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第10話 最強への修行の道筋

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 ロンバートが、デルトのロングソードと長弓を彼の専属鍛冶屋に預けたと教えてくれたのは修行が始まってから3日だった。

 ロンバートとの立ち合いは一瞬で蹴りが着いた。
 デルトの惨敗になり、それをおもしろおかしく録画機能でもってバレットは撮影していた。
 この録画機能もアプリで手に入れたとか、非常にむかつくかぎりだ。

「そこ、腕立て伏せ100回を終わったら、腕立て伏せ1000回だ」
「桁を間違ってません?」

 当たり前のデルトの突っ込みに。

「口答えしたから、腕立て伏せ10000回だ」
「だから桁間違ってるって」

 今日一日は腕立て伏せで終わった。


 次の日は、木製の剣で大樹を叩き斬れという意味の分からない事をぬかしたロンバートさん、誰もがあなたみたいな異常むきむきマッチョじゃないんだよ。

 案の定、100回叩きつけたらぶっ壊れました。

「気合がたりん」
「気合じゃ無理でしょ」
「口答えしたから、今日はご飯ぬき、豆1個だけ許す」
「ありがたき」

 
 もはや開き直るしかなかった。

 現在休憩中につき、豆を大事にむしゃむしゃ食っている。
 ロンバートさんはおいしそうにステーキバーガーを食っている。
 この差は何?

「師匠と弟子とはそういう関係だ」

「まじすか」
「口ごたえか?」
「そこは判断してくださいよ」
「なら口答えだ」
「って権力横暴」

【権力とは偉い人が持つものです。現在ロンバート殿はデルト様の権力者であられます】
「いつのまに戻ったの、お前はトラックの運転を練習していろ」
【ちょうど補給に参りました】


 という感じで一日が経過した。


「なぁ、ロンバートさん、たまにはうまい飯を食いに行こうよ」
「だめだ。今日の夜ごはんはワカメだけだ」
「なぜにいいい」


 今日の夜ごはんはワカメだけでした。
 ちなみにロンバートさんは牛肉のソテーを食っていたってこの人ウシの肉ばかりくってるぞ。


「では今日の修行を始める。長弓の基本からだ。走りながら的を射ろ」
「それなら得意だぜ」


 とデルトが意気込んで叫ぶと、ロンバートさんはにやりと口の形を変形させた。

「って的も走るんかい、しかもバレットが変なもん動かしてるし」
「あれは古代の産物でドローンと呼ばれるものだ。そのドローンが的を移動させさり、宙にうかしたりする。コントロール者はバレット殿だ。以後よろしく」
【以後よろしく】
「ぶっ壊すぞ」
「ぶっ壊したら、修理費をいただくから、そこも考えとけ」
「以外と卑怯」

 
 そのあと一心不乱に弓矢を射て走りまくる。
 空を飛んでいく的。
 ちなみに雲の上まで飛んでいきました。


「って無理だああああああ」
「無理じゃない、やれば出来る。さぁ」
「さぁ、じゃねーよどこの世界に雲の上の的を射る馬鹿がいる」
「俺様が見本を見せよう」

 ロンバートは背中から長弓を取り出す。
 それはそれはデルトが使っている急ごしらえのものではない。
 現在ロングソードと大事な長弓は鍛冶屋が改造している。
 
 彼は強度がありそうな長弓でもって、弓を射る。
 矢は雲を突き破り、的を射る。その瞬間に空で大爆発が起きる。

「という事になった」
「しゃれにならんわ、お前がドローンを壊してんじゃねーか」
「まぁこういう事もあるさ」
「今までのお前のセリフを俺はお前にそのまま返すぞ」
「もう帰ってきたぜ」

【あああ、ブレットちゃんがあああ】
「何気にお前は名前をつけんじゃねー」
【悪いですかな? わたくしにようやく出来た彼女ですよ】
「会話したのか?」
【奥手でうんともすんともいいません】
「それはな、喋れないし意識もないんだよ、振られたな」
【悲しいです】

「では次の修行をやろう」
「師匠のモチベーションはどこから来てんの?」
「空と太陽からだ」
「なんか納得」

 ちなみに今日はずっとドローンが飛翔するのを弓矢で射るという修行をひたすら続けるものであった。

「今日の修行はあそこにある湖の上を走ってもらいたい」

「はい無理きたあああ」
「無理じゃないお手本を見せよう」

 そういってロンバート師匠は思いっきり走り出した。
 そのまま湖の上を歩き出す。
 正確には全力疾走している。
 もはや万物の定理など無意味のようだ。
 まるで魔法使いのように、湖を一周してくると、

 
 デルトの隣にやってきた。
 彼はにかりと笑った。

「って無理だあああああ」
「まぁ、まずはやってみろ」
「やったら溺れるわ、こうみえても俺泳げないので」
「大丈夫だ腰くらいしか水量がないから」


 その日は何度も湖に沈んでいった。
 溺れないまでも、溺れそうになったりした。
 ちょっぴり恥ずかしかった。
 なぜかその日はバレットはやってこず、一生懸命にアプリの練習をしながら、トラックを運転したり、ドローンを操作したりをしていた。

「うむ、今のデルトには無理があった」
「ようやくわかってくれましたか師匠」
「今日はびしょぬれだし、たき火であたたまり寝る事としよう、明日新しい修行が君をまっている」
「何げに予告みたいな感じで言ってんだよ」
「嫌なのか? わかった。明日君は地獄を見るでしょう」
「余計ダメじゃん」

 そんな感じで、デルトは衣服と下着を脱いで全裸の状況だ。
 衣服はたき火で乾かすとして、さすがの全裸はまずいので、マントを羽織る事とした。

【それがいわゆる裸マントというやつですね】
「そんなの聞いた事ねーし卑猥だな」
「首都にはそのような人がいると聞いた事がある」
「以外と本当だった?」
「という噂だけだ。裸をマントでかくし、女子の前で男の大事な所を見せる輩が増えているらしい、とはいえ俺様が眠る前の話だ」
「それは恐ろしいな、女子の敵だな」

【そういうのを変質者と呼ぶらしいです】
「らしいじゃなくて断定せよ」

「ロンバートさんあなたまさか」
「俺様は変質者じゃない英雄【ヒデオ】だ」
「たぶんそれ字間違ってます」


 そんなとりとめのないやり取りをしながら。
 草原の真ん中で雑魚寝しながら。
 デルトは色々な事を思っていた。 
 しばらくはこの村で自分を鍛えながら冒険者としてのランクをあげていこうと思う。

 
 後は機械乗りとして、名をはせたいしヴェルサスの謎も解いてみたい。

 現在、デルトの夢は肥大し膨大な夢へと広がっている。

 そしてうつらうつらとその日を終えた。
 夜の中月が何個も光っていたが。


 今日は変な夢を見る事はなかった。
 ゆっくりと眠れて、全身は裸でマントを着ている。
 まだ冬の次期ではない為。
 春から夏にと変わっていく季節でもある。

 起きだして、たき火がぶすぶすと消え欠けているのを見て、デルトは乾ききった衣服に着替えた。

 すると明朝体操というものを実行していたロンバート、彼は毎日のように明朝体操を繰り返している。
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