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第6話 星の旅団は団員を募集①

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 1人、不登校の高校生16歳、幼少期の頃に虐待を受け、小学校でいじめを受ける。変な力があり、予知的な物だ。それもランダムに発動、唯一の友達を救えず自殺未遂を繰り返す。現在閉鎖病棟で隔離中。

 1人、OL女子25歳、殺人衝動にかられて、夜な夜な人を殺害している、ばれないのは巧妙なテクニック、転んで死んだように見せかけている。幼少期の頃に両親が離婚、再婚を繰り返し、虐待を受けて心が崩壊する。人を殺すと発散される。

 1人、初老80歳、将棋の達人で段持ち、戦争の時代から生きてきて、この世界を変えねばと考えている。幼少期の頃沢山の友達を戦争で失う。命のありがたみをしり、命を殺す必要も知る。

===高原コウジ===

 三澤は今、とある精神病棟の前に立っている。
 時刻は深夜の0時を回っている。
 草原が広がっており、山中の奥地にあるその精神病院は虐待をする事で有名だった。

「赤鬼は逃げようとする看護師と医師をなるべく痛めつけて殺してくれ」
「青鬼は逃げる患者の保護に徹してくれ」

【御意】

「さぁて、パーティータイムと行こうぜ、ブラッドリーモード【移行】」

 見る見るうちに三澤の体は真っ赤に染まりだす。
 怒りで血液が沸騰しているかのようだ。
 目は充血し、右手と左手ががちがちになる。
 扉は厳重であり、簡単に破壊なんて出来ない。

 だがブラッドリーはやれる。
 彼は小さい頃、母親からの圧倒的暴力から逃げるために生まれたようなものだった。
 強くなれ、気持ちを耐えて、耐えて、もっと強くなれ、怒りはその時に解き放つものなのだから。

「なぁ、相棒、やっちまうぜ、おうおう、やっちまおうぜ」

 ブラッドリーはデッドのような殺し屋とは違う。
 いわば、ブラッドリーは超人なのだ。
 右の拳を振るう。扉が粉砕され、吹き飛び警報器が鳴り響く。
 堂々と中に入る三澤ことブラッドリー。
 中から10人程の警備員が出てくる。

「やっちゃうぜ、怒って馬鹿って爆発しそうなんよ」

「待ちなさい、君、不法って、あ、頭を握ってどうする、ま、まて、あがあがあがあ」

 まるでリンゴのようにぐちゃりと潰される頭。
 脳みそが飛び散り、警備員達が真っ青になり長い棒のようなものを取り出した。
 いわゆる精神病患者が暴れたら制圧するやつだ。

 そんな道具など物ともせず、歩き続けるブラッドリー。
 
「てめーら、拳っちゅうもんはなーこういうもんなんだぜー」

 拳を振り上げて地面を叩きつぶす。

 地面に巨大な穴が出来る。

「隔離病棟を地下にやったのは間違いだったなー」

「き、きさま」

 警備員が怒鳴るが。

「だが、隔離病棟以外にもまだまだやる事があるんださー」

 どしんどしんとナースステーションに向かう。
 そこには看護師が3名いて、夜勤のようだ。
 スマホをいじっている所からすると警察に通報しているようだ。

「おおう、そんなもんでな、姉ちゃん野球って知ってるか、この落ちてるコップをこう投げるとだな、こうなるんだよ」

 次の瞬間、高速で投げたコップが看護師の首を貫通し、頭が落ちた。

「ぎやああああ、ば、ばけものおおお、警備員どうにかしろおおお」

「お、なんとか主任てやつか、メロム兄さんから聞いてるよ、あんた虐待を楽しんでるそうじゃないか」

「うるさい」

「俺がお仕置きをしてあげよう、悪い事したらお仕置きされるだろう? 俺なんか包丁で脅されてお仕置きされたぜママンにな」

「頭いかれてるのか、警備員!」

 警備員達はもはや戦意喪失であった。
 その後はブラッドリーのちぎってはなげてはちぎっては投げてはの繰り返しで、なんとか主任の原型はなくなった。

「さて、警備員諸君、逆らうならこうなる、今すぐ精神病患者を解放しろ、後、これまでやってきたことは自ら報告する事、じゃないと1人ずつ、わかるな?」

「は、はいいい」

「さて、ご対面といこうか、三澤変わるぞ」

 次の瞬間、三澤の体は真っ赤から普通のそれへと変貌していた。
 
 地下の隔離病棟に入ると、一人の少年が腐りにつながれて、まるで犬のような扱いをされていた。

 食べ物は犬の餌箱のようなもの。

 その少年はこちらを見て、にんまりと笑った。

「待っていましたよ、王よ」

「高原コウジ、今日から仲間だ。予知的なものでわかるのだろう。次はそれで助けられるように訓練してやる」

「ああ、もう助けられないのは嫌なんだ」

 その時、地上から大勢の悲鳴と歓声が轟いた。

 高原コウジの衣服はぼろぼろであり、ひどい扱いをされて来た事が伺えるが。
 瞳からは野心は消えていなかった。
 

===知多マキヒ===

 現在三澤は街中の群衆に潜れている。
 深々しくフードを被り、右隣りには高原コウジがいた。
 赤鬼と青鬼は保護した精神疾患、いや不当な扱いをされた仲間達の治療と介抱に専念している。
 16歳の少年は久しぶりの街の光景に目をぱちくりさせていた。
 
「王、これはすごいですね、数年いない間に新作ゲームが発売されてますよ」

「それはそうだろう、さて、君の能力の使い方だが」

「はい」

「ダディ先生に任せようと思う、彼は勉学の天才でね」

「王の能力ですよね、多重人格みたいだけど違う奴」

「その通りだ、ダディモード【移行】」

 ダディは眼鏡をくいとっと持ち上げると、辺りを見回した。
 すらりと背筋を伸ばし、紳士な歩き方になる。

「さて、コウジ君、メロム兄さんが君の中に入った時に色々と教えてもらったよ、君の力はデジャブとは違う、いわば、パラレルワールドで起きたもしが見えるだけだ。そしてそのもしが現実化する確率が非常に高い。なぜなら、それを引き当てて見ることが出来るのがコウジ君の力だ」

「はい、あの時も、なんとなく誰かが殺される気がしたんです。でも誰かがわからなかったり、わかったとしても自信がなかったり」

「大丈夫だ。これからは自信がつくだろう、本当の殺人鬼を相手にするからな、仲間にしなくちゃいけないのだが、ちと彼女は特殊でね、メロム兄さんの追撃からも逃げられた。君は誰かが死ぬビジョンが見えるはずだ。呼吸を整え楽しい事を思い浮かべたまえ、そうすると地獄に叩き落とされるはずだ」

「は、はい」

 コウジ少年は野球帽子のキャップを被りながら、じろじろとあたりを見回すことをやめて、冷静になったようだ。

 そしてぞわっとした表情になった瞬間。

「あっちの方角、路地裏、あそこで人が倒れて死ぬ、綺麗な女性が軽くまるで計算されたかのように動いて」

「よろしい、ではこれからは俺の出番のようだな」

「殺人鬼には殺し屋が相場だな、デッド」

「ああ、任せろ」

「ではダディモードからデッドモードに【移行する】」

 暗闇の中、すらりと消えるように1人の青年が軽く走り出した。
 それを追いかけるようにコウジ少年が走った。
 殺し屋と殺人鬼のバトル。
 とても儚く終わってしまいそうだなとデッドは思った。
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