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【芸能界 デビュタント編】 第五章 ツバサプリンセス
37 宇都宮さんと近づく、美月は上京
しおりを挟む宇都宮さんは子どもの頃からフルートの練習をはじめて、その他にもいろんな楽器を学んだが、そのなかでもフルートとバイオリンが得意だった。そして音楽大学を卒業すると教師を短期間した後、音楽制作会社にいる知り合いに誘われたのをきっかけに入社し、もう二年間そこで働いている。ネットで検索してみるとその会社は『VOLUS』という名前だとわかって、映画のサントラとか、ゲーム、アニメの音楽も作成していて、録音するときに彼女はバイオリンとビオラを担当していた。例として彼女は関わったサントラの作品の名前を送ると、本当に有名なものだった。『なんでまだ家庭教師をやってるんですか』
『意図的じゃないけど、知り合いに頼まれてだんだんと生徒が増えただけ。でも私が楽しいから、彼らがうまくなって、音楽が好きになるのはさ』
ティア・ヴァリスアイシェンは、スヴェンが買ったフィギュアでパンツが美しいと褒めてたものだが、そのアニメのサントラも宇都宮さんが演奏していた。知ったら彼は喜ぶかな。
二月末、東京にいるときに美月はまた女優の米沢宏子と付き合って夜まで忙しいそうだから、その午後宇都宮さんと会うこととなった。彼女とは二、三週間くらいメッセージをやり取りして随分仲良くなっていた。
品川のカフェに入るともう宇都宮さんはいた。相変わらずきれいな彼女は、ベージュ色の上着で髪の毛を低いポニーテールに結いで、初めて会った日みたいな強い光はないので髪をちゃんと見ると暗めの茶色だった。微かな香がなんのか。やっと香水だと気づいたが、都会の女の人ってこう使うのか。
ドリンク代を自分で払うと言ったが、いつの間にか宇都宮さんはもう払ってくれた。恥ずかしくて、ただ高校生の私は、社会人の彼女に対して面倒な再会じゃないかと悩むが、テーブルにすわると彼女はただ普通の知り合いとしてしゃべってくれたのは嬉しかった。だけど、今から一ヶ月以上彼女と会わないかもしれないので、問題にならないように私は言った。「えっと、私は彼女と付き合ってます」
カジュアルな口調にしたかったが、宇都宮さんはしばらく黙っていた。「そう?」
「はい、この前言った、彼女は芸能活動をしてるんですね」
宇都宮さんはうなずいた。「いい彼氏ね」
「はい?」
「私は……さっき名前は美月ちゃんと言った?本当に嬉しいと思うね。それでもし彼女が人気になったら、遠距離恋愛になるかな」
私は答えた。「……そうですね。仕事がもっと増えたら、彼女は東京に引っ越ししなければならないと思うし」
宇都宮さんはホットココアを飲んで、ゆっくりとコップを置くと言った。「わかるよね。あとはカップルって顔会わせないと誤解するのは簡単で。だんだん一人でも大丈夫って感じになって、相手が必要なくなって小さなことでも喧嘩するし、別れる種にもなるね」
「そんなに……宇都宮さんの彼氏とも遠距離恋愛?」
「あ、彼氏ね東京で会ったの。元カレはね、そんな感じだった、つらかったね。うーん、彼氏とはもう一年くらい交際してるけど、かわいい人ね……でもなんか百八十七センチでかわいいとは言わないかな」
彼女は微笑んだ。唇にココアが付いているのが見えたが。
三月に美月は東京に引っ越した。
まだツバサプリンセスの仕事を務めながら、事務所の斡旋した仕事以外に彼女は指示されたいろんなドラマのオーディションを受けた。その役は目立つものから、通りすがりの学生の脇役まで、そして殺された死体、壁にかけられる写真としての登場みたいにどうやってエキストラの事務所から取れるかわからないが。結局四月にそういう脇役で彼女は二つのドラマに出演する予定だった。美月は言った。「犯人役の設置した爆弾でコンクリートの下敷きになって、ぼろぼろのメイクもするかな」
それは『青刺』というサスペンスドラマの役で、そう美月は説明すると私はうなずいた。「すごいね、美月はこんなに頑張って。私ならやる気がないと思うよ」
「え、しないと仕事がないでしょ」
「わかった。でもさ、こんな役から……もっといい役にできるの」
「どういう意味?」
