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第3話 冒険者になりました
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ギルドマスターから発せられる闘気などを感じられるはずもなく、戦闘の初歩中の初歩の信明はロングソードを箒のように持ち、盾をチリトリのように持つ。
箒で掃除をするようにギルドマスターの顔面を捕える。
バコンと当たる音が響いても、そのロングソードの持ち方では威力などでない。
「ふん、なめとるのか、小僧」
「いえ、掃除してみました」
ギルドマスターの2本の木刀が飛来してくる。
信明は、あ、終ったと感じた。
次の瞬間、こんな所で負けていられないと思った。
図書館で働くために、子供の頃から勉強してきた。
そして今、夢が叶うのだ、舞台は異世界であろうとも、図書館を経営する事が出来るのだと、その為には沢山の本が必要で、冒険者ギルドの証明書が必要で。
今思えば、昔から本の事になると見境が無くなってしまってきた。
小学生の頃友達に本を破かれた。
友達を一カ月間追いかけまわして、本の角で殴りまくった。
先生に止められても、親に止められても、しまいには警察に止められても、小学生の信明はひたすら友達に向かって本の角で殴り続けた。
友達は友達ではなくなったけど、あんなやつ友達じゃないと思っている。
本能がどのスキルを発動させて良いかを即座に判断した。
そのスキルはパワーアップというスキルであり、身体能力が2倍になるという驚異的なスキルだ。
ギルドマスターの2本の木剣が振り落とされる。
こちらは掃除の構えだが、木剣と盾を落とした信明は右手と左手でがっしりと木刀を掴んだ。
その光景に観客席の冒険者達は歓声を上げた。
いつしかギルドマスターと信明をからかって笑うのではなくて、彼等は信明を応援していた。
信明は悠然と右手と左手で木刀を握り潰した。
木刀が木片になり粉のように落下していく。
ギルドマスターは口を釣り上げて、後ろに跳躍した。
それを追いかける信明、彼の格闘スタイルはほぼ素人、そして何の型にもなっていない。
いわば、ただ暴れているだけ、しかし信明の攻撃は一撃一撃が重たい。
ギルドマスターは何度も後ろに跳躍し続ける。
「サムライ、あれはなんだ? 何拳法だ」
「あれはただ突っ込んでるだけだ」
「サムライさん、あんな戦い方を見たことがないです」
「それもそうだろう、あれは突っ込んでるだけだ」
「本当ですが、ギルドマスターの攻撃を全て弾いてます」
「あれは手を振り回しているだけだ」
「でも正確に」
「正確には早すぎてお前らの目では把握できてねーだけで、無駄な攻撃を3倍近く解き放ってるぞあの坊主は」
「そんな事が可能なのですか、サムライさん」
「現にあの坊主はやってるだろうがよ」
「サムライさん、あれは無茶苦茶拳法ですね」
「まぁ、名前をつけるならそうだろうが」
信明は突っ込む、突っ込んで突っ込んで突っ込みまくる。
右手と左手が無造作にぶんぶんと振り回される。
そのスピードはもはや音速を超えており、人の目では目視できないレベルに到達する。
正確には無駄な攻撃を連撃で浴びせたりガードしたりしている。
ギルドマスターはけらけらと大きな口で笑い声を上げている。
こちらは必死だよと信明は心の中で突っ込む。
信明の本能が魔法を使えと言う、何も魔法は禁止されていない。
イメージをするがままに無詠唱でぶんぶんと振り回す右手にファイアーを左手にウィンドを解き放ち、2つの魔法が融合する。
偶然出来てしまったファイアーウィングを発動させ、ギルドマスターは驚愕の表情を浮かべて。
「ウ、嘘だろ、融合魔法って、お前すごすぎだろおおおおお」
ギルドマスターの叫び声が響く中、ファイアーウィングを全身に食らって、爆発した彼は煙に巻かれながら、観客の冒険者達はギルドマスターが死んでいない事を祈った。
それは信明も同じ事であった。
なんか偶然出来てしまった融合魔法。
それは皆が出来る事なのだと思っていた。
1人の男が悠然と立っている。
全身が黒い煤みたいになりながらもこちらを見つめている。
そしてそのまま眼の前にぶっ倒れる。
冒険者ギルドの職員達が動かなくなって気絶しているギルドマスターを運んでいく。
