18 / 44
公爵家へ
3
しおりを挟む
その頃孤児院では---
カインがいなくなった穴を埋めるように俺は慌ただしく動き回っていた。子供達の世話に奉公、寄付金集めと日々やることは山積みだ。
だがそうして忙しくしているうちはカインがいなくなった寂しさを紛らわすことができた。
疲れ切って部屋に戻ると1人きりとなり心細くなる。あれから何の便りもないが、カインは公爵家でうまくやっているのだろうか。
孤児ということで差別などされていなければいいが…そんなことを考えながらベッドに入る日が続いた。
そんなある日、今日は特にやることもなく部屋で休んでいたが、1人だとどうしても寂しさが込み上げる。
ふと、元々カインが使っていたベッドを見た。今は部屋も余っているためここに新しい子供が来ることはなく、カインが使っていた当時のままだ。
「カイン…何の便りもよこさないなんて。公爵家は厳しいんだろうか?それとももう俺たちのことなんか忘れちゃったのかな…」
カインは迎えに来るなどと言っていたが、そう言って二度と子供達の前に現れなかった親たちを大勢見てきた俺は、いくら相手がカインでも素直に信じ切ることができなかった。
そして、なんとは無しにカインの机の引き出しを開けてみると、そこには彼の服が入っていた。
「この服…最後の日に着てた…」
そこまで言ったところで、あの日の行為を思い出し1人赤面してしまう。あれは一体どういうつもりだったのだろう。もしかして、カインに揶揄われたのを俺が本気にしたせいであんな展開になってしまったのだろうか?
そう考えると恥ずかしさで顔から火が出そうになる。
だがあの夜のことを思い出すのをやめられず、気づけば俺の下半身は硬さ持ち始めていた。
「っ…!」
戸惑いながらもそこに触れ、カインの服を抱きしめながら自分を慰める。こんなことをしたのは初めてでどうすれば良いのかわからない。カインに触ってもらった時とは全く違い、うまく快感を得られず体ばかりが熱っていく。
「おいおい、1人寂しく何やってるんだ?」
突然かけられた声に冷や水をかけられたような気持ちで顔をバッとあげる。そこには、空いたドアに寄りかかるように伯爵子息であるケネスが立っていた。
(いつからそこに…!?自慰を見られていた…!?)
俺はパニックになりカインの服で前を隠したまましどろもどろに声を出した。
「あ…こ、これは…その…」
「恥ずかしがるなよ。孤児でもそういうことはちゃんとやるんだな?もしかして神官に教育されてるのか?」
彼はニヤニヤとした笑みを浮かべて部屋の中に入ってくる。
「なっ、違います」
「ふうん。ん?その服…ああ、そういえばもう1人の生意気なやつは引き取られたんだったか。つまりそいつを思ってシていたと」
「そ、そういうわけでは…」
そう言いながらも顔が熱を帯びるのを感じた。こんなところを人に、ましてやケネスに見られてしまうなんて…
「あの生意気なやつ、公爵家に引き取られるなんてな」
忌々しそうにそう言い放ったケネスが俺に視線を移す。
「元は同じ境遇でも随分差が出たなぁ?1人は公爵家の養子になり教師陣にも誉めそやされて後継にも抜擢されそうだって話だ。それに比べてお前は孤児院に取り残されて1人で自分を慰めているとは…」
そう言われるとあまりの情けなさに顔を上げられない。でもカインは公爵家でうまくやっているようだ。それだけは聞けて良かった。
「ほら?どうした?まだイけてないんだろう?続きをやってみろ」
「……え?」
「私が見ていてやると言ってるんだ。やれ」
あまりにも理不尽な命令に目を見開く。
「そ、そんなことは…」
