世界緑化大戦

百舌鳥

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不穏

十七話

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・・・・・

次郎「・・・・朝か?」

時間を確認すると朝の7時であったが、
相変わらずの空模様で陽の光が差し込んでこない

一瞬まだ夜中かと勘違いするほど薄暗い
中隣を見るとまだシマトネは眠っていた

昨夜遅くまで騒ぎがあった為シマトネはまだ起きそうもない

俺はシマトネを起こさない様に布団から出て、椿達のいる階へ向かった

カタッカタッカタッカタッ・・・・

ザァァァァァァァアーーーー

ギィィイ

椿達が元々泊まっていた部屋の扉を開ける

昨夜割れていた窓はひとまずテープと布の様な物で穴だけ塞いであった

辺りを見渡し状況を確認する
インテリア等備え付けの品には手をつけられてはいない

次郎「やはり、物盗りではないのか?」

しかし、昨夜椿達の荷物も一緒に移動させているので手荷物の方で何か無くなっているかもしれない

次郎「・・・そっちの確認は意識が戻ってからだな。」

カタッカタッカタッ・・・

自室へ戻るとシマトネもちょうど起きた所の様だった

シマトネ「次郎・・どこ行ってたんだ?」

次郎「昨日騒ぎがあった部屋の様子を見て来たんだ」

シマトネ「何か手がかりはありそうだったか?」

次郎「いや、今のところは特に無いな・・・」

シマトネも布団を出て軽く支度をすると
窓の外を見て雨風の強さにうんざりする様な表情を見せた

次郎「ロビーの方へ行ってマキさんと合流したら椿達の様子を見に行ってみよう」

シマトネ「そうだな・・・アイツら意識取り戻したかな?・・・」

次郎「どうだろうな・・・ひとまず
アイツらが犯人を見ていれば解決なんだが・・・」

カッカッカッカ・・

ー・ロビー・ー

チン~・・チンチン~・・・

ベルを鳴らすとマキさんが慌ただしく
奥の仮眠室から出てきた

マキ「何かありましたか⁉︎」

次郎「いや、もう朝なんで一緒に椿達の様子を見に行かないかと思って」

マキ「そうですね・・・もしかしたら
意識を取り戻しているかもしれません。」

カタ・・・カタ・・・

クス「おはようございます。
今日も生憎の空模様ですなぁ・・・・
ん?・・・みなさん表情が硬い様ですが私の顔に何か付いておりますかな?」

クスさんは昨晩あの場に来なかったが
お年寄りだし寝るのも早かったのだろう
恐らく昨日の騒ぎに気付いていない

しかし、宿泊客も少なく黙っていても何かがあった事は直ぐに知れるはずだ

どちらにせよクスさんの食事後の
行動を把握しておく必要がある

隣にいるシマトネとマキさんに目配せをし、表情から了承を得ると
昨晩の事の顛末を話始めた・・・

クス「・・・そうでしたか。
ところでお2人の容体は?」

マキ「今は上階で寝ております、意識を取り戻して事情を聞ける状態であれば
お2人から昨晩の事を聞くつもりです。


シマトネ「軍が動いてくれればいいんだが、恐らく動かないだろうな・・」

次郎「?・・・何でだ?」

シマトネ「人間時代以降諸外国との戦争はあったが、自国での犯罪っていうのは極端に事例が少ないんだよ
だから軍が警邏を兼ねているんだけど、あくまで軍事がメインだから実際はほぼ実働していない・・・」

マキ「あの雨風の中を狙ったとするなら計画性がありそうですね・・・
ちなみにクスさんは食事後どうされていましたか?」

クス「この老木を疑っているのですかな?」

マキ「い、いえそういうわけではないのですが・・・」

次郎「この旅館内にいる宿泊客の昨晩の行動を把握しておく必要があるんです。」

クス「わかっていますよ。少し意地悪でしたかな?・・・・
昨晩は宴会の後、直ぐ自室へ戻り就寝しました。
今朝お話を聞くまでこの様な事態になっている事すら知りませんでした。
それにこの通り足を悪くしております。杖をついている状態でその様な凶行に及ぶ事は物理的に不可能ですな。」

マキ「まぁ、そうですよね。・・・・
まさか昨日から見当たらないラカンくんの仕業って事はないですよね?」

シマトネ「正直今1番怪しいですね。」

ラカンさん・・・・
少なからず悪いところはあったが、
それでもこんな事をする人とは思えない

次郎「ラカンさんがそんな事をするんだろうか?・・・」

シマトネ「もともとフェイとは折り合いが悪そうだっただろ?」

次郎「だからといってこんなやり方で
どうこうしてやろうなんて人じゃない気がするが・・・」

マキ「普段の素行からラカンくんならやりかねない気がします・・・」

次郎「どちらにせよ、まずは椿達の所へ行ってみよう。
意識を取り戻しているかもしれない。」

カタッ・・・カタッ・・・・

クスさんは杖をついて歩いている為歩幅を合わせて階段を上がるのを補助する

ロビーか自室で待っていた方が良いと
言ったのだが行くと言って聞かなかった

クス「すみませんなぁ・・・
無理を言った上、歩行補助までしてもらうなんて。
しかし、孫ほどの年輪の娘達がそんな目にあっていたと聞いては大人しくジッとしているわけにいきませんでして」

