原っぱの中で

紫奈

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ⅩⅠ

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 君は私の歌声が好きではなかった。
私は君の歌声が好きだった。

君は私を大事だと言った。
私も君がとても大事だった。

君はいつでも俺のところにおいでと言った。
私は何も言えなかった。

私は君が好きだった。
君はどうだっただろう。


現実の私と君に追いついてしまったので、ここらへんでやめにしようと思う。多分、これから大きく変動することもない。
また他愛もない話をして、気が向いた時に会って、お互いの家に逃避しに行って。その程度だ。何も変わらない。


恋や愛なんかで囲んでしまってはいけない、当てはめてしまってはいけない、何かとても大事なものを君からもらった気がする。生きるうえでの酸素ボンベのような、階段を上る手すりのような、そんな感じ。名前のない関係をほんの少し気に入っている。


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