とてもじゃないが人が見ているとわかっている状態で続きができるわけがない。どうにか断らなければと逡巡しているとケネスが苛立ったように舌打ちした。
「チッ、社会の屑のくせに貴族様のいうことが聞けないのか?ああ、それとも自分じゃうまくできないのか?それなら私が教えてやってもいい」
そう言って身を乗り出したケネスに恐怖を感じ、つい咄嗟に動いてしまった。
「やめてください!」
拒絶するように手を突き出すと、勢いが良すぎたのか彼を転ばせてしまった。
「あ…す、すいませ」
「この無礼者!怪我をしたらどうしてくれるんだ」
ケネスは怒り心頭で立ち上がると俺の胸ぐらを掴んできた。
「一体どうしたんです!?」
すると騒ぎを聞きつけたのかエルマー神官が現れて俺たちを見た。
「神官、孤児の教育はしっかりされた方が良いかと。こいつが私を転ばせて怪我をさせたんです」
「ま、待ってください。俺はただ…」
怪我などしていないくせに、そんなことを言うケネスの言葉を修正しようと口を開いた。だが俺の言葉は最後まで聞きいられることはなかった。
「申し訳ありません、ケネス様。ノエルにほしっかり罰を与えます。ノエル、私の部屋に来なさい。」
「……はい」
ケネスの手前、きっと俺が何を言っても聞き入れてはもらえないのだろう。そう思って大人しく頷いた。
「当然だな。私もこいつが罰を受けてしっかり反省するところを見届けてやろう」
ケネスはニヤニヤ笑いを隠そうともせず、そう言ってついてきた。
カインがいなくなった穴を埋めるように俺は慌ただしく動き回っていた。子供達の世話に奉公、寄付金集めと日々やることは山積みだ。
だがそうして忙しくしているうちはカインがいなくなった寂しさを紛らわすことができた。
疲れ切って部屋に戻ると1人きりとなり心細くなる。あれから何の便りもないが、カインは公爵家でうまくやっているのだろうか。
孤児ということで差別などされていなければいいが…そんなことを考えながらベッドに入る日が続いた。
そんなある日、今日は特にやることもなく部屋で休んでいたが、1人だとどうしても寂しさが込み上げる。
ふと、元々カインが使っていたベッドを見た。今は部屋も余っているためここに新しい子供が来ることはなく、カインが使っていた当時のままだ。
「カイン…何の便りもよこさないなんて。公爵家は厳しいんだろうか?それとももう俺たちのことなんか忘れちゃったのかな…」
カインは迎えに来るなどと言っていたが、そう言って二度と子供達の前に現れなかった親たちを大勢見てきた俺は、いくら相手がカインでも素直に信じ切ることができなかった。
そして、なんとは無しにカインの机の引き出しを開けてみると、そこには彼の服が入っていた。
「この服…最後の日に着てた…」
そこまで言ったところで、あの日の行為を思い出し1人赤面してしまう。あれは一体どういうつもりだったのだろう。もしかして、カインに揶揄われたのを俺が本気にしたせいであんな展開になってしまったのだろうか?
そう考えると恥ずかしさで顔から火が出そうになる。
だがあの夜のことを思い出すのをやめられず、気づけば俺の下半身は硬さ持ち始めていた。
「っ…!」
戸惑いながらもそこに触れ、カインの服を抱きしめながら自分を慰める。こんなことをしたのは初めてでどうすれば良いのかわからない。カインに触ってもらった時とは全く違い、うまく快感を得られず体ばかりが熱っていく。
「おいおい、1人寂しく何やってるんだ?」
突然かけられた声に冷や水をかけられたような気持ちで顔をバッとあげる。そこには、空いたドアに寄りかかるように伯爵子息であるケネスが立っていた。
(いつからそこに…!?自慰を見られていた…!?)
