19 / 123
19.王太子殿下side マリー嬢について
しおりを挟む
【王太子殿下side】 ~マリー嬢について~
俺はこの三日間のことを思い出していた。新入生代表として言葉を述べ、婚約者候補の発表も予定通り行われ、俺は三人の表情を壇上から見ていた。もちろん微笑みを絶やさずに。
ルル嬢とララ嬢は誇らしげにしていた。時々俺の方を見て目が合うと真っ赤になっていた。まぁ普通の反応だな。
マリー嬢を見ると嬉しそうな表情をしていた。俺はほっとして嬉しくなった。
しかしそれからがおかしい…。一度も俺に会いに来ない。もしかしてものすごい人見知りか、照れ屋なのか?!
流石にランチの時間は来ると思っていたのに、他の生徒たちと楽しそうに食堂で食べていたのには驚いた。その中にはシルバーとレッドもいるじゃないか!どういうことだ!
もしかして照れているのかと思い、マリー嬢たちの横のテーブルに座ってみた。
一瞬やっと目が合った。しかし、ルル嬢とララ嬢にさりげなく視界を遮られた。くそ、邪魔だ。よく見ると、二人がマリー嬢を睨んでいるのが分かった。俺はなんてことをするんだと思ったが、次の瞬間マリー嬢がルル嬢とララ嬢に微笑み、軽く頭を下げた。意味が分からない。ルル嬢とララ嬢もあっけにとられている。
仕方なく俺は、帰りにシルバーを馬車の中に引っ張り込んだ。
「ルド、僕忙しいんだけど…。」
「知るかそんなこと。何でマリー嬢に俺の所に来るように言わないんだよ。」
「言ったよ。言ったけど契約になかったからって言われたんだよ。」
「はぁ~?」
「あの子いい子だと思うよ。公爵令嬢なのに、ちっとも偉そうな態度とらないし、貴族らしくないけど、素直だしね。」
「やたらと詳しいな。」
「僕、マリー嬢の友達一号らしいからね。自分は王太子妃に相応しくないと思っていると思うよ。」
「なんでだよ。公爵令嬢だし、魔力も多くて美人じゃないか。」
「みんなの前で言っていたからいいとは思うけど、魔力は多いけど一度に放出できる量がものすごく少ないんだって。」
「それじゃあ無いのと同じじゃないか。欠陥品…残念すぎるな……。」
「同じことレッドに言われて、それそれ、しっくりくる言葉がみつかったって、喜んでいたよ。レッドは他の令嬢にめちゃくちゃ怒られていたけどね。そういうことだから、これからも彼女がルドの所に行くことはないと思うよ。だいたいわざと、クラスを別にしたんだろう。そんなことするからいけないんだよ。まぁ明日のお茶会で聞いてみなよ。」
「うるさいな!言われなくても聞くさ。」
「あっそう。じゃあ僕もう行くからね。あーあと、彼女友達になってあげるとものすごく喜ぶよ。」
シルバーは散々言いたいことを言って、降りて行った。友達か…魔力の放出量が少ないようでは王太子妃は無理か…。でも今は婚約候補だぞ。
俺はクラスを別にしたことをすでに後悔していた。
次の日のお茶会では、自分の欠点を堂々と言い、媚びることもなくライバルの令嬢とも仲良くなっていた。
この国にいま必要なものを聞けば、九割の人間が医療の強化と答える中、結界を国全体に張れる魔道具だと言った。そして、自分も魔力量は多いから協力したいと言った。国王陛下のことまで辛いだろうと心配していた。
そんな貴族令嬢がいたのか…。この国の貴族は形式上は感謝の言葉を述べる。国王陛下のおかげで安心して暮らせますと。
だが、実際は結界を張り続けて当たり前なのだ。一度父上が毒を盛られて、血を吐いたことがある。その時、貴族たちは、毒を盛られて血を吐いている父上よりも結界の心配をしたのだ。これが現実だ。国王陛下なんて孤独でしかない…。父上は血を吐きながらも結界を張り続けたのだ。もしもその時だけでも魔道具に頼ることができたらどれ程安心できたか。
今まで腹黒の大人たちに囲まれてうんざりしていたが、父上の言う通り、信頼できる者はいたのかもしれない。ただ、俺に見る目がなかっただけかもしれないな。自分の領地に少しも利益がないのに真剣に考えてくれているマルク殿には本当に感謝しかない。マリー嬢の兄上なら一度、話をしてみたいとも思った。
マリー嬢の王妃教育は完璧だった。どの家庭教師も驚いていたようだ。地位(公爵令嬢)も名誉(王太子の婚約者候補)も能力の高さ(王太子妃教育レベル)も全く鼻にかけることはない。
俺はどうしても素の自分をマリー嬢に知って欲しい気持ちを抑えられなくて、素の自分を見せた。マリー嬢は案の定ぷりぷりと怒って帰ってしまった。それなのに…嬉しかったな。
まぁ、結果的には強引に言いすぎて嫌われたけど…。俺の容姿にも、王太子という肩書にも全く興味のない令嬢。俺のことをルドとしか認識せず、おかしいことはおかしいと言ってくれる人。この際友達からで十分だ。頼むからそばにいることを許してくれ。
俺はこの三日間のことを思い出していた。新入生代表として言葉を述べ、婚約者候補の発表も予定通り行われ、俺は三人の表情を壇上から見ていた。もちろん微笑みを絶やさずに。
ルル嬢とララ嬢は誇らしげにしていた。時々俺の方を見て目が合うと真っ赤になっていた。まぁ普通の反応だな。
マリー嬢を見ると嬉しそうな表情をしていた。俺はほっとして嬉しくなった。
しかしそれからがおかしい…。一度も俺に会いに来ない。もしかしてものすごい人見知りか、照れ屋なのか?!
