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四季節の章

4話大将軍任命

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 ルジナリ・メグホンは嵐の国が大好きだった。現在の国王で、ひどい王国になってしまった。
 だが先代の国王はとても慈悲深かった。


 ルジナリは冒険者ギルドでは1,2位を争う強者でもあるし、槍のルジナリといえば誰も知らない者はいなかった。


 そして、この国が勇者に乗っ取られた時、真っ先に彼女は勇者を殺そうと、監視していた。
 しかし勇者は誰も殺さずモンスターすら殺さず、飢えで苦しみ人々や奴隷たちを次からつぎから次へと解放させていった。


 ルジナリはいつしか先代の国王の生まれ変わりでも見ているように、心酔していて、今ではストーカーのように勇者を付きまとっていた。


 勇者はそのことなどつゆ知らず、兵士たちの中に紛れ込む青髪の女の子にすら気づかない。


「勇者さま」


 もはや彼女の眼には勇者しか入らず。勇者が敵の将軍のゴブリンを追い払った時、ルジナリは感じた。


「これは運命よ」


 彼女は思い込みが激しかった。


 すると勇者の右と左に鬼人族とトロール族の将軍二名が迫っていた。


 勇者が二方向をガードしようとしたまさにそのとき、風のように現れたのがルジナリだった。
 ルジナリは鬼人族、つまり一本角の魔族の刀を槍ではじく。


 鬼人族はその種族独特の刀と呼ばれる装備を作ることに長けている。


「助かった。ルジナリ」


 初めてあって、初めて名前を言われて、初めてどうやってルジナリの名前を知ったのかという謎はすぐに判明した。


「ま、まさか鑑定を」


「そうだ。ルジナリ」


「はわああわわあわわ、すべてを見て」
「どうした? ルジナリ」


「あああああああ」


 とルジナリは悶絶していた。
 それを勇者はにこりとほほ笑み、手をひぱってくれる。


「しっかりしろ、トロールは俺様がやるから、ルジナリは鬼を頼む」
「了解しました。それと勇者さま、私はベジタリアンであります」
「奇遇だな俺様もベジタリアンだ」


 勇者は突然消えたと思ったら、トロールと戦っていたし、ルジナリは鬼人族がこちらを睨んでいることに気付いた。


「人間、殺すぞ」


「うっるさいわねぇ」


 勇者がいなくなったおかげで、ルジナリの本性が現れる。 
 ルジナリは基本、男性には厳しいし、基本ドSでもあった。


「おしりぺんぺんされたいようね」
「は?」


「私今非常に機嫌がいいの」
「だから?」
「だからお尻ぺんぺんでしょ」
「意味わからないから」


 鬼人族のおっさんを鑑定することにした。


 メーダン 鬼人族長
 レベル 250
 スキル 敵対しているため表示されません


 一方でルジナリのレベルは


 ルジナリ・メグホン 冒険者
 レベル 200
 スキル 【サディスト】【ブリッコ】【槍奉行】


 【サディスト】は【相手を辱めるとすべての能力が倍増される】
 【ブリッコ】は【相手の不意打ちを強める】
 【槍奉行】は【槍の攻撃力を上昇させ、槍を持っていれば持っている分強くなる】


 というルジナリの力は現在サディストが使用されている。


 ルジナリが跳躍すると、メーダンはその下から刀を振り上げる。
 ルジナリの縦突きがメーダンの腹にヒットすると思った瞬間、ルジナリはそこから消失した。


 正確にいうなら、消えたのではなく、落下した。


 メーダンの背後に突いた瞬間、まずやったのが。


「ダメでしょ悪い子は」


 といって、メーダンのお尻をぺんぺんしたのである。メーダンはあまりの羞恥に仲間の魔族が笑っているのを見ていた。さらに羞恥が高まれば、ルジナリはどんどん強くなる。


「よ、よくもおおお」


「ダメでしょ子供は夜寝ないと、ぺんぺん」


「ぎゃあああああああ」


 メーダンの怒りケージがマックスになってしまったようで、ルジナリは四歩ほど離れた。
 気づいた瞬間、ルジナリの攻撃力がありえない上昇をふまえて、ルジナリの槍がメーダンの横をそれた。そこにクレーターができるほどの、槍の突きに、メーダンは悲鳴をあげて撤退をはじめた。


