世界緑化大戦

百舌鳥

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不穏

十六話

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ガヤ・・ガヤガヤ・・・

食事がはじまって様々な物が運ばれて来たが、どれもあまり馴染みのない見た目の物だった・・
何より人型植物に焦点を当てたメニューな為どれも見るからに低カロリーであり
当たり前だが、肉が全く見当たらなかった

次郎「なんて言うか、ほとんどサラダみたいなもんだな」

クス「やはり人間だと、肉がないと物足りないですかな?」

ベニス「そうか、そういやぁ人間は肉を食べるんだったな!」

椿「私たちは食べたいと思わないんだけど、人間は肉も必要なんでしょ?」

次郎「施設にいた時も肉はたまにって感じかな?」

シマトネ「え~何の肉食べんの?」

次郎「ん~牛とか、豚とか鳥かな?
まぁ牛とか豚が食えることは稀だけどな」

フェイ「ここならその辺で捕まられるんじゃなくって?」

次郎「いや、そこまでするのは・・・
もう野菜と穀物中心の食事に慣れちゃってるしな」

次郎「ベニスさんはここにいつから居るんですか?」

ベニス「ん~、1週間前くらいからかな?ちゃっちゃと仕事終わらせたから
時間が余っちまったんだよ!」

シマトネ「へぇ~仕事は何をされてるんですか?」

ベニス「この島は医者が1人で人手が年中足りねぇからよぉ、看護師として
本島から持ち回りで派遣されるんだよ」

椿「なんか大変そうですね!
私仕事何したいか考えたことないなぁ」

ベニス「まぁ好きな事やんなよ。アタイだってこの仕事に就くとは思ってなかったさ。」

クス「いやぁご立派ですなぁ。私なんてとうの昔に引退してしまってますから
毎日休みの様なものです。」

樫「クスさんは何の仕事をしていらっしゃったんですか?」

クス「私は・・・手紙の配達人をしておりました。それほど賃金が良くなかった為若い頃は苦労しましたね・・・」

樫「少し前まで手紙が主流だった時代ですからとても大事な仕事ですね。」

クス「今は色んな物が発達してますからなぁ」

ベニス「まぁなぁ。ところで兄ちゃんは何の仕事してるんだ?」

樫「私ですか?私は人間管理研究施設で働いていますね。」

ベニス「は~ん・・なるほど、それで人間の次郎くんがいるわけか」

クス「それはすごい仕事ですな。」

話を聞いていたが、自分が関係する話になっていったのでなんとも言えない気持ちで、
椿達との話に集中する事にした

シマトネ「にしても日中は暑かったよなぁ。今は大雨だけど・・・」

フェイ「そうね。まさかこんなに天気が荒れるとは思ってませんでしたわ。」

椿「明日は晴れるかなぁ?」

次郎「止む気配ないけどな。」

そんな話をしている内にそこそこ
いい時間になった為お開きとなった

それぞれ自室へ帰って行き、日中の疲れ
からか皆直ぐに寝た様である

かく言う俺も直ぐに睡魔に襲われて
ウトウトとし始めた

・・・・・・・・・・・・・




























「キャーーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎」

・・・・・?・・・・⁉︎

バサッ‼︎

大雨と睡魔を切り裂く叫び声が聞こえた

半分以上寝ていた意識が、
聞こえた叫び声で急速に脳に血を集める
身体をを起こす為血圧が高くなるのを
感じる

次郎「・・・おい。おい!シマトネ」

シマトネ「・・・あぁ」

次郎「今・・叫び声がしたよな?」

シマトネ「・・・んじゃあ聞き間違いってわけじゃなさそうだな。上か?・・」

次郎「ひとまず椿達の部屋へ行ってみよう!」

布団から出ると急いで部屋のドアを開けた
それとほぼ同じタイミングで隣のドアからカッさんも出てくる

樫「次郎くん!聞こえましたか?
・・・急ぎましょう。」

上階までの階段はそれほど長くない
2段飛ばしで走る・・

カッカッカッカ・・・

ザッ!

