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9話 視線の視線 5日目

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 ちなみにグリドリーとグマドリーがビッグウィングタイガーといい勝負をしている間。
 俺様はまるでプロレスでも見ているかのように、一生懸命応援していた。

 さすがは巨大熊の夫婦だ。すばらしい連携攻撃を見せている。
 巨大なビッグウィングタイガーに対応している。

 巨大すぎればいいものではないという事を、この2人の夫婦は教えてくれようとしている。

 グリドリーの拳が炸裂すれば、ビッグウィングタイガーの顔面に拳が殴り飛ばされる。

 ビッグウィングタイガーが巨大なカギヅメでグマドリーの顔面を殴りつける。
 その頑丈な骨にはびくともせず。

 口から血を吐き出すだけだ。

 カギヅメに皮膚は裂かれる事はなく。

 頑丈な毛皮のようなものを身にまとっているかのようだ。

 その皮膚には傷1つつく事はなかった。

 ちなみに先程の50体のテイム騒ぎでレベルが5→7に上昇していた。
 おそらく50体のテイムというのはすごい経験値の部類に入るのかもしれない。

 覚えたのは魔法概念というスキルだけだった。
 魔法概念とイメージしている間。2体の配下達は命を賭けてビッグウィングタイガーとバトルを繰り広げている。

「がんばれー」

 と応援して、魔法概念をイメージし終わる。

 ちなみに説明ばかりしているあの魔法猫は、
 先程の猫じゃらしマタタビ地獄にはまって興奮しております。

「ふむ、1冊のテキストが出現したなぁ」

 表面には【水魔法】【火魔法】【土魔法】【風魔法】と描かれており、1ページごとで1つの魔法体系を覚える事が出来るようだ。

 俺様は2体の配下が戦っているさなか勉強を始めた。

 とはいえ1分程度ですべて読み終えてしまえるくらいの本当に簡単なものだ。

 子供に鉛筆の使い方を教えるようなものなのだ。

 この世界での魔法を学習するという事はその程度のものらしい、
 そこから色々と派生していって、難しくなるのであろう、

 試しにと火魔法を使ってみる。
 右手の平に火が出現すると、ぐつぐつと燃え盛っている。
 不思議と手の平には痛みは走る事はなかった。

「へぇ」

 試しに投げてみたら、すぐに消滅した。

「なるほど」

 その魔法にどれくらいの魔力を込めるかで威力が決まるらしい。
 スタミナケージの他にマジカケージというものがあるみたいだ。
 頭の上にあるだろうからイメージすると、頭の上に出現したみたいだ。
 視線でぎりぎり見える範囲で、緑のケージと青いケージが出現している。
 緑のケージがスタミナケージで現在は100までとされている。
 青いケージのマジカケージは現在で200とされている。

 何をもってどのくらいで普通とか、スタミナ高ければ戦士タイプとか、
 マジカが高ければ、魔法使いタイプとか、そう言うのが決まっている訳ではなさそうだ。

 俺様は自由に生きる事を決めている。

「さて、熊ちゃんたち応援にいくぜえええええ」

 走って2体の熊を助けに行こうとした。
 まるでカマイタチのような風に俺様は吹き飛ばされたのであった。

 そこにはこちらを見てぐるぐるとうなり声を上げているビッグウィングタイガー。
 そのビッグウィングタイガーは全然ぴんぴんしている。

 しまいにはグリドリーとグマドリーが劣勢である事が分かる。

 まるでこの2体を仕留めたら、次はお前だ。そして最後はそこの魔法猫だと睨んでいるようだ。

 普通の戦い方では無理だろうという事を、俺様は悟った。

 そしてこの時の為に考えていた戦い方というものを、

「教えてくれるわ」


 使役移動。それが今回のバトルの勝利のカギとなるであろう。

 グリドリーの近くにビッグウィングタイガーが飛来する。
 奴は容赦なく巨大なカギヅメを振りかざし、
 振り落とした。
 その瞬間、俺様はグリドリーのところに使役移動して見せる。
 グリドリーの目の前に瞬間移動した俺は、奴の口の中に火魔法を噴射、

 奴は悲鳴を上げながら転がる。
 やはり猫は猫舌なのだ。

 という新事実はどうでもよいのだ。

 この使役移動の戦い方は使えるようだ。

 奴はこちらをまるで舌なめずりでもするかのように睨む。
 その4本の両足と両手で闊歩するかのように走り出す。
 あの巨体なので数歩歩くだけで至近距離に突入する。

 火魔法を使う俺様が危険だと察したのか、
 目標を変更したようだ。
 俺様を殺す気だ。

 奴の後ろにグマドリーが到来、グマドリーは巨大な腕で奴の尻尾を掴む。
 だが奴の牙は俺様を捕らえている。
 あの牙で噛まれれば即死だろう。
 オンラインゲームでボスに挑むくらいの危険な事をしているのは知っている。

 奴の目の前から俺様は消失。
 もちろん使役移動だ。

 次に到来した先はグマドリーの目の前、
 そこには尻尾がある。

「さぁ、容赦なくやろう、踊れ」

 火魔法を尻尾に炸裂。
 その魔法は獄炎の炎とか、火炎放射とか、そんなにすごい火の魔法ではない。
 だけど至近距離で、さらに敏感な所を狙う事によって、大ダメージは必須。

 奴の口の近くにはグリドリーがいる。
 奴の尻尾の近くにはグマドリーがいる。

 これはあらかじめ作戦を練ったわけではない。

 この熊夫婦が前と後ろで攻撃しようと編み出した戦法に、俺様が乗っただけだ。

 グリドリーのところに使役移動する。
 奴は火傷をした尻尾で俺様を吹き飛ばそうとする。
 そこから俺様がいなくなった事を気配で察する。

 グマドリーが容赦なく尻尾を掴んで、ぶんぶんと地面に叩きつけている。

 そしてグリドリーの拳が奴の顔面を飛来したその瞬間、
 グリドリーの目の前に俺様が瞬間移動する。
 尻尾を叩きつけられて、痛い思いをして口を開けてしまった奴は、俺様の火魔法が炸裂。
 舌がひどい火傷をする。
 あまりにも痛いのか、涙を流している。
 そこに悶絶する。

 巨大なもふもふのお腹を見せて、降参の意思を表示している。

 俺様はそう簡単には許さないぜ、

「こちょこちょこちょ」
「にゃあああああああ」

 ビッグウィングタイガーは嬉しそうな悲鳴を上げて、悶絶している。
 そしてついにとんでもない事が判明する。

【森林獅子をテイムおめでとうございます】

 つまりこいつは勝ってに名付けたタイガーとかウィングとかそう言う名前じゃなくて、俺様がいた日本でも結構有名な獅子の仲間だったらしい。

 しかもなぜ森林がついているのか謎だけど。
 あれか? 緑色だからか?

 色々な事を考えたけど。
 この8メートルくらいの化け物をテイムしてしまいました。

 その時レベルが7→8に上昇したのであった。
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