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パーティー
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パーティー前日。僕は明日の服をすぐに着れるようハンガーにかけておく。
この服はゾーイが贈ってくれたものだ。服くらいは自分でと言ったのだが、「いいから」と言われ受け取ってしまった。
女性に贈られるなど情けないが、侯爵家の僕の予算はあまりないので有り難い。
白地のスーツに所々に赤の装飾があしらわれたその服は、まさにゾーイの婚約者ですと言わんばかりだ。
ブローチには大きなルビーがあしらわれていて、ゾーイとお揃いなのだという。
その服を綺麗に掛けた後、最後にダンスのステップやエスコートの仕方を復習する。
考えてみれば僕にとっては初めてのパーティーだ。
学内で、しかも平民としての参加なのでハードルが低いことには安心したが、それでもパートナーであるゾーイの評判まで掛かっているのだから手は抜けない。
そして一通り確認を終え、早めに眠りについた。
翌日。
今日が本番だと気合を入れながら目を開ける。
パーティーは午後からだが、慣れない服に髪のセットなどもあるため早めに準備をしなくては。
そう思って起き上がったのだが…
目の前の惨状に目を疑った。
「こ、これは…どうして!?」
僕が今日着る予定だった服がボロボロに切り裂かれている。せっかく今日のためにとゾーイが贈ってくれたものだというのに…
そして部屋をよく見れば切り裂かれたのはその服だけではなかった。
制服から数少ない私服に至るまで全ての服が着れない状態にされている。無事なのは今来ている寝巻きだけだ。
最近は大した嫌がらせも無かったので安心していたが、まさかこんなことになるなんて…
僕は今日をどう乗り越えようかと頭を抱えた。
(ゾーイに行けなくなったと伝言する?でもそれだと彼女のパートナーがいなくなってしまう…)
ゾーイに恥をかかせるのだけはダメだ。そう思った僕は、誰かに服を借りることにした。
本来ならこんな格好で外を出歩くなどマナー違反だ。だが男子寮の中ならなんとかなるだろう。
そして僕は急いで部屋を飛び出した。1番近いのはヒューゴの部屋だ。
「ヒューゴ、僕ジョシュアだ。頼みがあるんだけど…」
そう言ってノックするが、中から反応はない。
僕は諦めて今度はテオの部屋へと向かった。
彼の部屋は上級貴族たちの部屋なので本当は僕なんかが立ち入って良い場所ではない。だが今はそんなことを考えている場合ではないため、人目の隙をぬってテオの部屋へと走る。
「テオ、いる?ジョシュアだ」
すると中から驚いたテオが顔を出した。
「お兄…じゃなくてジョシュが何でここに!?早く入ってください!」
そして中へと入れてもらった。僕は安心からドアへともたれ掛かる。
「急にごめん。実は頼みがあって…」
「僕は構いませんが、それよりその服は…」
「そのことなんだけど、朝起きたら、その…着れる服が無くなっていて…悪いんだけど服を貸してもらえないかな?」
そこまで言うと事態を察してくれたらしいテオは頷いた。
彼には嫌がらせを受けていたことは言っていなかったが、今回のことでバレてしまったかもしれない。本当は隠しておきたかったが、今はゾーイに恥をかかせないことの方が優先だ。
「ではこれはどうでしょう?」
テオはさっそくクローゼットから服を取り出して僕に渡してくれた。
「ああ、ありがとう」
それを着てみるが…
「少し小さいですね…」
僕はこんなでも背が高いため、テオの服は少し小さかった。
「これくらいなら何とか…寝巻きよりは全然良いよ。ありがとう」
「いえ!待ってください。そんな格好でお兄様を行かせられません。ここはあいつを頼りましょう!」
その服で行こうとした僕をテオが慌てて引き止める。
「あいつって?」
「エリオットです」
「でも、彼にそんなことを頼むのは…」
「大丈夫ですよ。あいつ、やたらとお兄様のこと気に入っていますし」
そうして今度は引っ張られるようにエリオットの部屋へと連れて行かれた。
「何事かと思えば…お前、まだそんな嫌がらせを受けていたのか」
「うっ…最近は落ち着いていたのですが、久々にこのようなことに…」
エリオットの責めるような言葉に身が竦む。彼からは一度退学を勧められたのにもかかわらず我を通した身だ。
彼にもまだ嫌がらせが続いていることはバレたくなかった。
「はぁ、もういい。事情はわかった。それで、もともとゾーイ嬢から贈られたら服はどんなのだった?」
「えっと白地に赤の宝石がついたスーツだよ」
「白地か…ならこれが良いな。宝石は無事か?ならこのスーツにそれを付けよう」
エリオットの服はピッタリだった。
それどころか、ゾーイには悪いが質もかなり良く、元の服よりアップグレードしていた。
「ありがとう、エリオット。これでパーティーにいけるよ。服はきちんと洗って返すから」
「いや、いい。白はめったに着ないからお前にやる」
「いや、流石にこんな高価な服を貰うわけには…」
公爵家の令息が着るような服だ。いったいどれほどの金額がかけられているのか想像もできない。
だが、そんな僕をよそにエリオットは他の服も出してきた。
「これも、あとそれも。いらないからやる」
「エリオット…いくら何でもこれは…」
「返されても捨てる。どっちにでも好きにしたらいい」
「そう…?じゃあお言葉に甘えて…本当にありがとう」
エリオットの態度は分かりにくいが、服が全てなくなってしまった僕に同情してくれたのだろう。その気遣いに胸が温かくなる。
もっとも、少し過剰ではあるのだが…