踊り場へ出たところで先走って声が出る

次郎「椿!・・・フェイ!大丈夫か⁉︎」

シマトネ「次郎あれ!」

樫「ドアが半開きになっていますね・・」

ダッダッダッダッダ・・・

ガッチャー!

部屋は・・・頭が混乱する

窓ガラスは割れ、椿は目隠しと口に何かを詰め込まれた上で手を縛られ壁際に寄りかかっている

フェイは頭から樹液を流して倒れていた

シマトネ「クソっ!・・次郎!椿の様子を見てくれ!俺はフェイを見る!」

樫「次郎くん達ここは任せました!
私はロビーへマキさんを呼びに行きます!」

間髪入れずに椿の元へ駆け寄る

縛られた手を解き、目隠しと口に詰められた布を外した

次郎「椿っ!椿っ!」

口から少し離れた所に手をかざす・・・
息はしている様で恐らく一時的に意識を失っているのだろう

それ以外に目立った外傷はない・・・
今の時点で目に見えて外傷があるのは
フェイだ

次郎「シマトネ!フェイは!?」

シマトネ「・・・息は・・・ある。
だけど、直ぐに応急処置をしないとダメだ!」

樫「マキさんを連れてきました!」

マキ「これは‼︎・・・・直ぐに医者を呼びましょう!
ひとまず大した物はないのですが医療セットを持ってきました!」

マキさんが手際良くフェイの頭に包帯を巻き、椿と共に横にした状態で安静にさせた

マキ「クソっ!こんな時に・・・」

シマトネ「どうしたんですか?」

マキ「ラカンくんが見当たらないんです!・・この人手が必要な時にどこ行ったんですか!」

次郎「それより、医者に電話は⁉︎」

樫「今私がかけたのですが、この嵐の様な大雨で直ぐには来れないそうです!
・・・そうだ!ベニスさんは看護師のハズです!」

そういうとマキさんにベニスさんの部屋を聞き、カッさんは走って呼びに行った

ザァァァアァァアッ・・・ザァァァァァ

深夜のドタバタで同じ階に宿泊していたベニスさんもちょうど目を覚ましていた所の様で直ぐに来てくれた

ベニス「こんな深夜に一体どうしたっていうんだい?・・・・・・こいつぁ何があった?」

細かい事情は後回しにしてカッさんが急いでベニスさんを連れてきた

ベニスさんは一瞬事態が飲み込めずにいたが、疑問は一旦頭の隅に追いやり
今やるべき事をやる為に頭を切り替えた

2人に近寄りフェイと椿の両方の状態を
黙々と確認し、マキさんのした処置で問題ない事がわかると口を開いた

ベニス「大丈夫だ!2人とも命に別状はない!フェイちゃんの方は外傷はあるが、見た目程酷くはない。」

次郎「良かったぁ・・・」

シマトネ「あとは目を覚ますだけか・・」

樫「しかし、この状況は一体・・・」

ベニス「マキさん、この旅館には他に従業員はいねぇのかい?」

マキ「今はバイトのラカンくんと私だけです。
オーナーは島自体にいません。
こう言っては何ですが、
こんな交通の便が悪い離島にわざわざ足を運ばれるお客さんは今時中々いない為、従業員は最小限にされています。」

