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ディニス編
9(ソロンSide)
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ディニス様にウェスを見守るよう言われた時、なぜ私がそんなくだらない事をと思った。
私はディニス様が魔王になる何百年も前から共に過ごし、魔王になってからもずっと支えてきたのに、そんな私に頼むのが低級悪魔の保護とは…
そもそも私は、ウェスが喋れるようになった頃から彼のことをずっと鬱陶しく思っていた。
最初はディニス様もペット感覚でウェスを飼っているのだと思っていた。だからこそそこまで腹が立たなかった。
だが、彼は私が思うよりずっとウェスのことを愛していたようだ。
それを知ったのはディニス様がウェスを自分の子だと言った時だった。彼のウェスに対する愛情は、ペットに向けるようなものではなかった。
(あんな知能も低い悪魔なんぞに愛情を注ぐなんて…)
それは嫉妬か羨望か、自分でもよく分からない感情だった。
長年共にいた私にも向けた事がない優しい視線をウェスに向ける彼に、胸がムカムカとした。
それからというもの、私はウェスが目障りで仕方なかった。城にいるのも相応しくないというのに、ディニス様に愛されているからと我が物顔で彼のそばをウロチョロするなんて…
そして、そう思っていたのは私だけではなかった。それに気づいた私は、同じことを感じている魔族達を扇動し、ウェスに嫌がらせを行うように仕向けた。
だが流石は低級悪魔と言うべきか、あいつは自分が嫌がらせをされているということもイマイチ理解しておらず、依然としてディニス様のそばをうろついた。
そして想定外なことに、本人より先にディニス様がその状況を気にし始めた。
「最近、ウェスが怪我をして帰ってくることが多いのだが…」
その話を聞いた時、当初の計画とは違うがディニス様の愛情を利用すればウェスを体良く追い出せるのではないかと思った。
「皆、あなたがあんな下級悪魔に現を抜かしているのが面白くないのですよ」
そう言うと、彼は自分が原因であることに少なからずショックを受けたようだった。
そして、彼は予想通り魔族達に注意をしようとした。
だが、私はそれを制止する。
「いっそウェスに冷たく当たるというのはどうでしょう」
そこからは、さもウェスのことを真剣に考えている風を装いながら、彼とディニス様を引き離していった。
愛は盲目と言うのか、ディニス様は「こうするのがウェスのためだ」と言えば素直に従ってくれる。
自分の計画通りに事は進んだが、そのことについては面白くなかった。
だが、それ以上に腹が立ったのが「ウェスを市井に降すべき」という意見をディニス様が全力で拒んだことだ。
(そんなにもウェスと離れたくないのか…)
珍しく私の意見を聞かず、ウェスを留まらせるために伯爵位を与えた彼に、憎しみのような感情が湧き起こる。
そしてディニス様にはぶつける事ができないその感情はウェスへと向かった。
ウェスを追い込むチャンスを伺っていた私だが、その機会は案外すぐにやってきた。
魔族達の会議で、レヴォンがウェスと勇者を戦わせようと提案したのだ。
誇り高い彼のことだ。恐らくは、身の丈に合わない爵位を持つウェスが鬱陶しくて皮肉を言ったのだろう。
だが、私はそれを本当に実行させるよう働きかけた。
「まあまあ、ディニス様も皆様もそう言わず、せっかくウェスがやりたいと言っているのですからやらせてやれば良いではありませんか」
ちょっとそれらしいことを言えば、ウェスは私を自分の味方を見るような目で見てきた。本当に馬鹿なやつだ。
そして私はウェスを戦いに出させることに成功した。
(いっそ、この戦いで死んでくれれば…)
そう思っていたのだが、一点誤算が生じた。
それは、ディニス様にウェスを助けるよう命じられてしまったことだ。
はなから助ける気などなかった私は適当な理由をつけてその任務をサボった。もっとも、レヴォンも同じ命を受けていたので、ウェスは救い出されてしまったが…
まあ、結果として城を追い出すことには成功したので良しとしよう。
さすがに城からいなくなれば、ディニス様との接点もなくなる。彼も次第にウェスのことなど忘れていくだろう。
そう思っていたのに…
「ウェスが市井に降ってからも生活を支えてやってくれないか?」
そんなことを頼んできた彼に心底腹が立った。今すぐ私がウェスをどんなに嫌っているかぶちまけてやりたい。
だが、そんなことをしてと彼の関心はウェスから離れないだろう。
だから…
「分かりました。その役目、仰せつかりましょう」
そう慇懃に承諾の返事をした。
私はディニス様が魔王になる何百年も前から共に過ごし、魔王になってからもずっと支えてきたのに、そんな私に頼むのが低級悪魔の保護とは…
そもそも私は、ウェスが喋れるようになった頃から彼のことをずっと鬱陶しく思っていた。
最初はディニス様もペット感覚でウェスを飼っているのだと思っていた。だからこそそこまで腹が立たなかった。
だが、彼は私が思うよりずっとウェスのことを愛していたようだ。
それを知ったのはディニス様がウェスを自分の子だと言った時だった。彼のウェスに対する愛情は、ペットに向けるようなものではなかった。
(あんな知能も低い悪魔なんぞに愛情を注ぐなんて…)
それは嫉妬か羨望か、自分でもよく分からない感情だった。
長年共にいた私にも向けた事がない優しい視線をウェスに向ける彼に、胸がムカムカとした。
それからというもの、私はウェスが目障りで仕方なかった。城にいるのも相応しくないというのに、ディニス様に愛されているからと我が物顔で彼のそばをウロチョロするなんて…
そして、そう思っていたのは私だけではなかった。それに気づいた私は、同じことを感じている魔族達を扇動し、ウェスに嫌がらせを行うように仕向けた。
だが流石は低級悪魔と言うべきか、あいつは自分が嫌がらせをされているということもイマイチ理解しておらず、依然としてディニス様のそばをうろついた。
そして想定外なことに、本人より先にディニス様がその状況を気にし始めた。
「最近、ウェスが怪我をして帰ってくることが多いのだが…」
その話を聞いた時、当初の計画とは違うがディニス様の愛情を利用すればウェスを体良く追い出せるのではないかと思った。
「皆、あなたがあんな下級悪魔に現を抜かしているのが面白くないのですよ」
そう言うと、彼は自分が原因であることに少なからずショックを受けたようだった。
そして、彼は予想通り魔族達に注意をしようとした。
だが、私はそれを制止する。
「いっそウェスに冷たく当たるというのはどうでしょう」
そこからは、さもウェスのことを真剣に考えている風を装いながら、彼とディニス様を引き離していった。
愛は盲目と言うのか、ディニス様は「こうするのがウェスのためだ」と言えば素直に従ってくれる。
自分の計画通りに事は進んだが、そのことについては面白くなかった。
だが、それ以上に腹が立ったのが「ウェスを市井に降すべき」という意見をディニス様が全力で拒んだことだ。
(そんなにもウェスと離れたくないのか…)
珍しく私の意見を聞かず、ウェスを留まらせるために伯爵位を与えた彼に、憎しみのような感情が湧き起こる。
そしてディニス様にはぶつける事ができないその感情はウェスへと向かった。
ウェスを追い込むチャンスを伺っていた私だが、その機会は案外すぐにやってきた。
魔族達の会議で、レヴォンがウェスと勇者を戦わせようと提案したのだ。
誇り高い彼のことだ。恐らくは、身の丈に合わない爵位を持つウェスが鬱陶しくて皮肉を言ったのだろう。
だが、私はそれを本当に実行させるよう働きかけた。
「まあまあ、ディニス様も皆様もそう言わず、せっかくウェスがやりたいと言っているのですからやらせてやれば良いではありませんか」
ちょっとそれらしいことを言えば、ウェスは私を自分の味方を見るような目で見てきた。本当に馬鹿なやつだ。
そして私はウェスを戦いに出させることに成功した。
(いっそ、この戦いで死んでくれれば…)
そう思っていたのだが、一点誤算が生じた。
それは、ディニス様にウェスを助けるよう命じられてしまったことだ。
はなから助ける気などなかった私は適当な理由をつけてその任務をサボった。もっとも、レヴォンも同じ命を受けていたので、ウェスは救い出されてしまったが…
まあ、結果として城を追い出すことには成功したので良しとしよう。
さすがに城からいなくなれば、ディニス様との接点もなくなる。彼も次第にウェスのことなど忘れていくだろう。
そう思っていたのに…
「ウェスが市井に降ってからも生活を支えてやってくれないか?」
そんなことを頼んできた彼に心底腹が立った。今すぐ私がウェスをどんなに嫌っているかぶちまけてやりたい。
だが、そんなことをしてと彼の関心はウェスから離れないだろう。
だから…
「分かりました。その役目、仰せつかりましょう」
そう慇懃に承諾の返事をした。
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