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勇者誕生の章

3話 なんか惚れられてしまった

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 なんとなく終末にちなんで。

【このわしを召喚するものはお主か、久しいのう】

「エンドレスドラゴンを呼ぶかか、ふつううううう」

 貴族令嬢の屋敷、
 そこはアンミの貴族の屋敷だ。
 結構な広さがあるので、エンドレスドラゴンを召喚させてもらった。

 エンドレスドラゴンは無限の目と口があり、
 そこからエンドレスと名付けられる。
 無限の口があれば何も体を動かす必要がない、
 ようは令嬢の屋敷に沢山の砲撃台を設置したようなものだ。

「久しぶりだねエンドレスドラゴン、ちょっち助けてもらっていいかな、あのイケメン馬鹿を集中的に狙ってね、あとあの女性は僕のだから攻撃しないように」
「ぼ、僕のですかあああ」


 なぜかめちゃくちゃ嬉しそうなアンミちゃんだった。
 僕はゆっくりと前に歩きだす。
 四方から冒険者たちが群がる。
 多額の懸賞金が目当てだろう、
 そしてデードは自分が目立つことができなかったことをねたんでいる。
 まぁ僕が目立ってしまったのは意外なところからかってやつかもしれないけど。

 合計で10名、レベルは90越えだと思っていいだろう、
 この世界のレベルは上限がないのが怖いところだが、
 僕のレベルは現在100とされている。
 100からなかなか上昇しないのが痛いが。
 それもこれも勇者様のレベリングのおかげだったりする。
 勇者様には恨みはないけどね。

 デルジはただ無手で歩いているだけ、
 周りから接近して倒そうとする冒険者たちはエンドレスドラゴンにロックオンされ、
 次から次へと適格に砲撃されていく、
 その攻撃力ははてしなく冒険者たちは次から次へと爆死していく。

 デルジの恐ろしいところは、殺すことにためらいがないそれにはガキのころの教育が関係していたりする。
 ちなみにデルジは15歳の少年だ。

 デードは必至で砲撃を両断している。
 その中隣にただ呆然とこちらを見ている最悪令嬢または天使令嬢、または悪魔令嬢、色々な言い方があるだろうけど、
 そういう人たちが男たちを騙すというのは小説とか色々なもので知っている。
 だけどどうやら彼女は。

「僕に惚れた?」

 というデルジの問いかけに、
 ハートを打ち抜かれたような顔になり、
 でれでれと顔が歪みだす。
 にこにこして、とても可愛らしい笑顔になる。
 先程まで演じていた悪役令嬢はそこには存在しておらず、
 そこに存在しているのはアンミという一人の女性だった。
 彼女は手を取ると。

「あなたにわたくしのすべてを差し上げます」
「うん、もらったよ、君のすべてを」

 デルジは手をとりあってアンミと一緒にエンドレスドラゴンの下へと歩き出す。
 それを阻止せぬがために動きだしたのはデードであった。
 デードは発狂している。
 
 ちなみに冒険者10名は死亡しており、
 最後の一人がデードで沢山の砲撃の集中の的になっている。
 あのデードは確か当時でレベル100だったから、
 結構な強さだ。

 ずっと両断し続けて、力突きたのか両断しながら隣の部屋に逃げていった。

「忘れるないつかいつか俺が有名になる」

「だからお前は方向性間違ってるって」

 デルジの問いかけには誰も答えてくれなかったけど、
 エンドレスドラゴンに股がったデルジとアンミはそのまま屋敷の扉を粉砕する。

「悪いね君の家を破壊してしまった」
「いいのですわ、もう私の家は決まりましたから」
「僕の女になるってこと?」
「そのとおりですわ」

 初めてデルジは女性と付き合うこととなった。
 付き合うという概念ではないのかもしれない、
 デルジの女という意味、
 それはデルジの奥さんという意味なのか?

 デルジは一人でもんもんと考えると、
 まぁいいかと呟き、
 エンドレスドラゴンに乗って、遥か空を飛空した。

「わぁああ綺麗」
「それが君の本質なんだよ、君はひどい女性を演じていた。なぜだい?」
「それは、よく父上がそのようにして人を騙せて、父上が蒸発してから、わたくしはどうやって生きていけばいいのかわからず、とにかくいろんな男性を騙して」
「本当は楽しかったけどやりたくなかったんだろう?」
「そうです。わたくしは本当の運命を信じていました。ようやくその運命と出会うことができました」
「それが僕?」
「はい、あなたはあなたはわたくしの勇者です」

 その言葉にデルジは真っ青になる。
 次の瞬間心がきりきりと痛くなる。
 なんだろういつもいつもそうなったらと考えていた。
 そう起こってから考えていた。
 それがどれだけ辛いものだろうと、
 僕はガキのころ虐待されていた。
 包丁で体を切り刻まれたり、
 体にはひどい傷がある。

 アンミには見せたくない、
 そう思ってしまい、
 どうやらデルジもアンミに惚れてしまったようなのだ。

 だけどその気持ちは本当の気持ちなのだろうかと、
 やはり虐待された記憶がよぎり、

「奪えないものには得る資格はない」
 
 と両親から言われ、通りすがりの金もちから沢山の金を奪ったり、
 それを見ていた勇者様がデルジを正義の道へとつれていってくれた。

「勇者か僕は勇者よりひどい人間だよ」
「そ、そんなことは」
 
 彼女はこちらを見てはっと気づいたようだ。
 デルジが泣いているということに。

 その日はとても眩しい太陽が昇ろうとしていた。
 たくさんの風が舞い上がり、エンドレスドラゴンはさらに空へと羽ばたく、
 まるで二人の出会いに勇者が歓迎しているかのように、
 雲がまばらに爆発するかのように散った。

 するとそこには、
 二つの星があったのだ。


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