私は少し考えた。「私はちょっと調べたけどさ、有名な女優は最初から新人オーディションの賞を取って、いい役でスタートするね。だんだん小さい役から大きな役に上った人があまりいないと思うけど」
「え、もう事務所と話したって、言ったね」
「うん」
美月はうなずいた。「プレッシャーとオーディションに慣れてほしいし、そのあと役があるかって私もちょっと半信半疑だけど。この事務所に何百人の子がいるのに、これは優遇すぎるね……文句を言える立場じゃないけどさ、いろんなオーディションを受けると経験になるし、そんなに悪くないね」
一月、高校一年の学期が終わる前に、東京に引っ越しするかどうかを、家族内、知り合い、事務所と長く相談したが、結局そう決めたのは美月のお父さんだった。この二、三年間芸能界の道に踏んでみて悪くないという理由で、家族が事務所の薦めた学校のリストから見に行って、豊島区にある久理(ひささと)高校をえらんだ。急なので悲しそうな美月の同級生がいたそうで、とくによく美月とメッセージをやり取りした愛理という女の子だった。彼女はこの事務所に所属している三浦剛の『CRUNCH!』の男子アイドルが好きで、美月が会ったらサインを頼んだそうだ。「彼と会ったことある?」
私は聞くと、美月は頭を振った。「事務所って、普段だれも来ないね。工藤さんに頼んだら多分もらえるけど、どう見られるかな」
四月、新しい高校へ美月は二年生からの転校となった。東京に彼女はお母さんと一緒に住むことになって、えらんだマンションは学校からそんなに離れていないところだった。
三月に私が初めてここに来ると、警備員とオートロックのセキュリティがちゃんとしていて、八階にある彼女の部屋に入ると道具はすべてきれいだった。音声のコマンドができる洗濯機と大きな家族用サイズの冷蔵庫から、Wi-Fiと繋がっている五十インチのテレビで美月はネットの動画を再生して見せると、私は言った。「もう売れている女優の家みたいね」
美月は笑った。「嫌だ。お父さんはなに考えていたかわからないね。恥ずかしいでしょ、全然友だちに来てほしくないの」
引っ越しするのは大変だと思ったけど、また彼女と会うと、マンションがあるわけか妙に彼女は一般の東京の女の子に見えてきた。
ここに住むと美月は事務所関連の演技学校に通いはじめた。演技の基礎、演出論みたいなレッスンもあって、時間が空いていたらほかのワークショップも参加したそうだった。そして二週目私は島根にいる間、夜に彼女はレストランで二人の男子と一緒にいる写真を私に送って、どうと聞いた。『いいじゃない、友だちができて』
『え、この男の子かわいくないの?』
『カッコイイね』
『大丈夫なの?もし私ともっとふらふらしてたら』
『いいでしょ』私は返事した。
『嫉妬、とかしないの』
『なんで、ナンパされた?』
『まだだけど……』
『好きにしていいよ。美月はこんなに離れて東京にいるから、私が嫉妬してもしょうがないんだ』
『私は君の彼女じゃないの?』
またしばらくやり取りすると彼女は元のサイズの写真を送った。男子たちだけではなく、女子二人も一緒にいた。それを見ると私は答えた。『美月も好かれるけど、右の男はピンク色のTシャツの女の子を狙いそうじゃない?』
『そう?』
『うん、こんな顔で、そろそろ付き合うんじゃないかな……確かじゃないけど』
『私じゃないの?』
『美月は積極的じゃないでしょ。男ってさ、芸能人がよく言うけどね、タイプは髪の毛が長くて、美しい笑顔をする女の人ってさ、うそだ。タイプより実はだれでも先に来たら取るんだ……競争だから、もっとフレンドリーにしないとね』
『どういうこと⁈』
――――――――――――――――――――
芸能界の活動のためにすぐに東京に引越ししたのは周りから見ると無謀かもしれませんが、それは事務所が美月を女優にする計画通りで、オープンに周りには言えない話のですが。
しかし、美月の芸能界の道はそんなに簡単なのか?
備考
周りの人には秘密ですが、彰は他の人より人を読むのが(たまに危ないほど)早いです。これは未だ曖昧に書いていますが。彼が女性と上手くいくのはこのおかげとも言えます。
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