その場が静まりかえる中、大勢の冒険者達は既に笑う事を止めていた。
彼等は心の中から1人の冒険者を認めていたからだ。
ぱちぱちという音から冒険者達の叫び声に代わり。
大勢の冒険者が信明を担ぎ上げた。
皆が爆笑している。
「信じられねーギルドマスターを倒す奴がいるとは」
「ったく、誰だこのガキを馬鹿にしたのは」
「てめーだろうが」
「それはおめーもだろうが」
「ふ、型はすばらしい無茶苦茶拳法か? あれを極めればいいさ」
「何、サムライさんは感動してるんだろ新しい拳法が生まれて」
「それプラス掃除剣術もな」
「坊主、掃除剣術を教えてくれ」
「俺様は無茶苦茶拳法でしくよろ」
大勢の人々に囲まれる事になれていない信明は気絶しそうになりながらも、ゆっくりと地面に降ろされた。
そうして眼の前にはヴァンパイア族であり受付嬢のヴァニーがいた。
彼女はにこりと呟くと。
「さて冒険者になれましたね、色々とご説明があるので1階の受付カウンターに戻りましょう」
「はい、よろしくお願いします」
大勢の冒険者がお祭り騒ぎになっていたが、即座にそれは静まり返ると彼等は本来の仕事である冒険者業に精を出すのであった。
皆が仕事でいなくなると、冒険者ギルドは数名だけがいるだけの物寂しい雰囲気になった。
なので受付嬢のヴァニーさんからの説明はよく耳に響いた。
「ではご説明させて頂きます。これが冒険者ギルドのカードです。そのカードは手形とマッチしており失くしてもあなたがカードと呟くと戻ってきます。そこには現在のランクが表示されております。皆さん最初はEランクから始まります。クエストの数をこなしていくとランクが上がります。ランクが上がると色々と出来る事が増えて行きます。Eランクでは周辺の森や草原地帯、山岳地帯にしか行けませんが、Dランクになると海岸地帯や高山地帯にいけるようになります。所々に城壁があります。それは覚えて置いてください」
ヴァニーの説明は長たらしくて覚えていられないだろう、しかし彼女が真っすぐにこちらの瞳を見て語り掛ける物だから、即座に頭で理解する事が出来た。
「では初めてのクエストを受けて見ませんか?」
ヴァニーはこちらを見て、可愛らしく小首をかしげて見せた。
信明はこくりと頷いて、人生で初めてのクエストを受ける事になった訳だ。
箒で掃除をするようにギルドマスターの顔面を捕える。
バコンと当たる音が響いても、そのロングソードの持ち方では威力などでない。
「ふん、なめとるのか、小僧」
「いえ、掃除してみました」
ギルドマスターの2本の木刀が飛来してくる。
信明は、あ、終ったと感じた。
次の瞬間、こんな所で負けていられないと思った。
図書館で働くために、子供の頃から勉強してきた。
そして今、夢が叶うのだ、舞台は異世界であろうとも、図書館を経営する事が出来るのだと、その為には沢山の本が必要で、冒険者ギルドの証明書が必要で。
今思えば、昔から本の事になると見境が無くなってしまってきた。
小学生の頃友達に本を破かれた。
友達を一カ月間追いかけまわして、本の角で殴りまくった。
先生に止められても、親に止められても、しまいには警察に止められても、小学生の信明はひたすら友達に向かって本の角で殴り続けた。
友達は友達ではなくなったけど、あんなやつ友達じゃないと思っている。
本能がどのスキルを発動させて良いかを即座に判断した。
そのスキルはパワーアップというスキルであり、身体能力が2倍になるという驚異的なスキルだ。
ギルドマスターの2本の木剣が振り落とされる。
こちらは掃除の構えだが、木剣と盾を落とした信明は右手と左手でがっしりと木刀を掴んだ。
その光景に観客席の冒険者達は歓声を上げた。
いつしかギルドマスターと信明をからかって笑うのではなくて、彼等は信明を応援していた。
信明は悠然と右手と左手で木刀を握り潰した。
木刀が木片になり粉のように落下していく。
ギルドマスターは口を釣り上げて、後ろに跳躍した。
それを追いかける信明、彼の格闘スタイルはほぼ素人、そして何の型にもなっていない。
いわば、ただ暴れているだけ、しかし信明の攻撃は一撃一撃が重たい。
ギルドマスターは何度も後ろに跳躍し続ける。
「サムライ、あれはなんだ? 何拳法だ」
「あれはただ突っ込んでるだけだ」
