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12話 プチ戦争
しおりを挟む「なるほど、人間達が攻めてくると、十中八九俺達を奴隷にするつもりだろうな」
リザードマン族のトビウオが冷徹な目をしていた。
「あなた、戦うなら私も戦いますよ」
「いや、ササケはチギョを守ってくれ」
「はいですわ」
トビウオが1人の戦士のように妻に指示を下していた。
「シェイカはどのくらい戦える?」
「はい緑魔法を使って木々を操る事が出来ます」
「なら後ろをお願いしてもいいか、後ろの柵の向こうには鬱蒼と森が茂っている。そちらから冒険者達がやって来るがよろしく頼む」
「任せてください」
「踊り子たちもそちらをお願いしたいが、どのように戦える?」
「うちとテンシャンは踊り子の舞という戦い方が出来ますわ」
「ならテンケイとテンシャンはシェイカの護衛をしてくれ」
「「承知です」」
「ネネッスとカットネスはどうだ?」
「あたいは基本的に建築とかしか出来ないから、落とし穴とか罠なら作れるよ」
「わしは伝説の鍛冶屋じゃ、という事は伝説なみに武器を使えるという事じゃ」
「なら2人は森側ではなく門のところでお願いしたい」
「「承知」」
先程シェイカ達が森側と言ったのだが、柵は円を描くようにあり、後ろの柵の向こうに森が広がっているという形だ。
「ルンルンは何が出来る?」
「えーと、何もない所に雲を創造出来ちゃったりします」
「なら奴隷商人達を雲で惑わしてくれ」
「了解でーす」
「トビウオも門の所でお願いしたい」
「承知」
大体の配置が終わった所でラドロスは仲間達に加護を与える事にした。
水の加護、炎の加護、俊足の加護、防御の加護、回復の加護。
回復の加護では予め加護しておく事によりダメージを受けた時勝手に回復されるというもの。
普通に加護自体を回復魔法のように使用する事も出来る。
敵が来る前にネネッスの高速罠建設が始まった。
だいたい5分程度で終わらせる辺りが恐ろしい。
ついに村の入り口に101名の奴隷商人達がやって着た。
リーダーらしき人が槍を構えて歩き、門の所に到達する。
とても小さい人間であった。
彼は帽子を被りながら、大きな声で怒鳴った。
「この門を開けよ、ここにいるモンスター達を捕まえる為に使わされた本土の死者なり」
その後ろでは戦闘奴隷達が弓を構えている。
しかし彼等が誰を狙っているかは不明だ。
なぜなら村の中には村人は存在していないからだ。
村の門を守るチーム。
カットネスとトビウオは右と左に地面を掘って隠れている。
返事のない事に苛立ちを覚えたのであろう、奴隷商人のリーダーが叫び声を上げる。
だが弓矢の目標となる相手がいない。
「本当にこの村に沢山の人がいたのだな?」
「へい、確かにいました。キャンプファイアーなんか焚いてました」
どうやら斥候の役割をしている奴隷商人がいたようだ。
辺りを支配するのが突如現れた雲だった。
雲がどんどんと増殖していく中で、戦闘奴隷達はざわつき始めた。
戦闘奴隷達は恐怖のあまり怯え始める。
「ええい、沈まれ、ただの雲じゃないか」
リーダーの叫び声に、その場にいる奴隷商人達ですら怯ええているようだ。
「こんな地上に霧ではなく雲とは聞いた事がありません」
「しかし、事実上目の前に広がっているだろう」
「ですが、もしかしたらここは伝説にある死霊の村では」
「それはありえないだろう、村の姿を見る限り最近作られたばかりだ。よし門を破壊しろ」
その言葉を合図に戦闘奴隷達が歩き出す。
一人また一人と雲の景色から消えて行く。
「ど、どこだああ」
「ここはどこなんだあああ」
「何もみえないぞおおおお」
そう落とし穴にはまった彼等は落とし穴に充満している雲の景色を見せられている。
なので脱出したくてもパニックになっているし、目の前がはっきりと見えない。
1人また1人と戦闘奴隷達が居なくなる光景を奴隷商人達は恐怖の目をして見ていた。
しかし1人だけ違った人物がいた。それが奴隷商人のリーダーであった。
彼は顎に手を当てている。
次の瞬間、地面が崩れる音が聞こえた。
「奴等落とし穴を作りやがった」
その発言で仲間達が亡霊に捕まったのではないと悟ったのか。
ほっとしている。
その時2人の猛者が出現する。
1人はリザードマン族のトビウオという男性であった。
はっきり言うとラドロスには彼の強さがいまいち分からなかった。
その自信のある発言や実のこなしで少し出来る人間なのは疑っていなかった。
トビウオは長大な槍を構えている。
槍が閃く度に戦闘奴隷が先頭不能に陥る。
大抵は胸の真ん中を突かれる。
もちろん殺していない。
ラドロス神様は皆に1つお願いした事がある。
それはどんな事があっても相手を殺してはならぬという事だ。
別にラドロス神様が殺さなければ【神の掟】に触れる事はない。
だけど殺してしまったら殺した奴が嫌な気持ちになる。
その気持ちで村を楽しく国に発展等出来ないだろうと、思った。
だからトビウオの槍は相手を貫く事はしない、槍の穂先には布で包まれているし。
その包まれているおかげで槍は棒のような役割になっている。
もう1つの穴から出現した伝説の鍛冶屋であるドワーフ族のカットネスは、当然のように信用していた。
彼は伝説の鍛冶屋と呼ばれるくらい死地を通ってきているはずだ。
鍛冶屋とは時に水から素材を集める旅に出る事があると聞いた事がある。
カットネスは小さい体を利用して回転しながら伝説の武器の1つを使っているのだろう。
それは杖だった。
魔法使いや僧侶が使うようなその杖はぎらりと光輝いていた。
それを一撃食らうだけで、戦闘奴隷は気絶するくらいの激痛にのたうつ。
それを数分も続けないうち完了してしまう。
残った奴隷商人10人とそのリーダー達は真っ青になっている。
しかしリーダーはにやりと笑っている。
あとラドロスは戦場には存在していない。
加護以外は雑魚当然の彼は、村の真ん中で座禅を組んでいた。
神視点を発動する事により、さらに神の声を発動して、周りに指示を下していた。
「恐らく奴隷商人達が強気なのは冒険者の奇襲が成功すると思っているからだ。シェイカと双子さんたち頼むぞ、トビウオとカットネスは全員縛って置け」
【確かに唯の冒険者じゃないわね】
【こっちは戦闘奴隷と奴隷商人をしばっておこう】
【わしはちょっと疲れたわい】
90名の戦闘奴隷を無力化し、10名の奴隷商人を捕まえる。リーダーも捕まえる事に成功する。
後は冒険者達。
彼等は森から顔を出した。
その前には沢山の木々を操作して囲んでいくシェイカ達がいた。
冒険者は4名いる。
1人がとてつもない高そうな武装をしている。
輝かしい長剣を握りしめており、頭には勇者のような冠。
いやあれは、まさか、いや、まさかあれは勇者だ。
その時ようやくこいつらが自信たっぷりな理由が分かったのだ。
彼等を守る冒険者とは勇者一行様達であったのだから。
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