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第16話 ハゲワシの山の戦い

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 次の瞬間だった。
 山の上から沢山の巨大な矢が飛来してくる。
 その矢は岩等にぶつかり弾かれる。
 ヴェルサスとシルフィーヌは岩の影に隠れてやり過ごす。

【5機の弓矢型が構えているでしょう、おそらく岩はフェイクで、岩を破壊した瞬間を狙うといういわゆる岩々戦法でしょうね】
「でどうする」
「大丈夫なの?」
【ご安心を、このバレットに作戦を任せればなんとかなります、ではシルフィーヌさん、あなたには風魔法が使えるという情報がありますが? いかほどに?】
「うん、使えるわよ、軽く岩を吹き飛ばす程度は」
【ならそれでヴェルサスを吹き飛ばし、敵の頭上に飛ばす事は?】
「出来るけど」
「うぉい、俺死ぬぞ」

【てぃってぃ、そう簡単に死にません、高い所から落ちたら死ぬ、それはどんな生き物でも同じ事が言えるでしょう、ただーし】

「ただーし?」

【それは機械人形には適応されません、機械人形には衝撃吸収という機能が付いております。だから空を飛ぶ戦艦からジャンプして地面に着地しても大丈夫だという原理であります。ですが、着地に失敗した場合、衝撃吸収は適応されず、あなたは死にます。ですからそういった死地に立つとあなたは決意したのでは?】

「……」

 デルトは沈黙を保ちながら色々な事を考えていた。

 中途半端が大嫌い、やるなら命がけがいい。


 全てを懸けて、それを失うくらいなら、きっと自分はそこまでの人間だったのだろう。
 きっとそうであるに違いないのだ。


 そこまでの人間、だがそれも悪くない。

「やってやろうじゃねーか」
【その調子です。ちなみに衝撃吸収に失敗した場合、わたくしも死ぬので、一緒に死にますよ】
「全然嬉しくねーが頼もしいぜ」

 デルトの頭から迷いという2文字は消失する。

「さぁやってくれ」
「後悔しないわね」
「もちろんだ、カナエ! いい女になったなぁ」
「あなたも男前になったじゃない」

【風の台風】

 デルトはまるで導かれるように、空へと運ばれる。
 岩の横から現れるのだとばかりに警戒していたのであろう弓矢型は突如現れたのが岩の真上であり、
 真上をまっすぐ空を飛ぶ事を見て驚愕したのか滅茶苦茶な矢が飛来する。

 あれが砲撃型でも問題はないが矢というだけあって、狙いを定める必要がある。
 空を飛翔しているヴェルサスにそのような攻撃は当たる事はせず。


「うおおおおおおおおおおおおおお」
【あひゃああああああああああああああああ】

「人工知能のロボットが叫ぶなあああああ」
【ロボットだってええええええ】

 空中を舞うヴェルサス。
 それはもはやコントロールを取るなど不可能と断言してもいいほどだ。
 空で多種多様な方向からやってくる風に揉まれている。
 それでもシルフィーヌの操作力は鋭く、正確である。
 まっすぐに敵の5機がいる場所へと落ちてくる。
 だがちゃんと着地しないと惨劇となる。
 
 ヴェルサスは崩壊の道を辿り。
 乗り手のデルトとバレットはぐちゃぐちゃになり。
 死亡の道を辿る。

 コックピットは隙間なく密閉されている。
 そのため空に飛翔しようが、どうであろうが、生身の体には影響がない。
 なぜコックピットは密封されているかというと、水の中でも活動出来るようになっているからでもあり、燃料から酸素を生み出すため、燃料がなくならないかぎり、乗り手は窒息死する事はない。


 その場所に着地した時。
 周りには5機の弓矢型。
 デルトはミレニアムソードを鞘から引き抜く時、摩擦熱で火が飛び散る。
 一閃、1体の右肩がずれて、次の瞬間には爆音が轟きだす。
 一閃、2体目の頭部を破壊し、ミレニアムソードで叩き潰す。
 一閃、3体目の足をはらって、仰向けに倒しミレニアムソードで腹部を串刺しにして、抜き放つ。

 オイルのような油のようなものが流れ、爆発する。
 一閃、パニックになった敵が弓矢を投げてくる。
 巨大な弓矢が地面に落下すると爆発するのだ。
 どうやら岩を破壊する為に爆発の矢を用意していたようだ。


 デルトはヴェルサスを駆け巡らせる。

 まるでピエロのようだ。
 ピエロ型であったドンドスの戦い方を思いだしていた。
 ヴェルサスはピエロ型ではない。

 そもそも何型かもわからない。

 それでも近距離、遠距離、魔法という万能種である事は分かっている。

 足払いの要領で目の前の遠距離型の足を粉砕、うつぶせで倒れたので背中にある燃料タンクを破壊した。
 爆発で動けなくさせる。

 最後の1機は逃げ始める。
 ここから追いかけても無理だし、弓矢を構えている暇もない。
 右手を突き出し。

【ザンダーボルド】

 と叫ぶと、目の前に雷の塊が出現する。
 後は真っ直ぐに飛んでいく。
 粉々に機械人形を破壊する。
 死なないようにコックピットを狙わず、腰の部分に命中する。
 吹き飛んでいき、近くの岩場に激突して動かなくなる。

 
「一瞬だったわ、凄いじゃない」
「そうかな」
【デルト様そこはありがとうと言いましょう】
「ああ、お前の風魔法最高だったぜ」
【デルト様、それはナイスな言葉です】
「そう、ありがとうね、風魔法得意だから、それにしても雷魔法凄いね、あんなの見た事ない」
「あれは村長から教わったんだ。それで、バレット全員無事か?」
【敵ですか? 味方ですか?】
「敵だ」
【5人とも気絶しております。なので放っておいても問題ないでしょう、次はこういった作戦は通用しません、ガチでぶつかり合いです。15機の剣士型が2体、斧型が2体、槍型が1体、砲撃型が2体、弓矢型が2体、守護型が3体、魔法型が3体です。多種多様な構成でありますが、ここからは乱戦ですよ、シルフィーヌは援護に徹してください】
「わかった」
「分かる訳ないじゃない、あなた一人で15機相手って無理でしょ私だって」
「魔法型が接近した場合、お前が死ぬ、お前は魔法型として手伝え」
「それでも」
【それに仲間は自分達だけではありませんよ】

「「ロンバートがいた」」

 次の瞬間、砲撃型が爆発した。
 それも2体同時に、また次の瞬間、弓矢型が爆発した。

 あっという間に遠距離を破壊する。

「ロンバート」

 ものすごいスピードで近くまで逃げてきたロンバート。

「ふん、雑魚が、小さいからといって、この俺様を見逃すとは」

 そう生身で機械人形と渡り合える事が出来る2本のハルバート使い、それがロンバートという1人の男であった事を、デルトもカナエも忘れておりバレットだけがちゃんと覚えていたのであった。

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