次郎「いえ、いいんです。
気持ちはとてもわかります。」

クス「次郎さんは人間ですが、お仲間に深い情があるんですな・・・・
種は違えど眼を見ればわかります。」

次郎「い、いや。」

マキ「まずは樫さんとベニスさんの部屋を訪ねてみましょう。」

コンコン・・・

ガチャー

樫「おはようございます。次郎くんそちらは何か異常ありましたか?」

次郎「いや、こっちは大丈夫だ。
そっちこそ何か変わった事はなかった?」

樫「こっちもその後は雨の音しかしませんでした・・・・
夜通し起きてたもんで・・・
少し眠いですが。」

カッさんは眠そうにしながらタバコを咥えた

シマトネ「後は自分らがいるんで、カッさんは仮眠した方がいいっすよ。」

マキ「ですね。」

樫「では、お言葉に甘えましょうかね。
ちょこちょこ椿さんとフェイさんの様子は見ていたんで問題はなかったと思います。
では・・・」

カッさんは部屋に戻っていった

コンコン・・・

ベニス「おはようさん。・・・
あれから異常はなかったぜ。容体も安定している。」

マキ「ベニスさん急なお願いをしてしまいすみません。」

ベニス「いいんだよ!仕事しないで休んでばっかでもしょうがないしな・・・
それにこういう木を助ける為にアタイらはいるんだよ。」

シマトネ「ベニスさんも休んで下さい。」

ベニス「じゃあ部屋にいるから何か変わった事があれば呼んでくれ」

ベニスさんも部屋に戻っていった
どうやら結局隣部屋の2人は寝ずの番をしていてくれたみたいだった

カチャア

椿とフェイが寝ている部屋の扉をそっと
開け様子をみる

変わったところはない様だ

クス「・・・なんて非道い事を。
ゆるせませんな。」

気付くと、自分でも不思議なことに
椿の頭を撫でており

フェイの顔も穏やかでほっとした

すると・・・・

椿「・・・・んん~」

次郎「椿‼︎」

シマトネ「椿‼︎っ」

椿「あれっ?・・・っタタタタ」

椿は見るからに状況に混乱している様だった

クス「マキさん・・・水を持ってきてあげて下さいな」

マキ「は、はい‼︎」

バタバタと階段を降り、マキさんは急いで水を持ってきた

マキ「椿さん!これを飲んで下さい!」

椿「あ、ありがとうございます~」

ゴク・・・ゴクゴク・・・

椿「あれ?・・・・あっ!フェイちゃんは?」

椿は慌ててフェイを探そうとして
隣にいることに気づきホっとした様子を見せる

椿「・・・よかったぁ。」

次郎「落ち着いたか?・・・
身体で痛い所はないか?」

椿「うん!・・・ちょっと痛い所はあるけど、ほとんど大丈夫だよ!」

マキ「もし・・・落ち着いたらで良いので昨晩何があったのか教えてもらえませんか?」

シマトネ「ホントに落ち着いたらでいいからな?」

椿「シマトネもありがとね。
大丈夫だよ。・・・・・昨日・・・
フェイちゃんと2人で少し話をした後
そのまま寝ちゃったんだ・・・・
しばらくして・・・急に何かで目と両手を縛られた感じがして叫んだの・・・
直ぐに口も塞がれて、フェイちゃんが起きる気配を感じた・・・
たぶんそこで気を失っちゃったんだと思う・・・」

次郎「そうか・・・・」


シマトネ「昨日の叫び声は椿だったんだな」

聞いた感じだと、今のところ全く手がかりがない・・・
後はフェイか

フェイ「ん・・・・」

すると、バッと布団を払ってフェイが起きた

シマトネ「おっ落ち着けフェイ‼︎」

フェイ「奴はっ⁉︎」

マキ「フェイさん落ち着いて下さい!」

フェイ「私は・・・・気を失っていたんですの?・・・ッ!」

クス「フェイさん・・・お身体に障ります。落ち着いて下さい。」

フェイは腰を落とすと頭の痛みに気付いた様で、言われるまでもなく大人しくなった

次郎「マキさん水!」

マキ「大丈夫!持ってきてますよ!
どうぞ。」

ゴクゴク・・・・

フェイ「はぁ・・美味しいですわ~」

椿「フェイちゃん大丈夫?」

フェイ「椿さんこそ大丈夫でしたの?
私はどのくらい気を失っていたのかしら?」

マキ「恐らく5時間程度になります。
フェイさん達が倒れていたのは昨晩の出来事です。」

フェイ「そうですの。・・・昨晩
椿さんの悲鳴が聴こえて直ぐに起きましたわ。
椿さんが縛られた状態になっているのを見た後すぐに何かで殴られました・・
辺りは暗かったのでそれが誰だったのか・・・・」

クス「ひとまず、お2人の意識が戻って安心しました。」

次郎「そうか・・・その時窓は割れていたのか?」

シマトネ「2人とも起きたからベニスさん呼んでくる。」

マキ「お願いします。」

カチャー

椿「どうだったんだろ?
私直ぐに縛られたから、わかんないな。」

フェイ「恐らく窓は割れていませんでしたわ。割れていたらその時点で起きているハズです。」

カチャア

ベニス「2人とも起きたか!」

シマトネ「ベニスさんが看病してくれてたんだよ!
あと、カッさんも夜通し見ててくれたみたいだしな!」

フェイ「そうでしたの・・ありがとうございます。」

椿「ありがとうございます‼︎」

マキ「そういえばお2人とも手荷物で何か盗まれた物等はありませんか?」

椿「ん~どうなんだろ?」

ベニス「安静にしてな!荷物は後で確認すりゃあいい。」

クス「ですな・・・
お2人はまだ寝ていた方がいいでしょうから我々は退室しますかな」

2人を部屋に残し、俺達は部屋を出た

引き続き仮眠しているカッさんと、
部屋に戻ったベニスさんを除いた面々は
ロビーに集まり現状知り得ている情報を確認し始めた




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