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第2章エルフとオーガ

29話平原の魅力

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 天童たちが平原を乗り越えようとしてはや2日が経過していた。
 じつはこれほどまでに平原を乗り越えるのに時間を要しているのは、
 ネシネイがいろいろと製造欲求に駆られているためだといっても、過言ではない。

 天童が強すぎて、モンスターが近づいてこない現象。
 それをうまく利用したネシネイの素材集め現象。
 まぁこれは現象とは言えないが。

 ネシネイは草からいろいろなもの、または鉱石からいろいろなもの、
 驚いたのは、ネシネイは鎌、つるはし、などそういった素材集めをする道具を持っていたことだろうか。

 彼女が鉱石採掘に夢中になると、
 天童はそれをただ眺めて、
 にこりとうなずいて、平原の魅力に酔いしれていた。

 いろいろな冒険者とすれ違うことはあった。
 だけどほとんどの冒険者たち、またはなにかしらの傭兵またはいろいろな職務を全うしている人々、

 彼らは天童たちを見ては奇異な瞳を向けてきたものだ。

 なぜモンスターの大群が天童たちの後ろを追いかけているのかということだ。
 なぜかモンスターたちは天童とネシネイに興味を覚えて、最初の平原到達からここにいたるまで数100体のモンスターたちがばれないように、いやばれているが、こちらを追跡している。

 それを見たいろいろな職務を全うする人々は、
 恐ろしくて天童たちに近づいてこないし、
 まぁあれだろう、いま天童たちはMMORPGでいうところのMPK状態になっているのだ。

 例えば、天童の後ろにいるモンスター1体を攻撃するとする。
 そうすれば数100体のモンスターがその冒険者に攻撃をして、
 その冒険者はほぼリンチにあい、死亡するという恐ろしい現状だ。

 天童は大きな岩に乗って、椅子のかわりにして、空を見上げている。
 この世界は本当に不思議だ。
 たくさんの種族がまざった惑星と認識していもいいのだろうか?


 たくさんの世界から国という国の都合にあわせて召喚されていく人々、なかには人間とはかけ離れた生物もいたのだろう。
 そんなところに召喚されることが天童にはターニングポイントになった。

 
 そのときだった。
 全身がぶるりと震えた。
 それはなぜなのか?
 そこに復讐対象の一人がいたからだ。

 天童の瞳はまるで蛇のようになり、
 ぎろりとその獲物を見つける。
 
 そいつは織田でもなく、武田でもなく上杉でもなく幼馴染の明智でもない、
 黒田先生でもないのだ。
 そいつの名前は佐々木。
 
 そいつはこの岩場から結構離れた場所にいた。
 佐々木は剣道部であり、将来を約束されるほどの人物だった。
 ただしそれは違う、自分より弱いやつを呼び込んで、ぼこぼこにするのだ。
 その中に天童もいた。

 天童は何度も何度も竹刀で顔面をなぐられ、ぼこぼこに顔は腫れた。
 それからクラスメイトたちからからかわれた。

 それから天童は佐々木の竹刀の餌食となっていく。
 毎日毎日佐々木の竹刀をくらっては、
 佐々木のレベルアップに付き合わされ、
 彼は無抵抗な天童をいじめるということで、
 どんどん恐怖心がなくなり、

 彼は恐怖心を克服した、佐々木はいつも試合になるとへっぴりごしになり、
 そのたんびに一本とられていた。

 だが天童をいじめぬいた彼はへんてこりんな自信をつけていた。
 そして彼は優勝した。

 それでも佐々木は強さをもとめて、天童を何度も何度もぶったたいた。

 天童は忘れことはない。

 そして現在、佐々木は剣、それはどうやら刀のような武器だ。
 それを構えながらモンスターに狙いを定めている。
 神の鑑定スキルを発動させる。
―――――――――――――――――――
佐々木幾:レベル30:ヒューマン族
職業:調教師
攻撃力50
素早さ25
賢さ80
防御力100

スキル
【モンスターテイマー】【自分よりレベルの低いモンスターを手なずけることができる】
【臆病風】【逃げ足が速い】
【鑑定】【ある程度のものを分析したり確かめたりすることができる】
―――――――――――――――――――

 なるほどあのゴブリンみたいなモンスターをテイムしようとしているらしい、
 奴の後ろにいるスライムとかオークとか、あとはゴーレムみたいなやつを率いている。 
 あれが奴の配下というわけだ。
 天童はにかりと笑いだす。

「ネシネイ、素材を集めててくれ、僕は復讐対象者1名を見つけた」

 ネシネイはこちらを振り向いた。
 その顔は泥で汚れていたが、
 その瞳は子供のようにきらきらと光っていた。

「あい、そっちは好きなようにして、あたしは沢山沢山採るから、オカルトのために」
「おう、ありがとな、たまには自分の為に使えよ」
「もちろん」

 
 天童は歩きだす。
 その後ろに数100体というモンスターを引き連れて。

 
 まるで悪魔の行進のように、ゆっくりとゆっくりと佐々木の後ろからやってくるモンスターの大群、

 そいつらはべつに天童のテイムしたモンスターではない、
 だけどはたからみたら、それはテイムしたモンスターでしかありえないのだ。


 レベルは3500、普通に考えたら、レベル30の佐々木など敵ではない、
 だが天童は楽しむ。
 復讐をするということを楽しんでいる。
 それだけ、それだけ、怒りが限界にまで突破していたのだ。

「さぁ、どんな悲鳴をあげてくれるかな?」
 
 天童はそこに到達する。
 その気配にすら気づかぬ大馬鹿もの。
 それが佐々木幾という人間なのだ。
 奴は大きな岩場でご飯を食べているゴブリンをテイムすることしか考えていない。
 
 だがそのゴブリンは佐々木の顔をみて恐怖の声をあげて逃げ出した。
 佐々木は舌打ちして追いかけようとするも、 
 いなくなり、

「ったく何に怖がったんだ」

 それは佐々木を見て怖がったのではない、
 ゴブリンは見たのだ。
 佐々木の後ろにいる化け物に。


「よう、佐々木」

 佐々木はぶるりと体を震わせると、
 ゆっくりとゆっくりとこちらを見て、
 大きな悲鳴をあげて、後ろに倒れた。
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