俺はパニックになりカインの服で前を隠したまましどろもどろに声を出した。
「あ…こ、これは…その…」
「恥ずかしがるなよ。孤児でもそういうことはちゃんとやるんだな?もしかして神官に教育されてるのか?」
彼はニヤニヤとした笑みを浮かべて部屋の中に入ってくる。
「なっ、違います」
「ふうん。ん?その服…ああ、そういえばもう1人の生意気なやつは引き取られたんだったか。つまりそいつを思ってシていたと」
「そ、そういうわけでは…」
そう言いながらも顔が熱を帯びるのを感じた。こんなところを人に、ましてやケネスに見られてしまうなんて…
「あの生意気なやつ、公爵家に引き取られるなんてな」
忌々しそうにそう言い放ったケネスが俺に視線を移す。
「元は同じ境遇でも随分差が出たなぁ?1人は公爵家の養子になり教師陣にも誉めそやされて後継にも抜擢されそうだって話だ。それに比べてお前は孤児院に取り残されて1人で自分を慰めているとは…」
そう言われるとあまりの情けなさに顔を上げられない。でもカインは公爵家でうまくやっているようだ。それだけは聞けて良かった。
「ほら?どうした?まだイけてないんだろう?続きをやってみろ」
「……え?」
「私が見ていてやると言ってるんだ。やれ」
あまりにも理不尽な命令に目を見開く。
「そ、そんなことは…」
とてもじゃないが人が見ているとわかっている状態で続きができるわけがない。どうにか断らなければと逡巡しているとケネスが苛立ったように舌打ちした。
「チッ、社会の屑のくせに貴族様のいうことが聞けないのか?ああ、それとも自分じゃうまくできないのか?それなら私が教えてやってもいい」
そう言って身を乗り出したケネスに恐怖を感じ、つい咄嗟に動いてしまった。
「やめてください!」
拒絶するように手を突き出すと、勢いが良すぎたのか彼を転ばせてしまった。
「あ…す、すいませ」
「この無礼者!怪我をしたらどうしてくれるんだ」
ケネスは怒り心頭で立ち上がると俺の胸ぐらを掴んできた。
「一体どうしたんです!?」
すると騒ぎを聞きつけたのかエルマー神官が現れて俺たちを見た。
「神官、孤児の教育はしっかりされた方が良いかと。こいつが私を転ばせて怪我をさせたんです」
「ま、待ってください。俺はただ…」
怪我などしていないくせに、そんなことを言うケネスの言葉を修正しようと口を開いた。だが俺の言葉は最後まで聞きいられることはなかった。
「申し訳ありません、ケネス様。ノエルにほしっかり罰を与えます。ノエル、私の部屋に来なさい。」
「……はい」
ケネスの手前、きっと俺が何を言っても聞き入れてはもらえないのだろう。そう思って大人しく頷いた。
「当然だな。私もこいつが罰を受けてしっかり反省するところを見届けてやろう」
ケネスはニヤニヤ笑いを隠そうともせず、そう言ってついてきた。
41
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結済】スパダリになりたいので、幼馴染に弟子入りしました!
キノア9g
BL
モテたくて完璧な幼馴染に弟子入りしたら、なぜか俺が溺愛されてる!?
あらすじ
「俺は将来、可愛い奥さんをもらって温かい家庭を築くんだ!」
前世、ブラック企業で過労死した社畜の俺(リアン)。
今世こそは定時退社と幸せな結婚を手に入れるため、理想の男「スパダリ」になることを決意する。
お手本は、幼馴染で公爵家嫡男のシリル。
顔よし、家柄よし、能力よしの完璧超人な彼に「弟子入り」し、その技術を盗もうとするけれど……?
「リアン、君の淹れたお茶以外は飲みたくないな」
「君は無防備すぎる。私の側を離れてはいけないよ」
スパダリ修行のつもりが、いつの間にか身の回りのお世話係(兼・精神安定剤)として依存されていた!?
しかも、俺が婚活をしようとすると、なぜか全力で阻止されて――。
【無自覚ポジティブな元社畜】×【隠れ激重執着な氷の貴公子】
「君の就職先は私(公爵家)に決まっているだろう?」
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
姉の婚約者の心を読んだら俺への愛で溢れてました
天埜鳩愛
BL
魔法学校の卒業を控えたユーディアは、親友で姉の婚約者であるエドゥアルドとの関係がある日を境に疎遠になったことに悩んでいた。
そんな折、我儘な姉から、魔法を使ってそっけないエドゥアルドの心を読み、卒業の舞踏会に自分を誘うように仕向けろと命令される。
はじめは気が進まなかったユーディアだが、エドゥアルドの心を読めばなぜ距離をとられたのか理由がわかると思いなおして……。
優秀だけど不器用な、両片思いの二人と魔法が織りなすモダキュン物語。
「許されざる恋BLアンソロジー 」収録作品。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる