67 / 101
本編
67
俺は部屋に戻って侯爵から届いたという服を確認した。
白地に銀の羽の刺繍があるその服はまるで天使を連想させるとても美しいものだった。もちろん通常の型の服なので右腕は寂しくぶらついているが・・・ザックのような気遣いを期待する方が無茶だろう。
きっとカインなら着こなすのだろうが俺には似合わなかった。というかカインがよく着ている服に似ている気がする。
「まあ、服を贈ってくれるだけありがたいか。」
なぜ侯爵が俺と婚約したいのかは謎だが、少なくともそれ相応のことをやろうとはしてくれてるらしい。俺は服を仕舞ってベッドに寝転がった。
今頃ザックはどうしているだろうか。少しでも寂しいと思ってくれていたら・・・自分から出て行ったくせに勝手だとは分かっているが、そう思わずにはいられない。
「俺は本当に嫌なやつだな・・・」
ザックのことが大好きなのに、せめて今だけは傷ついていてくれたら嬉しいだなんて。
俺はそんな醜い考えを振り払うように布団を被った。今は侯爵との夜会のことを考えよう。もう一度礼儀作法を確認した方がいいかもしれない。
侯爵と話してみて、やっていけると思ったら婚約の話を受けよう。そしてザックには心移りしたとでも言うのだ。
・・・本当のことを言ったらザックは諦めずに俺を助けてくれようとするかもしれないから。
そう考えたところで胸がズキンと痛んだ。
いつの間にかこんなにもザックのことが好きになっていたらしい。最初は弟のような存在だったのに、再会してからはあまりの溺愛ぶりにすっかり絆されてしまった。
いっそ再会などしなければ今頃平民としてルイスたちとそれなりに楽しくやっていたのではないかと思わなくもないが、ザックとの楽しかった日々を思い出すと、全てを無かったことにしたいとは思えなかった。
(半年の期間を設けて本当に良かった・・・)
それがなければさっさと結婚して今より事態が大きくなっていたかもしれない。
「これで良いんだ・・・」
俺は自分を納得させるようにそう呟く。そしてザックを諦めようと決意してそっと目を閉じた。
その後、俺はまるで心の整理をつけるように翌日までぐっすりと眠り続けた。
「本当に大丈夫?」
カインが夜会へ参加する準備を進める俺の顔を覗き込む。
「大丈夫だ。一緒に夜会に参加するだけだし。ザックと行ってた時と変わらない。」
「でも、今日は公爵は隣にいないんだよ?」
そう、今日は初めてザックなしで社交の場へ参加する。その事に不安がないわけではないが・・・
「そうだけど・・・今までだってつきっきりだったわけじゃないし、そう変わらないさ。」
「だと良いんだけど・・・」
俺は、カインに、というより自分を安心させるようにそう返した。そういえば、あれからザックから連絡がないがどうしているのだろう。もしかして、勝手に家へ帰った俺のことを怒っているのだろうか。
それならそれで都合が良い・・・そうして、俺は不安そうなカインに見送られながらやってきた侯爵の馬車に乗り込んだ。
白地に銀の羽の刺繍があるその服はまるで天使を連想させるとても美しいものだった。もちろん通常の型の服なので右腕は寂しくぶらついているが・・・ザックのような気遣いを期待する方が無茶だろう。
きっとカインなら着こなすのだろうが俺には似合わなかった。というかカインがよく着ている服に似ている気がする。
「まあ、服を贈ってくれるだけありがたいか。」
なぜ侯爵が俺と婚約したいのかは謎だが、少なくともそれ相応のことをやろうとはしてくれてるらしい。俺は服を仕舞ってベッドに寝転がった。
今頃ザックはどうしているだろうか。少しでも寂しいと思ってくれていたら・・・自分から出て行ったくせに勝手だとは分かっているが、そう思わずにはいられない。
「俺は本当に嫌なやつだな・・・」
ザックのことが大好きなのに、せめて今だけは傷ついていてくれたら嬉しいだなんて。
俺はそんな醜い考えを振り払うように布団を被った。今は侯爵との夜会のことを考えよう。もう一度礼儀作法を確認した方がいいかもしれない。
侯爵と話してみて、やっていけると思ったら婚約の話を受けよう。そしてザックには心移りしたとでも言うのだ。
・・・本当のことを言ったらザックは諦めずに俺を助けてくれようとするかもしれないから。
そう考えたところで胸がズキンと痛んだ。
いつの間にかこんなにもザックのことが好きになっていたらしい。最初は弟のような存在だったのに、再会してからはあまりの溺愛ぶりにすっかり絆されてしまった。
いっそ再会などしなければ今頃平民としてルイスたちとそれなりに楽しくやっていたのではないかと思わなくもないが、ザックとの楽しかった日々を思い出すと、全てを無かったことにしたいとは思えなかった。
(半年の期間を設けて本当に良かった・・・)
それがなければさっさと結婚して今より事態が大きくなっていたかもしれない。
「これで良いんだ・・・」
俺は自分を納得させるようにそう呟く。そしてザックを諦めようと決意してそっと目を閉じた。
その後、俺はまるで心の整理をつけるように翌日までぐっすりと眠り続けた。
「本当に大丈夫?」
カインが夜会へ参加する準備を進める俺の顔を覗き込む。
「大丈夫だ。一緒に夜会に参加するだけだし。ザックと行ってた時と変わらない。」
「でも、今日は公爵は隣にいないんだよ?」
そう、今日は初めてザックなしで社交の場へ参加する。その事に不安がないわけではないが・・・
「そうだけど・・・今までだってつきっきりだったわけじゃないし、そう変わらないさ。」
「だと良いんだけど・・・」
俺は、カインに、というより自分を安心させるようにそう返した。そういえば、あれからザックから連絡がないがどうしているのだろう。もしかして、勝手に家へ帰った俺のことを怒っているのだろうか。
それならそれで都合が良い・・・そうして、俺は不安そうなカインに見送られながらやってきた侯爵の馬車に乗り込んだ。
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。