「なかなか気が効くじゃないか」
「お前は全く役に立たなかったな」
後ろでテオとエリオットが言い争いを始めたが、僕はそれを仲裁してゾーイの元へと向かった。
この服はゾーイが贈ってくれたものだ。服くらいは自分でと言ったのだが、「いいから」と言われ受け取ってしまった。
女性に贈られるなど情けないが、侯爵家の僕の予算はあまりないので有り難い。
白地のスーツに所々に赤の装飾があしらわれたその服は、まさにゾーイの婚約者ですと言わんばかりだ。
ブローチには大きなルビーがあしらわれていて、ゾーイとお揃いなのだという。
その服を綺麗に掛けた後、最後にダンスのステップやエスコートの仕方を復習する。
考えてみれば僕にとっては初めてのパーティーだ。
学内で、しかも平民としての参加なのでハードルが低いことには安心したが、それでもパートナーであるゾーイの評判まで掛かっているのだから手は抜けない。
そして一通り確認を終え、早めに眠りについた。
翌日。
今日が本番だと気合を入れながら目を開ける。
パーティーは午後からだが、慣れない服に髪のセットなどもあるため早めに準備をしなくては。
そう思って起き上がったのだが…
目の前の惨状に目を疑った。
「こ、これは…どうして!?」
僕が今日着る予定だった服がボロボロに切り裂かれている。せっかく今日のためにとゾーイが贈ってくれたものだというのに…
そして部屋をよく見れば切り裂かれたのはその服だけではなかった。
制服から数少ない私服に至るまで全ての服が着れない状態にされている。無事なのは今来ている寝巻きだけだ。
最近は大した嫌がらせも無かったので安心していたが、まさかこんなことになるなんて…
僕は今日をどう乗り越えようかと頭を抱えた。
(ゾーイに行けなくなったと伝言する?でもそれだと彼女のパートナーがいなくなってしまう…)
ゾーイに恥をかかせるのだけはダメだ。そう思った僕は、誰かに服を借りることにした。
本来ならこんな格好で外を出歩くなどマナー違反だ。だが男子寮の中ならなんとかなるだろう。
そして僕は急いで部屋を飛び出した。1番近いのはヒューゴの部屋だ。
「ヒューゴ、僕ジョシュアだ。頼みがあるんだけど…」
そう言ってノックするが、中から反応はない。
僕は諦めて今度はテオの部屋へと向かった。
彼の部屋は上級貴族たちの部屋なので本当は僕なんかが立ち入って良い場所ではない。だが今はそんなことを考えている場合ではないため、人目の隙をぬってテオの部屋へと走る。
「テオ、いる?ジョシュアだ」
すると中から驚いたテオが顔を出した。
「お兄…じゃなくてジョシュが何でここに!?早く入ってください!」
そして中へと入れてもらった。僕は安心からドアへともたれ掛かる。
「急にごめん。実は頼みがあって…」
「僕は構いませんが、それよりその服は…」
「そのことなんだけど、朝起きたら、その…着れる服が無くなっていて…悪いんだけど服を貸してもらえないかな?」
そこまで言うと事態を察してくれたらしいテオは頷いた。
彼には嫌がらせを受けていたことは言っていなかったが、今回のことでバレてしまったかもしれない。本当は隠しておきたかったが、今はゾーイに恥をかかせないことの方が優先だ。
「ではこれはどうでしょう?」
テオはさっそくクローゼットから服を取り出して僕に渡してくれた。
「ああ、ありがとう」
それを着てみるが…
「少し小さいですね…」
僕はこんなでも背が高いため、テオの服は少し小さかった。
「これくらいなら何とか…寝巻きよりは全然良いよ。ありがとう」
「いえ!待ってください。そんな格好でお兄様を行かせられません。ここはあいつを頼りましょう!」
その服で行こうとした僕をテオが慌てて引き止める。
「あいつって?」
「エリオットです」
「でも、彼にそんなことを頼むのは…」
「大丈夫ですよ。あいつ、やたらとお兄様のこと気に入っていますし」
そうして今度は引っ張られるようにエリオットの部屋へと連れて行かれた。
「何事かと思えば…お前、まだそんな嫌がらせを受けていたのか」
「うっ…最近は落ち着いていたのですが、久々にこのようなことに…」
エリオットの責めるような言葉に身が竦む。彼からは一度退学を勧められたのにもかかわらず我を通した身だ。
彼にもまだ嫌がらせが続いていることはバレたくなかった。
「はぁ、もういい。事情はわかった。それで、もともとゾーイ嬢から贈られたら服はどんなのだった?」
「えっと白地に赤の宝石がついたスーツだよ」
「白地か…ならこれが良いな。宝石は無事か?ならこのスーツにそれを付けよう」
エリオットの服はピッタリだった。
それどころか、ゾーイには悪いが質もかなり良く、元の服よりアップグレードしていた。
「ありがとう、エリオット。これでパーティーにいけるよ。服はきちんと洗って返すから」
「いや、いい。白はめったに着ないからお前にやる」
「いや、流石にこんな高価な服を貰うわけには…」
公爵家の令息が着るような服だ。いったいどれほどの金額がかけられているのか想像もできない。
だが、そんな僕をよそにエリオットは他の服も出してきた。
「これも、あとそれも。いらないからやる」
「エリオット…いくら何でもこれは…」
「返されても捨てる。どっちにでも好きにしたらいい」
「そう…?じゃあお言葉に甘えて…本当にありがとう」
エリオットの態度は分かりにくいが、服が全てなくなってしまった僕に同情してくれたのだろう。その気遣いに胸が温かくなる。
もっとも、少し過剰ではあるのだが…
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