シマトネ「じゃあ今日の食事もマキさんが作ってたのか?」

マキ「えぇ、食堂に居た方達で宿泊されている人は全部ですので他の業務はストップしても問題ないのです。」

樫「今医者から連絡が入り、こちらの状況を伝えるとベニスがいて大丈夫だと言うのならまた容体が悪化した時に連絡してくれれば平気だと言われました」

ベニス「全く、患者自体が少ないとはいえアタイに任せ過ぎなんだよ・・・」

シマトネ「さてどうするか・・
安静にしている2人の部屋にこうも誰かが居たんじゃ休まらねーんじゃないか?」

ビュォォォオオオオオオオ・・・・

ベニス「ひとまず、この部屋は窓が割れちまってるからアタイの部屋に運ぼう。
アタイが近くで見ているから・・・」

マキ「私は部屋の清掃をして窓をどうにかしておきます。
皆さんお2人をベニスさんの部屋まで運んだらもう深夜ですので一旦休まれて
また明日の朝話しましょう。」

次郎「待ってくださいマキさん!
部屋の清掃と窓はそのままの方がいいかもしれません!
雨だけは入ってこない様にする必要があると思いますけど。」

シマトネ「どうしたんだよ次郎?」

次郎「2人の無事を最優先にしてたからバタバタして細かい事を考えていなかったが、
この状況・・・明らかに2人は誰かに襲われたんじゃないか?」

樫「確かにその通りですね・・・・
窓が割れているだけならこの大雨と風で何かが飛んできた事も考えられますが
椿さんは拘束され、フェイさんにいたっては何かで殴打されている。」

マキ「待って下さい・・・じゃあ。」

ベニス「つまり、この状況を保管して
おく必要があるってぇのか・・・」

次郎「そうです・・・これをやった奴を探す手掛かりがあるかもしれません。」

シマトネ「だけどよぉ、ここに泊まってるのは俺達だけなんですよね?」

マキ「えぇ、その通りです。」

ベニス「てぇ事はこの雨と風の中、誰かが来てこんな事をしたってことかい?
物盗りってわけでもなさそうだが・・」

マキ「しかし、ロビーには私が居たので誰かが来れば気付いているはずです。」

次郎「わからない・・・外部の奴かもしれないしまたは・・・」

樫「この旅館内の方かもしれない・・
そういうことですね。」

シマトネ「おいおいおい!そんな事あるかよ?だって、何の目的があるんだよ?」

次郎「まだ何もわからない・・・
だからこそ、状況を残しておく必要があるかもしれないんだ。」

ベニス「言ってるこたぁわかるぜ。
しかし、その筋で言うとアタイの部屋に2人を寝かすのも危険かもしれないって事になるんじゃあねぇのかい?
かと言って誰かが見ててやんなきゃ
あんめーよ。」

次郎「使ってない部屋に2人を寝かして、両隣の部屋にベニスさんと俺達の内の誰かが寝ていれば抑止力になるんじゃないか?」

シマトネ「考えてても仕方ねー。
マキさん使ってない部屋はありますか?」

マキ「今別の部屋のキーを持ってきます。」

タッタッタッタッタ

深夜で疲れと眠さも相まって考えが纏まらない・・・・
状況は混乱を極めており、それは皆同様であった

しばらくすると、マキさんが別の部屋の鍵を持ってきて開けてくれた

俺達は2人を丁寧に持ち上げ、なるべく
揺らさぬ様別の部屋の布団に寝かした

2人の寝息を聞き安堵する気持ちと、
底知れない不安が頭をよぎる・・・

樫「では一旦皆さん部屋に戻って寝ましょう。
こんな深夜ではわかるものもわかりません。
ここはベニスさんと私が両隣の部屋で寝ることにします。」

マキさん「よろしくお願いします。
私はロビー奥の仮眠室にいますので何かあれば起こして下さい。」

シマトネ「俺達も連絡をくれれば直ぐに来ます!」

ベニス「じゃあ解散しよう。」

次郎「・・・・・」

ガチャー

シマトネ「何が何やらだよ・・・」

次郎「・・・・・・」

シマトネ「どうした次郎?」

次郎「いや・・・ひとまず寝るか」

シマトネ「そうだな・・・」

ビュウウウウウウウゥ・・・・

ザァァァァァァァア・・


時間は深夜3時を周った頃だろうか

一体何が起きたのかわからないまま
布団に入った為中々寝付けないかと思ったが、そんな意識とは別に身体は正直で
しばらくすると泥の様に眠りに落ちていた・・・・・・

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