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第二章『えっ! 踊り子なのに魔物と戦うんですか!?』

第33話 襲撃 ★

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「村長!? 何してるんですかあんた!」
 
 獣のような唸り声を上げているが、間違いなく先ほど笑顔で鍋をご馳走してくれた村長だった。

「ううぅぅウウッ! ウム! ハラマセル! コドモ! アトツギィッ!」

 ヒミカの太ももを膝で割って押し付けられ、荒々しく胸を鷲掴みにされる。

「いたっ! この、何するの、よ!」

「ボニュウ、ミルク! イノチノアカシ!」

 胸を寄せて、両の乳首を一気に唇に挟んで強く吸われる。
 舌でベロベロと突く動作は、本気で乳を絞り出すようだった。

「あぐっ! あっ、あっ……ン! 母乳なんて、出るワケ…………んんっ」

 ヒミカの股に魔の手が伸びる。
 魔力加工されているベラはいくら引裂こうと破れない。
 苛立った村長はベラを諦め、代わりに内側のショーツを引き裂いた。
 
 ベアウルフのような鋭い爪だった。

「ひっ」

 ヒミカが絶句したものは、こちらに狙いを定めている男の生殖器だった。
 
 大きい。何より長い。
 異常なほどに浮き出た血管が剛直を取り囲み、驚くことに亀頭のようなエラが数段にも渡って波打っている。
 とても人間の雄のモノとは思えない異形のモノを挿入され、射精されたらどうなってしまうのか想像もつかない。

「イレル。……ツキサス。タクサン、ダス。ダス! タクサン、ハラマセルゥぅウ!」

「いやああああああっ!」

 勇者とはいえ、【踊り子】の非力な腕力では村長を跳ねのけられない。

 異形と化した肉槍が女陰に押し当てられる。
 それだけで気持ちいいのか、亀頭からぶしゅうっ! と泡だった粘液が射精のような勢いで零れた。

(やだ……! また知らない男に犯されるっ!)

 思わず目を瞑った瞬間、ガツン! 鈍い音が破裂した。
 ゆっくり瞼を開くと、白目を剥いて倒れる村長と、両手で盾を握ったユーマの姿が映っていた。

「この外道ッ! 勇者様に触れるどころか、強姦するなんて……ッ!」

 いつになくキレていた。

「ユー、マ……?」

「軽く脳震盪を起こしているだけで、殺してはないです。(殺してやりたかったけど)。勇者様はお怪我ありませんか?」

「大丈夫。でも、なんで村長が」

「分かりません。依頼主から襲われるクエストなんて聞いたことないです。ひとまず、そこの大木に縛っておきますか」

 手際よく鞄から縄を取り出し、近くの大木へ村長を引きずっている。
 恐ろしい事に、下半身だけ未だ勃起したままでゆらゆらと鎌首をもたげていた。
 まるで、性交できなかったことを恨んでいるかのように、我慢汁が噴き出している。

「私達、騙されていたんだわ」

「スライムとゴブリン相手に金貨十枚はやっぱりおかしい。お金に目がくらんでしまい、もう少し警戒するべきでした」

「でも、一体何のために」

「分かりません。この場合、報酬ってどうなるんでしょうかね」

 ユーマが背を向けて村長を縛りつけている。
 その様子を、いそいそと身だしなみを整えながら見守るヒミカは何かに気付いて叫んだ。

「ユーマ、危ないっ!」

 着崩れしたまま、膝立ちしているユーマに体当たりして突き飛ばす。
 混乱したユーマが振り向いた時には、ヒミカは何かどろっとしたものに頭から呑み込まれていた。

「……っ!? ごぼっ」

「スライム!?」

 ヒミカの上半身をすっぽりと覆うほどの大きな粘塊が、木の上からずるりと落ちてきたのだ。

「がっ……ごぽぽっ……!」

 両手に渾身の力を込めてもがく。
 なんとかひっぺがして顔を出す。口を塞がれると呼吸できなくなる恐怖があるが、所詮はスライムの力だ。
 なんとかなる──そう思っていたのだが。

「こ、のっ。絡みついて取れない」
 
 引き剥がしたはいいものの、ネバネバして弾力性のある体躯はヒミカから離れることはなく、今度は細く伸びて手首から肩にかけて絡みついていく。

「いやぁ! はーなーしーてーっ!」

 まるで知性があるかのようにスライムは巧みに全身を使い、ヒミカを手近な大木へ磔にする。

「また呑み込まれる……!? ユーマ、ぼうっとしてないで早く私を──」

「助けてくださーい! 勇者様ぁ! ま、魔物が!」

「それは私のセリフ!!」
 
 救助を求めたはずの頼れる(?)相方は、離れた位置でどこからともなく現れたゴブリンの群れに囲まれていた。

「こいつら、何か様子がおかしい!」

 スライムとゴブリン。クエストの依頼を思い出す。

「目が異様に黒い……? 気を付けて! そのゴブリンは、スライムの仲間よ!」

 口封じをするかのように、ゴブリンたちはユーマを無視してヒミカに襲い掛かった。
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