公爵家に引き取られることになったけど、幼馴染と離れたくないので囲い込みます

ゆう

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公爵家へ

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それから3日、部屋の整理や屋敷内の探索をして過ごした。今日から早速、家庭教師による授業が始まる。

僕は1日でも早くノエルを迎え入れるために気を引き締めて部屋へと向かった。

僕が受ける授業は座学と礼儀作法、そして魔法だ。エリックとは学習段階が違うため別々で授業を受けるらしい。

余計な気疲れをする心配がなくなり幾らかホッとしたのは秘密だ。もっとも、ノエルを迎えようとするならまずは彼に追いつかなければならないのだが。


「初めましてカイン様。座学を担当しますオーガスト・ゲイソンです」
「カイン・アンダーソンです。よろしくお願いします」
「カイン様は読み書きができないと伺いましたのでまずはそこからやりましょうか。」

そう言った講師に習い文字を学習する。

まず文字を学習するであろうことは予想していたので、ここ数日で本を見てわかる文字を書き写したりと予習はしていた。そのおかげで、基本的な読み書きは覚えるのにそう時間は掛からなそうだ。

「おや、読み書きはできないとの話でしたが、ある程度は分かってらっしゃるようですね。これならすぐに次のステップに進むことができそうです」
「ありがとうございます。すぐに習得できるよう頑張ります」

僕がそう答えると、先生は「やる気があって結構」と微笑んでくれた。

そしてその日は一通り文字を学習し、いくらかの宿題を出され終了となった。  

その夜、僕は寝る間も惜しんで文字を叩き込み、翌日には簡単な本なら読める程度には習得していた。

翌日、先生には驚かれたけれど、「これなら後は他の学習をしながらより理解を深めていきましょう」と言われ、大いに喜んだ。

ノエルと1日でも早く再開するために、可能な限り早く進めなければ。

そうしてその後の座学も次々と記憶していく。国や貴族の歴史など、今まで触れたことがないものばかりで多少手こずったが、毎日反復を重ねれば次第に身についていった。

それと同時に礼儀作法と魔法の授業も始まった。

礼儀作法は上流貴族だけあって覚えることが多いが、孤児院でも寄付に来た貴族の対応を行っていたため、いくらか知っている知識もあり、そう抵抗なく覚えていくことができた。

また一番重要な魔法の授業では、先生の前で再度水晶に手を探して属性や魔力量を見て貰えば、随分と驚かれてしまった。

才能があるだとかこれは鍛え甲斐があると言われ、かなり熱心に教育を受けている。そのおかげで、今まで学んだことなどなかった魔法も1週間も立つ頃にはかなり感覚が掴めるようになっていた。

先生たちからは、この調子で頑張れば社交界デビューできる日もそう遠くないと言われ僕は浮き足立った。

早く早くと焦っていた僕はあれからノエルには会うことはおろか連絡さえできていない。ふと、ノエルに手紙を出そうと思った。
もっとも彼は字が読めない。でもきっとエルマー神官が読んでくれるだろう。彼に内容が筒抜けだと思うと嫌な気持ちになるが…

そうして俺は数日おきに手紙を送るようになった。孤児院までは遠いので届くまでに日数はかかる。まだ最初の手紙が届いているかもわからないうちに次の手紙を出し、我ながらうっとしいと思われてしまうかもと不安になった。それでもノエルに自分を忘れて欲しくない一心で手紙を送り続けた。



ーーー
一方、公爵の執務室にて。

「あの子供…カインの様子はどうだ?」

今日でカインが公爵家へやってきて1ヶ月が経つ。私は進捗を確かめるため、3人の講師たちを呼んだ。3人とも私とは旧知の仲だ。

「カイン様は素晴らしいです!」
「ええ、非常に努力家で飲み込みも早い」
「これならすぐに社交界にもデビューできそうですわ。なんなら、エリック様と合同授業にしてもよろしいかと」

なんと講師たちからの評価は軒並み良く、たった1ヶ月でエリックに迫る勢いだという。

長年家庭教師を付けてきた実の息子に1ヶ月で追いついたという点に思うことがないではないが、優秀であることに越したことはない。

「そうか。なら今度は合同で授業を行うようにしよう」
「「畏まりました」」

私の言葉に講師たちは揃って了承の意を示す。

「それにしても、あのやる気がどこから来るのか不思議なくらいです」
「ええ、本当に。毎日寝る間も惜しんで勉強なさっているようですわ」
「なんでも公爵様と何か約束をしているとか?」

そう言った講師たちが私を見る。

「それはもしかすると…一定の成績を収めれば孤児院にいる大事な人とやらを公爵家に呼んでいいと言った件かもしれん」

もっともカインが本当に後継になれる人間だと判断できればその大事な人とやらには身を引いてもらわねばならない。いくら才能があるとはいえ、孤児出身の容姿は外聞が悪い。そのうえ孤児の恋人などもってのほかだ。

「まあ…!」
「つまり、愛の力という訳ですか」
「それならあのやる気にも納得ですな」

だがそんなことも知らず講師たちは黄色い声を上げた。彼らはカインが後継になる可能性があるということも詳しくは知らないので仕方がないが。
その後も彼らはカインのことを優秀だ天才だとほめそやし、しばらく執務室でその報告を聞いていた。

あの子供を引き取ったのは間違いではなかったらしい。そのことに安堵する。

「それで、エリックの方はどうだ?」

すると、今までうるさいくらいだった3人はお互いに顔を見合わせた。

「エリック様は…頑張っておられます」
「ええ、成績はまずまずですが、しっかり取り組んでおられますよ」
「魔法は少し行き詰まっております…」

「そうか…」

彼らの言葉に、やはり跡継ぎはカインにした方が良いかと考える。本当なら実の息子であるエリックを指名してやりたいが、あの子は不器用であまり優秀ではない。

カインに劣っていようとエリックは可愛い息子だ。できればエリックを後継にし、カインを補佐に据えたいところだ。そしてカインに魔力の高い子を産ませエリックの養子にしてもいい。
それでも、エリックに問題がありカインの方が圧倒的に優れているならカインに継がせることになるだろう。

「報告についてはわかった。これからも2人のことをよく見て私に教えてくれ」

だが、まだ時間はある。もうしばらく2人の様子を見てからでも結論は遅くないだろう。

そう考え講師たちに声をかける。彼らは私の言葉を受け丁寧に礼をして部屋を出ていった。
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