流石にランチの時間は来ると思っていたのに、他の生徒たちと楽しそうに食堂で食べていたのには驚いた。その中にはシルバーとレッドもいるじゃないか!どういうことだ!
もしかして照れているのかと思い、マリー嬢たちの横のテーブルに座ってみた。
一瞬やっと目が合った。しかし、ルル嬢とララ嬢にさりげなく視界を遮られた。くそ、邪魔だ。よく見ると、二人がマリー嬢を睨んでいるのが分かった。俺はなんてことをするんだと思ったが、次の瞬間マリー嬢がルル嬢とララ嬢に微笑み、軽く頭を下げた。意味が分からない。ルル嬢とララ嬢もあっけにとられている。
仕方なく俺は、帰りにシルバーを馬車の中に引っ張り込んだ。
「ルド、僕忙しいんだけど…。」
「知るかそんなこと。何でマリー嬢に俺の所に来るように言わないんだよ。」
「言ったよ。言ったけど契約になかったからって言われたんだよ。」
「はぁ~?」
「あの子いい子だと思うよ。公爵令嬢なのに、ちっとも偉そうな態度とらないし、貴族らしくないけど、素直だしね。」
「やたらと詳しいな。」
「僕、マリー嬢の友達一号らしいからね。自分は王太子妃に相応しくないと思っていると思うよ。」
「なんでだよ。公爵令嬢だし、魔力も多くて美人じゃないか。」
「みんなの前で言っていたからいいとは思うけど、魔力は多いけど一度に放出できる量がものすごく少ないんだって。」
「それじゃあ無いのと同じじゃないか。欠陥品…残念すぎるな……。」
「同じことレッドに言われて、それそれ、しっくりくる言葉がみつかったって、喜んでいたよ。レッドは他の令嬢にめちゃくちゃ怒られていたけどね。そういうことだから、これからも彼女がルドの所に行くことはないと思うよ。だいたいわざと、クラスを別にしたんだろう。そんなことするからいけないんだよ。まぁ明日のお茶会で聞いてみなよ。」
「うるさいな!言われなくても聞くさ。」
「あっそう。じゃあ僕もう行くからね。あーあと、彼女友達になってあげるとものすごく喜ぶよ。」
シルバーは散々言いたいことを言って、降りて行った。友達か…魔力の放出量が少ないようでは王太子妃は無理か…。でも今は婚約候補だぞ。
俺はクラスを別にしたことをすでに後悔していた。
次の日のお茶会では、自分の欠点を堂々と言い、媚びることもなくライバルの令嬢とも仲良くなっていた。
この国にいま必要なものを聞けば、九割の人間が医療の強化と答える中、結界を国全体に張れる魔道具だと言った。そして、自分も魔力量は多いから協力したいと言った。国王陛下のことまで辛いだろうと心配していた。
そんな貴族令嬢がいたのか…。この国の貴族は形式上は感謝の言葉を述べる。国王陛下のおかげで安心して暮らせますと。
だが、実際は結界を張り続けて当たり前なのだ。一度父上が毒を盛られて、血を吐いたことがある。その時、貴族たちは、毒を盛られて血を吐いている父上よりも結界の心配をしたのだ。これが現実だ。国王陛下なんて孤独でしかない…。父上は血を吐きながらも結界を張り続けたのだ。もしもその時だけでも魔道具に頼ることができたらどれ程安心できたか。
今まで腹黒の大人たちに囲まれてうんざりしていたが、父上の言う通り、信頼できる者はいたのかもしれない。ただ、俺に見る目がなかっただけかもしれないな。自分の領地に少しも利益がないのに真剣に考えてくれているマルク殿には本当に感謝しかない。マリー嬢の兄上なら一度、話をしてみたいとも思った。
マリー嬢の王妃教育は完璧だった。どの家庭教師も驚いていたようだ。地位(公爵令嬢)も名誉(王太子の婚約者候補)も能力の高さ(王太子妃教育レベル)も全く鼻にかけることはない。
俺はどうしても素の自分をマリー嬢に知って欲しい気持ちを抑えられなくて、素の自分を見せた。マリー嬢は案の定ぷりぷりと怒って帰ってしまった。それなのに…嬉しかったな。
まぁ、結果的には強引に言いすぎて嫌われたけど…。俺の容姿にも、王太子という肩書にも全く興味のない令嬢。俺のことをルドとしか認識せず、おかしいことはおかしいと言ってくれる人。この際友達からで十分だ。頼むからそばにいることを許してくれ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
121
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる