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エピローグ

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 あれから、何年もが経った気がするし、そう経っていない気もする、だけど、あのときが一番楽しかったと俺様は感じている、あのとき、彼女とダンスをした、とても楽しかった。そして、俺様の旅は始まりを告げた。最後に、ナイトフォースにいくと思い、でも、ヒカルには役目があって、一緒には旅は出来ないけど、俺様の相棒は、いつも近くにいた。だから、俺様はいつも一人ではなかった。遥かな山を越えるとき、動物たちが、こちらに道を譲り、頭を下げるのには辟易したのだが。俺様は、遥かな海を越え、遥かな霧を越え、遥かな森を越え、そして、最後の場所までやってきた。もうすべてをクリアしてしまった。


 海には人魚がいた。森にはケンタウロスがいた。そして、霧には妖精がいた。沢山の者を見てきた。俺様の顔もぶこつくなり、白髪がいまでも目立ち、もう老齢になっていないのが不思議なほど時がたってしまったのではないだろうか。でもまだ、二十歳よりは上だと自負している。


 だから、俺様は、あのときのスリルを思いだすのである。彼女とダンスをして敵を倒した。それは面白かった。彼女の悪女ぶりも思い出すとやはり笑えてしまう。だから、俺様は、いや用にでも、その場所にたどり着くのである。そこにたどりついたとき、小屋があり、いまだに、大剣の修行をして、一ヶ月に一個は星を落としている彼が、まだまだ現役ぶりを発揮して、修行しているなか、俺様が隣に座ると彼が微笑んだのである。


 「ひ孫よ、もう、終わってしまったのか?」
 「ああ、何もかも終わっちまったさ、あとは、ヒカルに死ぬのを与えられ、それで、ナイトフォースにいって、戻ってきて死ぬさ」


 俺様はもうこの世に未練はなかった。だが、小屋から出てきた女性に言葉を失った、あれから、長い月日がたってもヒカルの口から息がぬけていくほどのたおやかな姿に、俺様はあっけにとられ、彼女は両親を取り戻したのである。あのとき、何年も前に。
 彼女がこちらにやってきて。微笑み。そして、ポケットから緑の羽を取り出すのである。それも二つ。


 「はい、いってらっしゃい」
 「まて、二本とは?」
 「それは僕の分だよ」


 隣にはサイネを引き連れた、ルービがいた。


 「君と一緒に行きたかったからさ、ナイトフォース観光、昔いったときは入れてもらえなかったから」


 ルービも大人になったものである。大して俺様の身長が悲しくなってきたが。それは目を瞑る。


 「ところで、ヒカル、死を与えてくれないか?」
 「やだ」
 「いや、ヒカル、お前な、お前の責務をはたせ、サイネもなんとかいってくれよ、これじゃあ、一生死ねないよ」
 「やだったらやだねーだ」
 「ぶっ殺すぞ」


 ぶいいいいいいいいいいんと音を鳴らして、背中から何か鋭い刃物をとりだし、振動させています。俺様は土下座して謝ります。


 「すまん、殺すな」
 「ね、だから、右腕だけ残して殺すのもいいけどね」
 「だからなぜ、右腕」
 「あんたとはじめて手が触れ合ったのが右手だからよ」


 俺様はあっけにとられながら、そういえば、ガキのとき、右手で握ったんだっけな。


 「だからさ、アンタが無事に戻ってきた、もう長く生きた、疲れたっていったら死なせてやる、興味本位で死にたいじゃ駄目」
 「うん、わかったよ、それなら長く生きてそのあと、もう疲れたっていって死の許可をもらってやるからな」


 「そうそう、そのいきよ」

 メロカが小屋から出てくるなり。
 頭をわしゃわしゃと掴んで。


 「そら、ガキどももういけ」
 「あいさ」


 そういえば、追伸、もう、予知死で死ぬことはなくなった。なぜなら、巫女が決まることにより、ナイトフォースの死の力の場所が決められ、予知死のことはなくなった。もちろんサイネのこともなくなった。


