再度ヒミカを連行している経緯を話し始めた。
「昨夜、トーラスの街の上空で夜空へ迸る黄金の光が見えました。あれは、伝承に聞く勇者誕生の知らせ。そして同時に世界が闇に包まれることの暗示でもあります。我々は危機に備えるため、勇者様を我が王の前に連れてくるよう、王に命令されております」
なんということ。
ヒミカが自慰行為中に感じた光は幻覚などではなく、家の屋根を突き破り遥か遠くのセントエルディア城からも見えたらしい。
(うん、意味がわからない)
「知りませんって。勇者、世界の危機? そんなもの、今日一日を生きる私に何の関係もないでしょう? 早く妹の所へ返してください!」
「ご安心を。我がアウザー王と謁見して頂ければ、すぐにまた会えますよ」
「謁見って何をするんですか? 私みたいな小市民に構う程、王様は暇なんですか?」
「いえ。王は他でもない勇者であるヒミカ様をご覧になるため、こうして我々を差し向けたのです」
「要件は? まさか魔物を倒すための剣術でも教えてくださるんですか? 冒険者ですらない踊り子の私に? メイドとして雇ってくれた方が役に立つと思いますけど」
「それは玉座の間に着いてから、王から直々にお伝えします」
「なら王様の方が来てください!」
「我が王は今年で齢一〇〇のご老体ですので。それと、城へ着きましたら王へのご無礼は控えますようお願い申し上げます。王様はその……少々気難しい方でして」
「今一番気難しいのは私だと思いますけど」
「す、すみません」
こんなやり取りをもう二日も繰り返していた。日が暮れると近くの宿屋で休憩し、日の出と共に出発する。
小柄な騎士は終始あわあわしているし、隣に座る騎士はやる気がないのか、以降話すことはせず、ずっと腕を組んだまま座っていた。寝ていたのかもしれない。
腹立たしいことに、騎士達はずっと兜を取らないものだから表情が見えず、ヒミカがどれだけ文句を言ってもまるで響いているように見えなかった。
(疲れた……。ユミカに会いたい)
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