君がずっと好きでした。〜君が届かなくなる前に。〜

谷山佳与

文字の大きさ
23 / 31
本編 東の妖精姫

貴方は私から諦め方を奪ったの 5。

しおりを挟む
何度目かの浮遊感を感じ終えた後もぎゅっと目を瞑りライラックにしがみついていた私は、”メリッサ!”と呼ぶ、兄の声に固く閉じていた目を開くと同時に、ライラックの傍に来ていた兄にそのまま両腕を伸ばしライラックの腕から離れた。

「お兄様心配かけてごめんなさい。」
「いや、レティーシア様がご一緒だと聞いていたから大丈夫だと思っていたが、・・・何がそんなに怖かったんだい?」
「あの・・・、えっと・・・・。」

壊れた幽閉棟とライラック様とノアお兄様の間を忙しなく視線を動かせば、察しのいい兄は私が意図することを汲み取ってくれた。

「ノア王太子殿下、私が一緒におりながら妹君を巻き込んでしまい、申し訳ございませんでした。」

頭を下げたレティーシア様に、お兄様は慌てる。
どちらかと言えば、レティーシア様も私同様被害者なのだ。

「頭をあげてください。レティーシア様のおかげで妹は取り乱すことなく、無事だったのですから。レティーシア様もおケガはございませんか?」
「私は大丈夫ですが、念のため私と一緒に医務室にて治療の必要が無いか確認をしていただけませんでしょうか?」
「こちらこそ、有難うございます。メリー歩けるかい?」
「あ、はい。大丈夫です。」

ノアお兄様から地面に降ろしてもらいレティの隣に立つが、かくんとその場に座り込んでしまった。

「メリー大丈夫?!」
「・・・大丈夫ですが・・・たて・・きゃあ!!」
「俺が連れていく。ほら、レティも。」

と、私を片腕に抱き上げレティに手を差し出したのはライラック様。
お兄様も、よろしくお願いしますとライラックに言うと、アルベルト様とラザルート様と一緒に事件の詳細を聞きに行かれた。
王城の廊下をレティの速度で歩くライラック様はどこか不機嫌そうな雰囲気を醸し出していた。

「あの、ライラック。私、気づかぬうちに失礼なことをしてしまいましたでしょうか?」

そう尋ねれば、驚いた様な表情をされその隣でレティが笑いを堪えていた。

「っ、ふっ、ふふっ。」
「レティ、笑いたければ笑えばいいだろう?どうせ俺は度量の狭い男ですよ。」
「え?」
「も、やだ。自分で認めるの?ライが?」

先程よりも表情を取り繕うことなく眉間にシワを寄せたライラックは黙ったままだ。
たどり着いた扉の前でレティが手を翳すと、自動扉は開き消毒液の医務室独特の香りがした。
室内に入れば、髪をひとつにまとめ、ふくよかな体躯の女性が椅子に座っていた。

「先生、レティとメリッサ王女に怪我が無いか確認してくれませんか?」
「あらあら、どうぞお姫様方お掛けなさいな。王子はマリーに、儀式に使う道具一式持って医務室へ来るように伝えるついでに、荷物持ちをしてらっしゃい。あと、メリッサ王女の侍女の方も呼んで来てください。」

近くにあった椅子に降ろされるとレティと並んで、座る。
ライラックは先生に言われたようにそのまま医務室を出ていった。

「あー可笑しい!」
「王子は何がそんなに気に入らなかったのです?」
「私やっぱり何かしちゃったのかしら?!」

笑いだしたレティの言葉に私は、冷汗をかく。

「あれは、お気に入りを取られた時の顔よ。必然的にメリーがノア様にすぐに言ったのが本人的に気に入らなかったんじゃないかしら?不安な時って恋人でもない相手より、肉親に抱きつくなんてよくあることじゃない。自分の気持ちに対してイライラしてたから眉間にシワがよってたのね。」
「あら、ヤキモチね。」
「え?!」
「メリーはまだ婚約者居ないのでしょう?だったら、問題ないのだけれどね。それとも婚約者がいるの?」
「えっと、一応帰国後婚約をすることになっております。なので、私もそろそろ気持ちの整理をしないといけないのです。」

と、泣くのを堪えた表情になってしまったのだろうか、レティが真顔になった。

「あの、ヘタレ・・・・」

怒気を含ませた言葉に、今度は私が固まる番になった。

「そうね。どこまでこじらせちゃったのかしら?自分の気持ちに気づいていらっしゃりそうなのに。」
「分かっていそうだから、私は口に出せないのよ。でも、そうね、ラズ様には相談しようかしら。もしもに備えて。」
「それはいいかもしれませんわね。はい。メリッサ王女。どこも問題ありません。今夜は無意識下で興奮状態でしょうから、よく眠れるお茶をおだし致しますから、侍女の方がこられたらこのまま医務室でお休みください。」
「有難うございます。」
「レティーシア様は逆に目が冴えた方が儀式はきちんと遂行出来ますものね。」
「そうね。」

と、ため息まじりにレティは応えた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。 しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。 しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。 夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。 いきなり事件が発生してしまう。 結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。 しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。 (こうなったら、私がなんとかするしかないわ!) 腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。 それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

どんなあなたでも愛してる。

piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー 騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。 どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか? ※全四話+後日談一話。 ※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。 ※なろうにも投稿しています。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...