公爵家に引き取られることになったけど、幼馴染と離れたくないので囲い込みます

孤児院

6

食堂に戻ると皆が夕飯の準備をしていた。

「カインー！大丈夫だった？」

子供たちが僕に駆け寄ってくる。

「うん、皆も大変だったね。」
「あのお兄ちゃん嫌い。」
「僕もだよ。」
「なのに、ノエルはヘラヘラしてて、見損なった！」

子供の1人がそんな声を上げる。ノエルだってしたくてあんな態度をとっているわけではないのだが、彼らにはまだ分からないか。

「そうかな？むしろ僕はノエルは格好良かったと思うけど。」
「ええ～？」
「あの人は偉い人なんだ。今日のご飯だって、あの人のお家がお金を出してくれてるんだ。そんな人を怒らせらたらどうなると思う？」
「…ご飯が食べられなくなる？」

おずおずと答えた子供たちに真剣な顔で頷く。

「ご飯も食べられないし、服や備品も貰えなくなっちゃうね。」
「そんなぁ…」
「そうならないためにノエルは彼の機嫌を取ってくれたんだ。普段のノエルを見てればあれが素じゃないことくらいわかるだろう？彼も耐えていたんだよ。」
「そっか…じゃあノエルに悪いことしちゃった。」
「何かしたの？」
「ノエル格好悪いって、あのお兄ちゃんの言いなりなら嫌いって言っちゃった。」

それはまた、彼が堪えそうなことを…

「そっか…でもノエルが皆のためにそうしてくれていたことは分かっただろ？それならどうしたら良いかもわかるよね。」
「うん…謝ってくる。」

子供たちは目を合わせてそう言った。僕は頷いてそうするよう促した。

ノエルはここの子供たちのことを心から気にかけているというのに、嫌われるなんてことがあってはならない。

それにしてもケネスか…今までブランソン伯爵にくっついてきていた時はあそこまで横暴ではなかったのに、親の目がなくなって奔放になってしまったのだろうか。

今後は彼が出資者になると思うと頭が痛い。それでも自分は後2年の辛抱なのだからまあ良いかと思うあたり、やはり僕は薄情なのだと思う。

きっとノエルならその先も付き合い続けなければならない子供たちを思って心を砕くだろうに。

そう考えて、遠くで子供たちに囲まれている彼を見つめた。先程まで大人しかった彼は、子供たちの言葉に落ち込んでいたのだろう。

それが子供たちに囲まれて少し元気を取り戻した様だった。

そして不意に顔を上げた彼と目が合った。すると、ノエルはドキッとするような笑みを浮かべて、口の形だけでありがとうと伝えてきた。

僕はバクバクする心臓を抑えながら、彼の笑顔を記憶に残そうと目に焼き付けた。