 だから、もう死ぬことはなかった。残念なことに。
 俺様とルービが遥かな山の屋上で、緑の羽を振るうと、山の中から、まるで、生きた風のようにうごめく物がつきだし、自分たちを運んでいく、体に薄い空気がまとわりつき宇宙空間でも無事でいられる。そうして、俺様は、夢をなにもかも果たしてしまって、残るは死ぬだけであったのである。


   ★ 僕 ★


 僕は、宇宙空間の中でひたすら、見えないナイトフォースを眺めながら。ようやく着地すると、そこは、初めて見る世界でありました。まるで、文明が進化したら、こうなるのではないかと思えるほどのできばえであります。機械がたくさんあります。そして、上にはレールにのった乗り物、さらにタイヤをつけた乗り物、それも力を使わず、装置をおして、動かすものであるのです。僕はあっけにとられ、看板を目でおって、歩くと、遥かな山+都市様という場所にたどりつきます。そこでは、沢山の町や闘技場みたいな場所や、祭りのあとがあったり、いろんな古めかしい建物があるのです。時計台が一つあり、そこにテンリュウと一緒に入ると、そこには写真があって、ひい爺さんが二人で手を組んでうつっていました。メロムとメロカです。


 僕は微笑みました。


 「ここが、彼らの作った街なんだね」
 「そうだろうな、そういえば、ジェッカーはいねーかな」
 テンリュウがそんなことを呟いています。


 すると、目の前に、影の支配者が出現しました。彼がこちらを見て微笑むと。ついてこいと呟きます。

 そうして、ついていくと、大きな地図がある場所に出ました。そこには五つの国がある印があって、その真ん中にジェッカーの顔写真があります。僕があっけにとられていると。


 「ところで、君たちに出題、ジェッカー君は国取りゲームで名をあげるも、王様になり、さらに、大きな勢力となっています。君たちに与える任務は、彼を王座から蹴落としこのゲームを終わらせ、彼を故郷に戻すことです」
 はっはっはっとテンリュウが笑います。
 「いまゲームといったな、つまりやりたい放題だな」
 はっはっはとまたわらいます。僕はなんだか怖くなりました。
 「なぁ、ルービぜひともゲームやってかないか」


 もう、目が★です。僕は、断固として。


 「拒否します」


 と呟くのですが、これもつかの間、一日で説得されこんな意味の分からないゲームが始まったのです。


 僕は大人になっても、ゲームをやっています。僕たちの人生において、楽しいことや、うれしいこと、そういったことを見つけることは大事です。そして大事なことを見つけることもです、僕は、見つけました。それは。サイネと、この世界です。
 はっはっはとまたテンリュウが笑います。
 ヒカルに感謝です。

 死を与えてたら真っ当にゲームなんて出来なかったはずだから。


★ 自由部隊 ★


 俺は単純に、あたりをうかがって、逃げようとした、しかし逃れなかった。マローニャの手が首にかかり、引きずられ、そして、悪夢が始まるのである。
 そして、俺は自由部隊に召集をかけた。


