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第二話
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「デルフィお姉様! どうして私は外国の殿方と婚約できないの!? こんな小さな国じゃなくって、もっと大国の王子様だっていいのに! 魅了魔法がなくたって、隣のリュクレース王国のイヴリース王子殿下やクエンドーニ王国のお若いカデッラ公爵閣下でも、お会いできれば絶対落としてみせるわ!」
ブランシュは鼻息荒く、不満をぶちまける。何一つ憚ることのない、ブランシュの正直な気持ちだった。
「ブランちゃんは本当、可愛いものねぇ。昔から婚約の話は後を絶たなかったけれど、みんな魅了魔法で本性を暴いて追い返しちゃうから」
「だって嫌いな男と婚約なんてしたくないもの!」
「でも、その噂がウスターシュ様に伝わって、こんな状況になってしまったのよねぇ」
「むぐぐ」
ブランシュは姉に反論できず、しょうがなく椅子を持ってきて座る。真新しい椅子のクッションはまだ固く、ぽすんとブランシュの体は小さく跳ねた。
ブランシュはコシェ王国一の美少女である、と自負している。事実そうではあるし、名門トリベール侯爵家の娘とあればどこの貴族も姻戚関係になりたいと婚約を申し込んでくる。しかし、ブランシュは人を見る目が厳しすぎた。見栄を張って嘘を吐く男は嫌い、偉そうに振る舞うことを男らしいと勘違いしている男も嫌い、貧弱で淑女を守ることもできないような男も嫌い。それらはブランシュからすれば当然の結婚相手に求める性格的条件ではあるが、貴族の男性は悉くブランシュのお眼鏡に敵わなかった。ブランシュは魅了魔法を使い、あの手この手で男性たちの真意や性分を見抜き、お断りを突きつけてきたのだ。
すでに長姉のトリエンヌがトリベール侯爵家の後継者と決まっているため、ブランシュは比較的自由に婚約相手を選べる。とはいえ政略結婚から完全に離れられることはなく、ブランシュにもとうとう断れない婚約話がやってきた。
それが、コシェ王国第一王子リオネルとの婚約話だ。相手が一国の王子であること、また親同士が親しいため、魅了魔法を使っての破談もできず、ブランシュも諦めて婚約者(予定)に会おうと決心したところ——取次ウスターシュの妨害である。会いたくない気持ちと、邪魔をされて憤慨する気持ちがせめぎ合い、ブランシュもただただ腹が立っている、というわけだ。
最愛の妹ブランシュのことならすべてお見通しの次姉デルフィーヌは、真面目に考えつつこう言う。
「そうねぇー……でも、うちの国の第一王子のリオネル殿下でもお相手としては十分だと思うけれど。文武両道、人望も厚く、朗らかで優しいお人柄だし」
「やだ!」
ブランシュは鼻息荒く、不満をぶちまける。何一つ憚ることのない、ブランシュの正直な気持ちだった。
「ブランちゃんは本当、可愛いものねぇ。昔から婚約の話は後を絶たなかったけれど、みんな魅了魔法で本性を暴いて追い返しちゃうから」
「だって嫌いな男と婚約なんてしたくないもの!」
「でも、その噂がウスターシュ様に伝わって、こんな状況になってしまったのよねぇ」
「むぐぐ」
ブランシュは姉に反論できず、しょうがなく椅子を持ってきて座る。真新しい椅子のクッションはまだ固く、ぽすんとブランシュの体は小さく跳ねた。
ブランシュはコシェ王国一の美少女である、と自負している。事実そうではあるし、名門トリベール侯爵家の娘とあればどこの貴族も姻戚関係になりたいと婚約を申し込んでくる。しかし、ブランシュは人を見る目が厳しすぎた。見栄を張って嘘を吐く男は嫌い、偉そうに振る舞うことを男らしいと勘違いしている男も嫌い、貧弱で淑女を守ることもできないような男も嫌い。それらはブランシュからすれば当然の結婚相手に求める性格的条件ではあるが、貴族の男性は悉くブランシュのお眼鏡に敵わなかった。ブランシュは魅了魔法を使い、あの手この手で男性たちの真意や性分を見抜き、お断りを突きつけてきたのだ。
すでに長姉のトリエンヌがトリベール侯爵家の後継者と決まっているため、ブランシュは比較的自由に婚約相手を選べる。とはいえ政略結婚から完全に離れられることはなく、ブランシュにもとうとう断れない婚約話がやってきた。
それが、コシェ王国第一王子リオネルとの婚約話だ。相手が一国の王子であること、また親同士が親しいため、魅了魔法を使っての破談もできず、ブランシュも諦めて婚約者(予定)に会おうと決心したところ——取次ウスターシュの妨害である。会いたくない気持ちと、邪魔をされて憤慨する気持ちがせめぎ合い、ブランシュもただただ腹が立っている、というわけだ。
最愛の妹ブランシュのことならすべてお見通しの次姉デルフィーヌは、真面目に考えつつこう言う。
「そうねぇー……でも、うちの国の第一王子のリオネル殿下でもお相手としては十分だと思うけれど。文武両道、人望も厚く、朗らかで優しいお人柄だし」
「やだ!」
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