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第十八話
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トリベール侯爵ではなくリオネルの発案、そこまではよかった。しかし、リオネルがシャルトナー王国へ『留学』、つまりコシェ王国を離れて身柄をシャルトナー王国へ預けるとなると、これにはフローケ伯爵だけでなく、大臣たちも反発した。
「それは、人質と同じではないか!?」
「何を馬鹿なことを! リオネル殿下を何と心得るか!」
囂々の非難を浴びても、トリベール侯爵は平然としている。他に手はないのだ、と知っているからだ。
そして、当のリオネルの父である国王は冷静であり、トリベールへこう尋ねた。
「のうトリベール侯爵。敵の懐に、リオネルがどうやって入るのだ?」
国王は、『留学』の意味を正しく理解していた。同盟が成立すれば、リオネルは人質であり、外交窓口ともなり、またシャルトナー王国との架け橋となり、両国の関係を改善していく希望の星となるのだ。そうすれば、コシェ王国は少なくとも同盟の恩恵を与れる。
そうするためにはどうすればいいか、それはトリベール侯爵の頭にちゃんとプランニングされていた。
「陛下、我が娘のことは憶えておられますか? 殿下の婚約者候補である、三女のブランシュです」
「おお、あの可愛らしい子か。憶えているとも」
「ブランシュは強力な魅了魔法の使い手です。シャルトナー王国の社交界との繋ぎはお任せください。我が家が総力を上げて支援いたします」
おお、と歓声が上がる。魅了魔法はただ他人を魅了するだけの魔法ではない、心の壁を取り除いて人間関係を円滑にする役割もあり、コシェ王国の王侯貴族はそれを身をもって知っている。トリベール侯爵家を憎めない彼らは、それがシャルトナー王国でも通用するだろうと思えた。
「うーむ、それは頼もしい」
「加えて!」
トリベール侯爵は大手を振って——ちらりとフローケ伯爵を見てから——切り札を出す。
「先日の殿下の暗殺未遂事件を防いだのは、まさに我が娘の魅了魔法です。封魔道具すら弾いて暗殺者を脱力させ、殿下をお守りしたのはブランシュでございます。まあその後、二日も寝込んでしまいましたが、命に別状はございませんでした」
先日のリオネル暗殺未遂事件、ブランシュとリオネルにとっては災難極まりなかったが、雨降って地固まるとばかりにブランシュの価値を大いに喧伝することにもなった。
これには、国王も大はしゃぎだ。
「なるほど、なるほど! ブランシュ嬢はリオネルの伴侶として、護衛として申し分ないということか!」
「それは、人質と同じではないか!?」
「何を馬鹿なことを! リオネル殿下を何と心得るか!」
囂々の非難を浴びても、トリベール侯爵は平然としている。他に手はないのだ、と知っているからだ。
そして、当のリオネルの父である国王は冷静であり、トリベールへこう尋ねた。
「のうトリベール侯爵。敵の懐に、リオネルがどうやって入るのだ?」
国王は、『留学』の意味を正しく理解していた。同盟が成立すれば、リオネルは人質であり、外交窓口ともなり、またシャルトナー王国との架け橋となり、両国の関係を改善していく希望の星となるのだ。そうすれば、コシェ王国は少なくとも同盟の恩恵を与れる。
そうするためにはどうすればいいか、それはトリベール侯爵の頭にちゃんとプランニングされていた。
「陛下、我が娘のことは憶えておられますか? 殿下の婚約者候補である、三女のブランシュです」
「おお、あの可愛らしい子か。憶えているとも」
「ブランシュは強力な魅了魔法の使い手です。シャルトナー王国の社交界との繋ぎはお任せください。我が家が総力を上げて支援いたします」
おお、と歓声が上がる。魅了魔法はただ他人を魅了するだけの魔法ではない、心の壁を取り除いて人間関係を円滑にする役割もあり、コシェ王国の王侯貴族はそれを身をもって知っている。トリベール侯爵家を憎めない彼らは、それがシャルトナー王国でも通用するだろうと思えた。
「うーむ、それは頼もしい」
「加えて!」
トリベール侯爵は大手を振って——ちらりとフローケ伯爵を見てから——切り札を出す。
「先日の殿下の暗殺未遂事件を防いだのは、まさに我が娘の魅了魔法です。封魔道具すら弾いて暗殺者を脱力させ、殿下をお守りしたのはブランシュでございます。まあその後、二日も寝込んでしまいましたが、命に別状はございませんでした」
先日のリオネル暗殺未遂事件、ブランシュとリオネルにとっては災難極まりなかったが、雨降って地固まるとばかりにブランシュの価値を大いに喧伝することにもなった。
これには、国王も大はしゃぎだ。
「なるほど、なるほど! ブランシュ嬢はリオネルの伴侶として、護衛として申し分ないということか!」
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