「サムライさん、あんな戦い方を見たことがないです」
「それもそうだろう、あれは突っ込んでるだけだ」
「本当ですが、ギルドマスターの攻撃を全て弾いてます」
「あれは手を振り回しているだけだ」
「でも正確に」
「正確には早すぎてお前らの目では把握できてねーだけで、無駄な攻撃を3倍近く解き放ってるぞあの坊主は」
「そんな事が可能なのですか、サムライさん」
「現にあの坊主はやってるだろうがよ」
「サムライさん、あれは無茶苦茶拳法ですね」
「まぁ、名前をつけるならそうだろうが」
信明は突っ込む、突っ込んで突っ込んで突っ込みまくる。
右手と左手が無造作にぶんぶんと振り回される。
そのスピードはもはや音速を超えており、人の目では目視できないレベルに到達する。
正確には無駄な攻撃を連撃で浴びせたりガードしたりしている。
ギルドマスターはけらけらと大きな口で笑い声を上げている。
こちらは必死だよと信明は心の中で突っ込む。
信明の本能が魔法を使えと言う、何も魔法は禁止されていない。
イメージをするがままに無詠唱でぶんぶんと振り回す右手にファイアーを左手にウィンドを解き放ち、2つの魔法が融合する。
偶然出来てしまったファイアーウィングを発動させ、ギルドマスターは驚愕の表情を浮かべて。
「ウ、嘘だろ、融合魔法って、お前すごすぎだろおおおおお」
ギルドマスターの叫び声が響く中、ファイアーウィングを全身に食らって、爆発した彼は煙に巻かれながら、観客の冒険者達はギルドマスターが死んでいない事を祈った。
それは信明も同じ事であった。
なんか偶然出来てしまった融合魔法。
それは皆が出来る事なのだと思っていた。
1人の男が悠然と立っている。
全身が黒い煤みたいになりながらもこちらを見つめている。
そしてそのまま眼の前にぶっ倒れる。
冒険者ギルドの職員達が動かなくなって気絶しているギルドマスターを運んでいく。
その場が静まりかえる中、大勢の冒険者達は既に笑う事を止めていた。
彼等は心の中から1人の冒険者を認めていたからだ。
ぱちぱちという音から冒険者達の叫び声に代わり。
大勢の冒険者が信明を担ぎ上げた。
皆が爆笑している。
「信じられねーギルドマスターを倒す奴がいるとは」
「ったく、誰だこのガキを馬鹿にしたのは」
「てめーだろうが」
「それはおめーもだろうが」
「ふ、型はすばらしい無茶苦茶拳法か? あれを極めればいいさ」
「何、サムライさんは感動してるんだろ新しい拳法が生まれて」
「それプラス掃除剣術もな」
「坊主、掃除剣術を教えてくれ」
「俺様は無茶苦茶拳法でしくよろ」
大勢の人々に囲まれる事になれていない信明は気絶しそうになりながらも、ゆっくりと地面に降ろされた。
そうして眼の前にはヴァンパイア族であり受付嬢のヴァニーがいた。
彼女はにこりと呟くと。
「さて冒険者になれましたね、色々とご説明があるので1階の受付カウンターに戻りましょう」
「はい、よろしくお願いします」
大勢の冒険者がお祭り騒ぎになっていたが、即座にそれは静まり返ると彼等は本来の仕事である冒険者業に精を出すのであった。
皆が仕事でいなくなると、冒険者ギルドは数名だけがいるだけの物寂しい雰囲気になった。
なので受付嬢のヴァニーさんからの説明はよく耳に響いた。
「ではご説明させて頂きます。これが冒険者ギルドのカードです。そのカードは手形とマッチしており失くしてもあなたがカードと呟くと戻ってきます。そこには現在のランクが表示されております。皆さん最初はEランクから始まります。クエストの数をこなしていくとランクが上がります。ランクが上がると色々と出来る事が増えて行きます。Eランクでは周辺の森や草原地帯、山岳地帯にしか行けませんが、Dランクになると海岸地帯や高山地帯にいけるようになります。所々に城壁があります。それは覚えて置いてください」
ヴァニーの説明は長たらしくて覚えていられないだろう、しかし彼女が真っすぐにこちらの瞳を見て語り掛ける物だから、即座に頭で理解する事が出来た。
「では初めてのクエストを受けて見ませんか?」
ヴァニーはこちらを見て、可愛らしく小首をかしげて見せた。
信明はこくりと頷いて、人生で初めてのクエストを受ける事になった訳だ。
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