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第2章 幼馴染と恋人になったばかりの私たち
第3話 修二と恋人になってみた
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何はともあれ恋人になって、キスしたばかりの私たち。
帰ってきた後は私の部屋で一緒に対戦パズルゲームをしている。
ぶよぶよという一昔はもっとメジャーだったらしいゲームだ。
床暖房も効いていて快適快適。
「俺たちは恋人になったわけだけど」
画面を見つつサクサクとぷよを操作しながら、彼が言ってきた。
「呼び方とか変えてみる?」
やっぱり画面を見ながら思いついた事を提案してみた。
下校の時にはあった甘酸っぱさが完全に抜け落ちてしまった。
こっちの方が気楽だけど、少し残念。
「呼び方かー。ゆりりんとか?」
ゆりりん。修二に呼ばれる場面を想像してみる。
「ゆりりん、迎えに来たぞ」
とか、
「ゆりりん、起きろよ」
とか?
非常に微妙なイメージだ。
背筋がぞわわっと来ちゃった。
「さすがにそれは止めて欲しいよ」
本気では言っていないだろうけど。
八連鎖。会話しながらこれくらいも軽いもの。
お邪魔ぶよが修二側に送られるかと思ったけど。
「百合もエグいな。百合ちゃんは?」
直後に七連鎖。かなり相殺されてしまった。くそう。
(百合ちゃんかあ)
悪くないんだけど……。
「子どもっぽくない?小学校入ったばかりの頃みたい」
素早く三連鎖くらい叩き込んでみる。
今度はうまく妨害出来た。
確かに昔「百合ちゃん」て呼ばれていた記憶がある。
「うぐぐ。手強いな……。で、逆に面白くないか?」
残ったスペースを使って再び連鎖を組み始めている。
私も隙を与えずに畳み込まないと。
「ちょっと待って。イメージしてみる」
頭の中で「百合ちゃん」と呼びかけられる様を想像してみる。
「百合ちゃん、夜更しは止めろよ」
少し違和感がある。
「百合ちゃん、夜更しはやめた方がいいよ」
これも違和感がある。だいぶ普段の修二と違う。
「百合ちゃん、起きろよ」
やっぱり違和感だ。
「しっくり来ないし駄目」
ちゃん付けは違う。よし。四連鎖完成。
「ちょ。じゃあ、百合はそのままで。逆は?」
ぬふふ。慌ててる慌ててる。
情勢は私有利。短く三連鎖で立て直す隙を与えない。
「ちょっと待って。考えるから」
もうほぼ勝ちは決まった。
「ぐぐぐぐ。もう負け確定か」
悔しまぎれの言葉を聞きながら考える。
「修ちゃんとかどうかな?」
遠い昔のあだ名。
彼の名前は池波修二。
だから修ちゃん。幼い頃に一時期使っていた程度だ。
(なんだか恥ずかしい)
子どもっぽかったかも。
「子どもっぽい気がするけど悪くないな」
横目でちらりと様子を伺うと照れている。
考えてみると修ちゃんは結構いいかも。
可愛らしい感じがするし。
彼氏をちゃん付けもいいかもしれない。
「じゃあ。修ちゃんでいい?」
「お、おう。百合」
照れくさそうな修二……修ちゃんを見て。
今までに無い感情が湧き上がってきた。
なんだろう。この胸のときめきは。
ああ、そっか。これは。
「なんか嬉しいのかも」
不覚にも頬が緩むのを感じる。
「でも、なんか俺だけが恥ずかしい気がするんだけど」
無理やり渋い顔をしつつも、修ちゃんも嬉しそう。
「昔使ってたからいいじゃない?」
「それはそうだけど。しかし、修ちゃん言われると昔を思い出すな」
昔、か。