「んもう、この力は、辱めた人がいれば強くなるのに、本人がいなくなったら、別な魔族をっと」


 ルジナリの周囲から魔族はいなくなっていた。


「んもう」


 ルジナリはにやりと笑っていたのであった。



   ―最強勇者―

 モッタモタ トロール部隊リーダー
 レベル 500
 スキル 敵対しているため表示されません


「問う、おぬしは肉をたべるか?」
「もっちろん、お前もくってやるぐへへへ」
「ベジタリアンになる気はあるか?」
「あるわけねーよ、ぎゃ」


 トロールは星になった。


 最強勇者の眼力で回りのトロールたちが撤退を始める。


「さすがです」


「ダレあんた?」


 そこには着物みたいな服を着ていた熟女がいた。まだ三十くらいだそうだが勇者にとっては熟女でもある。


 ムルネ・メイビィン 宰相
 レベル 100
 スキル 【共感者】【説明のプロ】【計算の達人】

【共感者】は【いろいろと感じて、応用と対応をとれる】
【説明のプロ】は【一から十までゆっくり説明して相手になっとくさせる】
【計算の達人】は【瞬時に計算できる。それは軍略でも計算問題でも】


「ムルネかあんたは何用?」
「わたくしを雇用してほしい」


「いいぜ、今までどこにいたんだ?」
「あのクソ王様によって幽閉されていました。わたくしがこの国は作り直す必要があるといったら即時に幽閉です。笑えません」
「あっはっは、気にいった」
「ところであのクソ王様はどこにいったんですか?」
「まぁ星になった、今のトロールのようにな」


「そ、そうですか」


 ムルネは反応に困っていたようだ。


「そろそろやばいやつ着そうだから、ムルネは兵士を引き連れて国に戻ってくれ、あとは俺様とルジナリでなんとかする。ミル、隠れてないででてこい」


「はいですううう」


 そこらへんに落ちていた樽から出現し、近くの箱からセバスダンが出現する。


「うちは勇者様の従者なのです。おいてけぼりはいやです」
「いや忘れてた」
「はううう」
「嘘だ」
「勇者さまあ、さっきのトロール怖かったです」
「わしもじゃ」


「これはセバスダンどの」
「ムルネどのではこざらぬか」
「話はええーセバスダンとムルネで撤退してくれ」
「これは珍しい、めちゃくちゃな勇者さまの意見とは思えないぞ」
「たぶん、魔王だ」
「撤退します」


 セバスダンはあっけにとられて猛スピードでムルネを引っ張っての撤退、一方でミルはにこにこしている。


「お前は俺様の戦いをみて強くなれ」
「はいです」
「いいか絶対に助太刀しようとするな、死ぬぞ」
「はいなのです」


 目の前に火の球が落下してくる。
 そいつは地面に隕石が落ちるほどの勢いで粉塵をまき散らした。地響きが起こり、いたるところモンスターは頭をさげていた。


 全身を真っ黒なドレスをした女の子がこっちを見てにこりと笑う。体中に薄いバリアがあるし、ほぼ鑑定は意味をなさない。


「ふはははっは、この肉食派の魔王を倒せると思うてか」
「奇遇だな、俺様は草食派のベジタリアンだ。まぁ二つの意味は同じだが、ベジタリアンという名前が気に入っている。俺様とおまえは相いれない敵対者どうしさ」


 そういって、魔王は目の前から消滅した。
 勇者の背後をとった瞬間、勇者がその背後をとった。


「なぬう」


「移動魔法のワープはこうやって使うこともできるんだぜい」


 今リュードは後ろにワープ魔法を使用したのであった。


「うらあああああ」
「がああああああ」


 二人の拳という拳での殴り合い、永遠に続くと思われたその乱闘は、終わることはなかった。


 回りの魔族たちはあっけにとられていた。


 右頬を殴られたと思ったら魔王の腹にパンチがめり込む。


 普通はその一撃で星になるのだが、魔王の防御力のたかさに星にすることができない、星にするには、ヒットポイントをある程度削る必要があるし、弱らせる必要がある。

 
 今までの魔王はそうやって倒してきた。
 それを五十回もやれば、どんな魔王がいて、どんな強い魔王がいるのか分かってくる。


「うおおおおおおおおお」
「らあああああああああ」


 二人はぶつかり合って、殴りあって、いつしかスキルを使わなくなって、ただの武闘家として戦い続ける。


「ぜは」
「ふは」


 二人は十メートルの距離を離れて、肩から息を吸いあげる。


「おめーつよいな」
「おぬしもよのう」


 しばし、二人は見つめあっていた。
 脳内に何かが響いた。その目をみていた。その顔をみていた。

 
 いまは数年前、現実世界にいたとき、勇者になるまえだった。幼馴染がいた。彼女はいつもリュードのことばかり心配してくれた。突然の分かれ、彼女は車に轢かれて死んだ。


 それを知ったとき、リュードは鼻水をたらしながら、もう泣かないと決めて大泣きしていた。

 そいつと、顔が全く同じだし、こちらの顔はきっと数年の時を経て、さらには強くなることによって原型をとどめていないはず。


「お前アンリか」
「え?」


 すると魔王は突然の言葉に大慌ての表情を見せた。


「リュード? あの泣き虫リュード?」
「泣き虫はいらない、つうかお前車に轢かれて死んだよな」
「あのあと魔王として転生したんだけどさ、この世界を救ってくれと先代の魔王に頼まれて」
「侵略が助ける?」
「だって、嵐の国では奴隷やらがひどいって、そもそもわたしの仲間たちのほとんどは奴隷から助けたやつだし。東西南北、すべての国で奴隷あるから、いままで修行してきたのに」


「あーわかった。この国にはもう奴隷はいません、いま新しくつくりかえてる最中です」
「うそーん」


 突然魔王と勇者が地面に座って談笑している光景に回りからざわめきが広がった。


「つまり、私とリュードが手を組んで、東西南北の国から奴隷をすべて廃止してすべてをベジタリアン国家にすると?」
「そうだ」
「でも私肉食べたいな」
「これ食ってみろ」


 勇者はアイテムボックスから肉の花を取り出した。


 赤い花なのだが、彼女がもシャリと食べると。


「うそでしょ、これは高級和牛の味よ」
「そのとおり、前の世界で学んだ方法だ。俺様はこの世界の生き物が手を組んで生きれる夢を抱いていた。そのためには肉食をすてること、つまりベジタリアンになることだ」

「へぇ」


「どうだ? 手を組むか」
「あったりまえじゃないの」


 かくして二人の勇者と魔王は手を組むこととなった。
 ルジナリが大将軍に任命され、ムルネは宰相に任命され、魔王はリュードと同盟を結び、アンリから言われた発言で、リュードは頭をおさえた。


 この世界にはあと二人の魔王がいるとのこと、二人はアンリ魔王とは敵対しているため、同盟は難しいとのこと。


 そしてリュードは今までの世界ではありえないことは、アンリを含めた複数の魔王と戦うこととなる。アンリ魔王とは同盟を結ぶも、あとの二人は大陸の外らしく、今は害はなさそうだと思う次第であった。


 リュードは魔王との交易路を確立、肉食を捨てさせ、動物を食べることを禁止、魚を食べることを禁止、間違って虫を殺すことは仕方ない、害虫はベジタリアンの敵だから、殺すのは許可してある。


 あとは魔王との合同訓練などを思い描き、国の地盤を固める。

 
 リュードはいろいろと満足しているが、まだ納得いかないところも最初のムルネと相談。
 この国には軍師が必要だとムルネは言うが、リュード自身が軍師なため必要ないとのこと。


 この国の国王についてだが、みんなは忘れていた。


 一方無人島では。


「おーのおおおおお、なんで、空からトロールふってくんじゃああああ、わしは国王だぞお」


 あたりにトロールが沢山落下してくる。いつしか国王は十人の魔王と舎弟になっていた。まぁいいように使われているのは国王だが、もと盗賊ギルド長とかいたけど、やつら逃げてしまった。
 魔王と仲がよくなり、いつしかあの勇者に報復することばかりを考える国王であった。
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