公爵家に引き取られることになったけど、幼馴染と離れたくないので囲い込みます

ゆう

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その頃孤児院では---

カインがいなくなった穴を埋めるように俺は慌ただしく動き回っていた。子供達の世話に奉公、寄付金集めと日々やることは山積みだ。

だがそうして忙しくしているうちはカインがいなくなった寂しさを紛らわすことができた。
疲れ切って部屋に戻ると1人きりとなり心細くなる。あれから何の便りもないが、カインは公爵家でうまくやっているのだろうか。

孤児ということで差別などされていなければいいが…そんなことを考えながらベッドに入る日が続いた。

そんなある日、今日は特にやることもなく部屋で休んでいたが、1人だとどうしても寂しさが込み上げる。

ふと、元々カインが使っていたベッドを見た。今は部屋も余っているためここに新しい子供が来ることはなく、カインが使っていた当時のままだ。

「カイン…何の便りもよこさないなんて。公爵家は厳しいんだろうか?それとももう俺たちのことなんか忘れちゃったのかな…」

カインは迎えに来るなどと言っていたが、そう言って二度と子供達の前に現れなかった親たちを大勢見てきた俺は、いくら相手がカインでも素直に信じ切ることができなかった。

そして、なんとは無しにカインの机の引き出しを開けてみると、そこには彼の服が入っていた。

「この服…最後の日に着てた…」

そこまで言ったところで、あの日の行為を思い出し1人赤面してしまう。あれは一体どういうつもりだったのだろう。もしかして、カインに揶揄われたのを俺が本気にしたせいであんな展開になってしまったのだろうか?

そう考えると恥ずかしさで顔から火が出そうになる。

だがあの夜のことを思い出すのをやめられず、気づけば俺の下半身は硬さ持ち始めていた。

「っ…!」

戸惑いながらもそこに触れ、カインの服を抱きしめながら自分を慰める。こんなことをしたのは初めてでどうすれば良いのかわからない。カインに触ってもらった時とは全く違い、うまく快感を得られず体ばかりが熱っていく。


「おいおい、1人寂しく何やってるんだ?」

突然かけられた声に冷や水をかけられたような気持ちで顔をバッとあげる。そこには、空いたドアに寄りかかるように伯爵子息であるケネスが立っていた。

(いつからそこに…!?自慰を見られていた…!?)

俺はパニックになりカインの服で前を隠したまましどろもどろに声を出した。

「あ…こ、これは…その…」
「恥ずかしがるなよ。孤児でもそういうことはちゃんとやるんだな?もしかして神官にされてるのか?」

彼はニヤニヤとした笑みを浮かべて部屋の中に入ってくる。

「なっ、違います」
「ふうん。ん?その服…ああ、そういえばもう1人の生意気なやつは引き取られたんだったか。つまりそいつを思ってシていたと」
「そ、そういうわけでは…」

そう言いながらも顔が熱を帯びるのを感じた。こんなところを人に、ましてやケネスに見られてしまうなんて…

「あの生意気なやつ、公爵家に引き取られるなんてな」

忌々しそうにそう言い放ったケネスが俺に視線を移す。

「元は同じ境遇でも随分差が出たなぁ?1人は公爵家の養子になり教師陣にも誉めそやされて後継にも抜擢されそうだって話だ。それに比べてお前は孤児院に取り残されて1人で自分を慰めているとは…」

そう言われるとあまりの情けなさに顔を上げられない。でもカインは公爵家でうまくやっているようだ。それだけは聞けて良かった。

「ほら?どうした?まだイけてないんだろう?続きをやってみろ」
「……え?」
「私が見ていてやると言ってるんだ。やれ」

あまりにも理不尽な命令に目を見開く。

「そ、そんなことは…」

とてもじゃないが人が見ているとわかっている状態で続きができるわけがない。どうにか断らなければと逡巡しているとケネスが苛立ったように舌打ちした。

「チッ、社会の屑のくせに貴族様のいうことが聞けないのか?ああ、それとも自分じゃうまくできないのか?それなら私が教えてやってもいい」

そう言って身を乗り出したケネスに恐怖を感じ、つい咄嗟に動いてしまった。

「やめてください!」

拒絶するように手を突き出すと、勢いが良すぎたのか彼を転ばせてしまった。

「あ…す、すいませ」
「この無礼者!怪我をしたらどうしてくれるんだ」

ケネスは怒り心頭で立ち上がると俺の胸ぐらを掴んできた。

「一体どうしたんです!?」

すると騒ぎを聞きつけたのかエルマー神官が現れて俺たちを見た。

「神官、孤児の教育はしっかりされた方が良いかと。こいつが私を転ばせて怪我をさせたんです」
「ま、待ってください。俺はただ…」

怪我などしていないくせに、そんなことを言うケネスの言葉を修正しようと口を開いた。だが俺の言葉は最後まで聞きいられることはなかった。

「申し訳ありません、ケネス様。ノエルにほしっかり罰を与えます。ノエル、私の部屋に来なさい。」
「……はい」

ケネスの手前、きっと俺が何を言っても聞き入れてはもらえないのだろう。そう思って大人しく頷いた。

「当然だな。私もこいつが罰を受けてしっかり反省するところを見届けてやろう」

ケネスはニヤニヤ笑いを隠そうともせず、そう言ってついてきた。
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