「修ちゃんは子どもの頃から落ち着いてたよね」
もちろん年相応にはしゃぐ面はあったけど。
同年代では一番冷静だった。
「ゲームだとやっぱり冷静じゃないと勝てないしな」
ゲームの話じゃないんだけど、ま、いっか。
「格ゲーなんかは冷静さ必要だよね」
昔、修ちゃんとよく格ゲーをしていた。
技量が拮抗していたから白熱したなあ。
「他の連中だと相手にならなかったら、百合がいて張り合いがあったぞ」
「んふふー。何おだててるの?」
お世辞だと思っていても嬉しくなる。
「本音だって。ゲーム以外でも色々やったよな」
インドアだけでなくアウトドアも色々あった気がする。
「羽化直前のセミの幼虫を大量に捕獲してカーテンで羽化させるとか」
「あったな。確か、二人でぽいぽい籠に放り込んだよな」
「そうそう。それで、うちの部屋のカーテンにとまらせて」
翌朝にはミンミン鳴いてたりそこら中を飛びまわって。
お母さんもお父さんも苦笑ししつも、
「本当お転婆なんだから」
「楽しそうだからいいじゃないか」
「そうね」
なんて言ってくれたこともあった。
「ほんと楽しかったよなあ」
この辺りは本当に似たもの同士だ。
「ところで……」
今までよりも距離を縮めてみようかななんて。
「ぷふっ」
「何笑ってるの?」
恥ずかしい。意図がわかったんだろう。
「いや、急に百合が挙動不審になるから」
「もう。とにかく……」
距離を縮めて、こてんと肩を寄せてみる。
少し照れるけど、なんだかいい。
「少し幸せかも」
「俺も。こっちもいいか?」
ぎゅっと抱き寄せられてしまう。
顔が熱くなって心臓がドキドキしてくる。
「や、やっぱり。触れ合うと何か違うのかな?」
キスの時もそうだった。
「もっと普通にイチャイチャできると思ってた」
修ちゃんの言うことはわかる。
自然に肩を寄せたり、抱き合ったり。
そんなイメージだった。
私もきっと修ちゃんも恥ずかしい。
「恋人同士になるってこういうことなのかも」
私達の関係は完成されていると思いこんでいた。
でも、私達もまだまだ子ども。きっと変わっていくんだろう。
「そういうもんかもな」
「ね、ねえ、修ちゃん。もう一度、キス、してみたいんだけど?」
もう徹底的にイチャイチャしちゃおう。
下校の時は一瞬だったからよくわからないところがあったし。
「わかった。って、おお!?」
顔を近づけたら修ちゃんは驚いたみたいだった。
「修ちゃん。目を閉じて?」
呼び名を変えたからだろうか。
私が攻めている感じがする。
「ま、まあ。仕方ない、か」
なんだか諦めたように目を閉じる修二。
目を閉じた彼に唇をちゅっと押し付ける。
さっきよりも気持ちいい感じがする。
(そういえば)
舌を入れるキスなんてのもあったっけ。
試しに舌を差し込んでみる。
くちゅりと水音がする。
「むぐ」
修ちゃんもさすがい慌てた様子。
でも、立ち直りも早い。
逆に舌を絡めて来た。
なんだか身体が熱くなってくるのを感じる。
唇を合わせるだけのとは違う何か。
舌を絡め合うごとにその感覚は強くなっていって……。
耐えきれなくなって慌てて顔を離した。
「すー。はー」
「すー。はー」
お互いに深呼吸。
修ちゃんも顔が赤いけど、私も顔が赤いだろう。
「いきなり舌入れるのはどうなんだ」
「恋人同士なら、やるみたいだし」
「俺も聞いたことあるけど」
「う、嬉しくなかった?」
「言わなくてもわかるだろ」
「そのくらいは言ってほしい」
修ちゃんには甘えてきた気がするけど。
