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第2章エルフとオーガ

32話エルフ王国ザリンヴァー

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 兵士たちに天童たちが受け持ったクエストの書類、それはたった一枚だけなのだが、
 兵士はそれを見て顔を真っ青にする。
 次に頭をさげて、懇願するかのように何度も何度も右手を左手を握りしめてくるのだ。

「落ち着いでください」
「これはすみません、あなたが我らが王国を救いに来た冒険者だということがわかったので、あまりにも感動しておりました」
「そうですか、でも僕一人でなんとかできるんですか?」
「あなたのレベル3500なら楽勝とはいえずとも、なんとかなるでしょう」


 天童はその言葉の意味を図り間違えてはいけないと考えていた。
 レベルが3500でも楽勝とはいえない?

 それがどういう意味なのか? 
 天童には理解が及ばなかった。


「事情を説明したいのです。エルフ王国までついてきてくれませんか?」
「それはかまわない、へんなことしようとしたら、こっちの天童がだまってない」
「これはドワーフのレディー、エルフとドワーフの仲の悪い時代は終わりを迎えたのです。それほどまでにかしこまらずとも」
「そうだったのね、それはごめんなの」
「いえいえ」

 まわりの20人の兵士たちは希望の光でも見つけたかのように、
 天童たちを馬に乗せて、出発したのであった。

 不思議なのはエルフの馬というのは緑色の馬だった。
 こんなに緑色の馬なんて初めてみたので、
 天童としては感激しかなかった。


 エルフの王国が見えてきた。
 そこは信じられないほどでかい世界樹が存在しており、
 日本で例えると、高層マンションが90階建てまであるような感じで、
 いたるところから巨大な枝が伸びている。
 枝枝にたくさんのエルフたちがいるわけだ。

 
 だがエルフの兵士たちはすぐに世界樹のもとに行くことはしなかった。
 なぜならそこには体をぶくぶくに太らせたゴリラのようなモンスターがいたのだ。 
 そいつはどうやらオーガの仲間らしく。

「あれがオーガの先兵です。ああいいうのが残り29体いるのです」

 エルフの兵士のおびえる声それはとてもとても暗い声色だった。

「あいつらは世界樹のあちこちにいて、世界樹から降りてきたエルフを食い殺すのです。もう1か月にもなろうかということです。あなたたちにエルフのクエストを受給したのは、2か月前です。あと数日おそかったらわたしたちは飢えて死ぬしかありませんでした」

 天童は顎の手をのせて考える。
 この距離だと神の鑑定スキルから遠いいいので。

「ネシネイ、お前はそこでまってろ」
「了解なの」
「わたしたちはどうすれば?」
「君たちはネシネイから離れるな、彼女はああ見えてレベルは数百をこえている」

「う、うそですよね」
「本当だ。だから離れるないいな」
「は、はい」

 エルフたちは戸惑いながら、
 まぁそのくらいしてもらわないと驚かしがいがないというものだ。

 天童はゆっくりとゆっくりと草むらに隠れながら目の前にいるでぶでぶに太った巨大なオーガを見据える。

 神の鑑定を使用することにする。

―――――――――――――
裏メガトンオーガ:レベル4000:オーガ族
職業:爆弾魔
攻撃力40000
素早さ32000
賢さ1
防御力34000
称号【脂肪の大王】

スキル 
【爆発ガード】【爆発系の攻撃を無効化】
【ためる】【攻撃力を底上げする】
【爆発連鎖】【つながっているものを爆発連鎖させる】
【あばれる】【ただあばれる】
―――――――――――――

 天童はゆっくりとゆっくりとネシネイとエルフ兵士たち20名のもとに避難することにした。

「ちょっち、聞いていい?」

 天童の質問に、エルフ兵士はうなずく。

「あんたらオーガのダンジョン的なとところを爆破とかした?」

 するとエルフ兵士たちはこくりうなずく。

「はい、オーガが無限に湧き出てきていので、爆発魔法でダンジョンを吹き飛ばしました」

 天童は頭がいたくなる思い出それを思っていた。

「おそらく30体全員がレベル1000を超えていると見えていいね」
「それはわかっています」
「わってたんかい」
「だからクエストを申請するときはレベル1000以上でと」
「僕しかいねーだろうがあああ」
「失礼ながら、この世界にはレベル1000超えは少なからず存在します」
「そして戦闘の素人である僕にまわってきたと」
「そうです、残念ながら」
「そこはほめようと」
「ですね、残念ながら」

 さっきからネシネイちゃんは一生懸命何かをつくっているわけでして。

「あのう、僕、結構真面目なことを言っているのですがネシネイちゃん?」
「できたの」
「なにが?」
「天童の武器と防具が」
「へぇええ、ってまじかああ」

「素材を説明するのはめんどくくさいから性能だけを神の鑑定でみてみ」
「了解」

 天童はさきほどまでのとてつもない怒りの矛先を求めていたが、
 一瞬にしてその怒りは冷めてしまった。


フリーダムソード:自由神が作り設けた剣、海色のソード。
ダーカーマターの軽装備:宇宙の真理の防具
攻防の石【3個】:発動すると2分ほど攻撃力と防御力を2倍にする。使用後30分冷却。

 まずはフリーダムソードだけど、海色に輝いている。魔法のような剣だった。
 ダーカーマターの軽装備は、真っ黒そのもので、それが宇宙の真理の防具の理由はなんとなくわかる。天童の世界では、ダークマターはごく最近発見されてきたものだ。
 攻防の石については、テレポ石と同じように使いどころを間違わないようにしよう、


 それにテレポ石をつかわずとも、今天童にはテレポートというスキルを覚えているわけなのだから。

 だが攻撃力と防御力の二倍は惜しいし、使い捨てではないので、
 
「天童、一つ言い忘れていた。その攻防の石は2分間だけ使える。冷却するのに、30分の時間が必要だ。全部で3個、連打で使うのもよし、ゆっくり使うのもよしだね」
「そうかご忠告ありがとう」

 おそらくメガトンオーガはもともとオーガのダンジョンの正式名称は知らないが、そこに存在していたのだろう。
 しかも裏ダンジョンにいたと考えてもいいだろうし、
 それが30体もいるわけだ。
 もしかしたらイレギュラーも存在しているのかもしれないが。

 ただ。覚悟はしておいたほうがいいだろう。

 天童はフリーダムソードを抜き取る、
 それを右手に握りしめると、
 左手にアレドロスの長剣を握りしめる。

 するとエルフたちがびくびくとおびえだした。

「ま、まさか、伝説はほんとうに」
「その伝説ってのを聞かせろ」
「それは、エルフ王国の伝説では、2本の剣を携えるもの勇者の資格あり、ただし、そいつのレベルは3000を超えていると」

 天童はにかりと笑う。

「僕は勇者じゃない、そんなに善の塊ではないんのだから」

 ネシネイはこちらをじいっとみていた。
 エルフたちもじいいっとみていた。

 いまいじめられっ子はエルフの民を救おうとうたった一人で動き出したのだ。
 正確には応援してくれるドワーフ一人がいたのだが。

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