 「お前たちに特殊任務を与える、金はなし、隊長の危機だと思え」
 「あのう、自由部隊って解散したんじゃないんですか?」

 ハルスが痛いところをつく。

 「気にするな、トライデントの命令だ」
 「どんな命令なんだよ」

 カウボーイがうなる。


 「そもそも、フルクターの脅威がないから、必要ないって話じゃなかったか?」


 カルテルが成長した背丈でそう呟くが、そんなことはナンセンスだと呟こう。ここにいないマローニャには内緒だが。


 「カウボーイ、ゴッツァン、カルテル、ハルス、ペリージェ、お前たちに与える任務は至極全うに大変な勤務だ。六つ子の息子と娘たちの世話だ」


 ごふがふがごうがおぐあうおがうう。と、みんなからの蹴りや攻撃をくらって、そして、ごふっと血をはき、倒れるとちょうど遅れてチェッカーがきた。



 「チェッカーお前は紙おむつをかってきてくれ」
 「はぁ? どういうことですか?」

 「相手にする必要ねーぜ」


 カルテルがそういうと、俺は真っ当に頷きそして叫ぶ。


 「だれか、なんで、六つ子なんて与えたんだ。神よ、そんな哀れな」


 すると、マローニャが入ってきた。


 「あなた、ちょっときて」
 それは、悪夢の囁きであった。


★ トライデント ★

 「まぁまぁ、あれから数年たちましたけど、世の中も平和ですね」
 「髪よ、そんなバカなことを言っている場合ではないだろう」
 「なぜです?」
 「マリーから連絡がきたのですよ」
 「眉さん、どんな連絡ですか?」
 「それがな、都市が、侵略戦争を始めようとしている連絡なのだが、まぁ、無理だろうな、遥かな山を越えたとしても、戦車などで遥かな山を登れないだろう」
 「そうか、懐かしいな、あの隊長って元気かな」
 「隊長ってだれだ?」
 「そういえば、いってなかったのう、隊長って言えば隊長なんですよ」
 『ふむ』
 「まぁ、当分は様子見だからな、とにかく平和をかみ締めよう、フルクターの脅威がなくなったのだからな、そして、人類は死にたいときに死ねる。これも世界中に伝えたしな、テンリュウが伝えてくれたそうじゃがな、だがあいつ都市にいったのか?」
 「いってないそうですよ、髭さん」
 「まぁ、あっちはマリーですからねでは、みなさん」
 『「(かんぱーい)」』

 三人の老人が、お酒を飲んでいた。


★ 隊長 ★

 「グラディー」
 「なんですか、隊長」
 「もう疲れた、死んでいいか」
 「何でですか、隊長」
 「孫もひ孫もひひ孫もみんなうるさい、もういやだ、死にたい」
 「だったら、お勧めがありますよ、メロカが戻ってきましたしね。それにあなただって、遥かな山がどわって飛ぶのは見たでしょう?」
 「ああ、見た」
 「そこに死の巫女がいるんですよ、病気で死ねますよ」
 「よし、旅に出るぞ」
 「そうです、しゃべり方を勉強するのは疲れたべ、じゃあ、いきましょうだべ」


 そうして、グラディーと隊長の死のたびが始まった。


★ 家庭 ★

 「ミーナ元気かい」
 「グンリュウ、一回死ぬか」
 「いややめとくよ、それより、知ってるかい、パロンの失業率」
 「ああ、やっぱり死んどくか」
 「だってね、パロンはもう必要ないんだよーーーーーーーーー」
 「だったら、新しい職を手にいれよ」
 「そういうことで、水道施設をつくってみました」
 「おお、さすがだな」
 「ということで、貯金をはたきました」
 「やっぱりぶっ殺す」


 悲鳴がとどろいたのである。


★ メロム メロカ ★


 メロムはうむと頷き空を見つめ、メロカが隣に座って、うむと頷く。そうして、時がたっていく。二杯のお酒を注ぎながら、二人が一様に黙っていると。
 「遥かな山での生活も悪くないがあのときの街づくりも悪くなかった」
 「いくか?」
 「我慢するか?」

 『うーむ』

 二人があぐねいていると。小屋が開き、おつまみをもってきた、サイネとヒカル。二人が、こちらに微笑むと、まぁ、これも悪くないと思える。


 「まぁ、我慢しよう」


 「ここでまって、あいつらの帰りをまつとしよう」
 ヒカルが空を指差すと、ほしぼしが輝き。そうして、沢山の流れ星が生まれた。
 気づいてしまった。二人は、空から眼を離した。
 流れ星の輝きに、ナイトフォースが見えた。そうして、ナイトフォースを包みこむように大きな旗が見えた。そこには、二人の顔写真があった。
 ヒカルもサイネもそれに気づき大きく笑った。


 「あいつらめ」
 「ゲームをやってるな、それも国取り合戦だぞ」
 「戻ってきたら、交代してもらおう」


 二人が笑うと、女の子二人も爆笑したのであった。
 ナイトフォースが、一瞬だけ輝いたときであった。まるで、はかない線香花火のように。そのときミュージックの音楽が聞こえた気がした。彼は、どこかにいってしまった。はてどこだったろうか。それはナイトフォースだった気がした。

                        完

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