こんな事をしているともっと甘えたくなる。
「嬉しかったよ。でもしばらく、これは封印しよう」
やけに落ち着かない様子の彼。
どうしたんだろう。ズボンがなんだか……あ。
「わ、わかった。封印しよ。しばらく、ね」
「そうそう。しばらくは、な」
舌を入れるキスはエッチなことの前にするって聞いたことがある。
なんでかなって思ったけど。
そういうことなんだ。
「ごめん。暴走し過ぎだったかも」
「ま、まあ。そういう時になったらな」
「う、うん。そういう時になったらね」
私も彼も心の準備が出来てない。
だから舌でのキスはお預け。
(普通の恋人同士もこんな風な気持ちを味わってるんだ)
恋人を作りたくなる気持ちがわかってきた。
その日の晩。
小学校の頃からの友達にちょっと惚気けてみたくなった。
「そうそう。優ちゃん。修ちゃんとキスしてみたんだー」
優ちゃん。本名、春日優。
別の高校だけど電話で話すことがある友達の一人。
「修ちゃんって……」
「あ、その。今日から修二と付き合うことになりました、はい」
「あなた達が付き合ってなかった事が驚きよ」
「そう?」
「今は別高だけど、昔から見てきたからね」
「そ、そっか。とにかく。恋人になったからキスしてみたの!」
「え」
何か怪訝そうな声。
「えーと。恋人になったの今日よね。百合?」
「それはそうだけど」
「今日キスしたの?」
「うん。恋人になった直後に」
「あなたたち、一体どんなやりとりしたのよ」
向こうから聞こえてくるため息。
「恋人になったらキスしていいんでしょ?」
「いやその。それはそうだけど……まあいいわ」
「なんか諦められちゃったんだけど」
「あなたたちのペースがあるってこと」
「そうそう。そうだよ」
「本当に幸せそうで。とにかく、おめでとう」
「うん。恋人っていいよねー」
「あー、いっつも百合と電話すると修二君の話が多いのに……」
「私、そんなに言ってた?」
「自覚なかったのね……。まあいいわ。惚気なら思う存分聞いてあげる」
「さすが姉御!」
「誰が姉御よ!同い歳でしょ!」
「やー。だって、優ちゃんは同い歳というか、姉御って感じだし」
今でも仲良くしているのは面倒見のいい部分が好きなせいもあるし。
「私が老けてるのかしら……」
「別にいい意味だってば」
なんて会話を小一時間程ずっと続けてしまったのだった。
ちなみに「キスだけならともかく。恋人になってすぐ舌入れないからね?」
とお説教されてしまった。
「修ちゃんは応じてくれたからいいと思うんだけど」
「修二君は昔っから百合にだだ甘だったからよ」
「私たちの問題だからそれでいいでしょ?」
「まあいいわ。バカップル、バカップル」
「別にバカップルじゃないよ!」
「当日にそんな進展してるのがバカップルよ!」
お互い合意なら別にいいと思うんだけど。
ちょっと納得が行かない。
帰ってきた後は私の部屋で一緒に対戦パズルゲームをしている。
ぶよぶよという一昔はもっとメジャーだったらしいゲームだ。
床暖房も効いていて快適快適。
「俺たちは恋人になったわけだけど」
画面を見つつサクサクとぷよを操作しながら、彼が言ってきた。
「呼び方とか変えてみる?」
やっぱり画面を見ながら思いついた事を提案してみた。
下校の時にはあった甘酸っぱさが完全に抜け落ちてしまった。
こっちの方が気楽だけど、少し残念。
「呼び方かー。ゆりりんとか?」
ゆりりん。修二に呼ばれる場面を想像してみる。
「ゆりりん、迎えに来たぞ」
とか、
「ゆりりん、起きろよ」
とか?
非常に微妙なイメージだ。
背筋がぞわわっと来ちゃった。
「さすがにそれは止めて欲しいよ」
本気では言っていないだろうけど。
八連鎖。会話しながらこれくらいも軽いもの。
お邪魔ぶよが修二側に送られるかと思ったけど。
「百合もエグいな。百合ちゃんは?」
直後に七連鎖。かなり相殺されてしまった。くそう。
(百合ちゃんかあ)
悪くないんだけど……。
「子どもっぽくない?小学校入ったばかりの頃みたい」
素早く三連鎖くらい叩き込んでみる。
今度はうまく妨害出来た。
確かに昔「百合ちゃん」て呼ばれていた記憶がある。
「うぐぐ。手強いな……。で、逆に面白くないか?」
残ったスペースを使って再び連鎖を組み始めている。
私も隙を与えずに畳み込まないと。
「ちょっと待って。イメージしてみる」
頭の中で「百合ちゃん」と呼びかけられる様を想像してみる。
「百合ちゃん、夜更しは止めろよ」
少し違和感がある。
「百合ちゃん、夜更しはやめた方がいいよ」
これも違和感がある。だいぶ普段の修二と違う。
「百合ちゃん、起きろよ」
やっぱり違和感だ。
「しっくり来ないし駄目」
ちゃん付けは違う。よし。四連鎖完成。
「ちょ。じゃあ、百合はそのままで。逆は?」
ぬふふ。慌ててる慌ててる。
情勢は私有利。短く三連鎖で立て直す隙を与えない。
「ちょっと待って。考えるから」
もうほぼ勝ちは決まった。
「ぐぐぐぐ。もう負け確定か」
悔しまぎれの言葉を聞きながら考える。
「修ちゃんとかどうかな?」
遠い昔のあだ名。
彼の名前は池波修二。
だから修ちゃん。幼い頃に一時期使っていた程度だ。
(なんだか恥ずかしい)
子どもっぽかったかも。
「子どもっぽい気がするけど悪くないな」
横目でちらりと様子を伺うと照れている。
考えてみると修ちゃんは結構いいかも。
可愛らしい感じがするし。
彼氏をちゃん付けもいいかもしれない。
「じゃあ。修ちゃんでいい?」
「お、おう。百合」
照れくさそうな修二……修ちゃんを見て。
今までに無い感情が湧き上がってきた。
なんだろう。この胸のときめきは。
ああ、そっか。これは。
「なんか嬉しいのかも」
不覚にも頬が緩むのを感じる。
「でも、なんか俺だけが恥ずかしい気がするんだけど」
無理やり渋い顔をしつつも、修ちゃんも嬉しそう。
「昔使ってたからいいじゃない?」
「それはそうだけど。しかし、修ちゃん言われると昔を思い出すな」
昔、か。
「修ちゃんは子どもの頃から落ち着いてたよね」
もちろん年相応にはしゃぐ面はあったけど。
同年代では一番冷静だった。
「ゲームだとやっぱり冷静じゃないと勝てないしな」
ゲームの話じゃないんだけど、ま、いっか。
「格ゲーなんかは冷静さ必要だよね」
昔、修ちゃんとよく格ゲーをしていた。
技量が拮抗していたから白熱したなあ。
「他の連中だと相手にならなかったら、百合がいて張り合いがあったぞ」
「んふふー。何おだててるの?」
お世辞だと思っていても嬉しくなる。
「本音だって。ゲーム以外でも色々やったよな」
インドアだけでなくアウトドアも色々あった気がする。
「羽化直前のセミの幼虫を大量に捕獲してカーテンで羽化させるとか」
「あったな。確か、二人でぽいぽい籠に放り込んだよな」
「そうそう。それで、うちの部屋のカーテンにとまらせて」
翌朝にはミンミン鳴いてたりそこら中を飛びまわって。
お母さんもお父さんも苦笑ししつも、
「本当お転婆なんだから」
「楽しそうだからいいじゃないか」
「そうね」
なんて言ってくれたこともあった。
「ほんと楽しかったよなあ」
この辺りは本当に似たもの同士だ。
「ところで……」
今までよりも距離を縮めてみようかななんて。
「ぷふっ」
「何笑ってるの?」
恥ずかしい。意図がわかったんだろう。
「いや、急に百合が挙動不審になるから」
「もう。とにかく……」
距離を縮めて、こてんと肩を寄せてみる。
少し照れるけど、なんだかいい。
「少し幸せかも」
「俺も。こっちもいいか?」
ぎゅっと抱き寄せられてしまう。
顔が熱くなって心臓がドキドキしてくる。
「や、やっぱり。触れ合うと何か違うのかな?」
キスの時もそうだった。
「もっと普通にイチャイチャできると思ってた」
修ちゃんの言うことはわかる。
自然に肩を寄せたり、抱き合ったり。
そんなイメージだった。
私もきっと修ちゃんも恥ずかしい。
「恋人同士になるってこういうことなのかも」
私達の関係は完成されていると思いこんでいた。
でも、私達もまだまだ子ども。きっと変わっていくんだろう。
「そういうもんかもな」
「ね、ねえ、修ちゃん。もう一度、キス、してみたいんだけど?」
もう徹底的にイチャイチャしちゃおう。
下校の時は一瞬だったからよくわからないところがあったし。
「わかった。って、おお!?」
顔を近づけたら修ちゃんは驚いたみたいだった。
「修ちゃん。目を閉じて?」
呼び名を変えたからだろうか。
私が攻めている感じがする。
「ま、まあ。仕方ない、か」
なんだか諦めたように目を閉じる修二。
目を閉じた彼に唇をちゅっと押し付ける。
さっきよりも気持ちいい感じがする。
(そういえば)
舌を入れるキスなんてのもあったっけ。
試しに舌を差し込んでみる。
くちゅりと水音がする。
「むぐ」
修ちゃんもさすがい慌てた様子。
でも、立ち直りも早い。
逆に舌を絡めて来た。
なんだか身体が熱くなってくるのを感じる。
唇を合わせるだけのとは違う何か。
舌を絡め合うごとにその感覚は強くなっていって……。
耐えきれなくなって慌てて顔を離した。
「すー。はー」
「すー。はー」
お互いに深呼吸。
修ちゃんも顔が赤いけど、私も顔が赤いだろう。
「いきなり舌入れるのはどうなんだ」
「恋人同士なら、やるみたいだし」
「俺も聞いたことあるけど」
「う、嬉しくなかった?」
「言わなくてもわかるだろ」
「そのくらいは言ってほしい」
修ちゃんには甘えてきた気がするけど。
こんな事をしているともっと甘えたくなる。
「嬉しかったよ。でもしばらく、これは封印しよう」
やけに落ち着かない様子の彼。
どうしたんだろう。ズボンがなんだか……あ。
「わ、わかった。封印しよ。しばらく、ね」
「そうそう。しばらくは、な」
舌を入れるキスはエッチなことの前にするって聞いたことがある。
なんでかなって思ったけど。
そういうことなんだ。
「ごめん。暴走し過ぎだったかも」
「ま、まあ。そういう時になったらな」
「う、うん。そういう時になったらね」
私も彼も心の準備が出来てない。
だから舌でのキスはお預け。
(普通の恋人同士もこんな風な気持ちを味わってるんだ)
恋人を作りたくなる気持ちがわかってきた。
その日の晩。
小学校の頃からの友達にちょっと惚気けてみたくなった。
「そうそう。優ちゃん。修ちゃんとキスしてみたんだー」
優ちゃん。本名、春日優。
別の高校だけど電話で話すことがある友達の一人。
「修ちゃんって……」
「あ、その。今日から修二と付き合うことになりました、はい」
「あなた達が付き合ってなかった事が驚きよ」
「そう?」
「今は別高だけど、昔から見てきたからね」
「そ、そっか。とにかく。恋人になったからキスしてみたの!」
「え」
何か怪訝そうな声。
「えーと。恋人になったの今日よね。百合?」
「それはそうだけど」
「今日キスしたの?」
「うん。恋人になった直後に」
「あなたたち、一体どんなやりとりしたのよ」
向こうから聞こえてくるため息。
「恋人になったらキスしていいんでしょ?」
「いやその。それはそうだけど……まあいいわ」
「なんか諦められちゃったんだけど」
「あなたたちのペースがあるってこと」
「そうそう。そうだよ」
「本当に幸せそうで。とにかく、おめでとう」
「うん。恋人っていいよねー」
「あー、いっつも百合と電話すると修二君の話が多いのに……」
「私、そんなに言ってた?」
「自覚なかったのね……。まあいいわ。惚気なら思う存分聞いてあげる」
「さすが姉御!」
「誰が姉御よ!同い歳でしょ!」
「やー。だって、優ちゃんは同い歳というか、姉御って感じだし」
今でも仲良くしているのは面倒見のいい部分が好きなせいもあるし。
「私が老けてるのかしら……」
「別にいい意味だってば」
なんて会話を小一時間程ずっと続けてしまったのだった。
ちなみに「キスだけならともかく。恋人になってすぐ舌入れないからね?」
とお説教されてしまった。
「修ちゃんは応じてくれたからいいと思うんだけど」
「修二君は昔っから百合にだだ甘だったからよ」
「私たちの問題だからそれでいいでしょ?」
「まあいいわ。バカップル、バカップル」
「別にバカップルじゃないよ!」
「当日にそんな進展してるのがバカップルよ!」
お互い合意なら別にいいと思うんだけど。
ちょっと納得が行かない。
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