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31.礼拝堂に着きました

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「あれ?」
ここって礼拝堂よね?私の知っている礼拝堂は正面の中央に女神像があって、その周りをこれでもかってくらい沢山のお花で飾ってあるのよね。たしかこの国の礼拝堂はすべて同じ形式のはずなんだけど。女神像があんな端っこに。
私がきょろきょろしているとチャング様と目が合った。
「薬師様ここは転移陣の部屋でございます。」

「あ、ありがとうございます。」
そうだったわ、私は今、薬師のおばあさんなんだったわ。それに流石チャング様だわ。
私の聞きたいことに答えてくださったわ。
「薬師様、急に礼拝堂の礼拝室に転移したらみんな大混乱ですよ。」
ルドに、嫌味っぽく、そう言われた。そりゃそうね。でも、何となく女神像の前をイメージしちゃってたんだから仕方がないじゃない。そんな残念な子を見るような目でみないでよ。

チャングさんが私の方に微笑みながら、
「薬師様と同じことを思われる方は多いですよ。ちなみに、礼拝堂はこの部屋の隣になります。まずは皆様を居住スペースがある地下にご案内しようと思います。」
チャングさんは優しいわ。ルドも見習ったらいいのよ。チャングさんの案内で地下に向かった。地下は驚くほど広かった。

何これ、客室や食堂だけじゃないんだわ。実験室や会議室まであるじゃない。それどころか、花屋室?床屋室?て何?花は献花の為かな?何だか小さな町のような空間ね。チャングさんがまた、私の気持ちを察してくれたみたいで説明してくれた。
「花屋室は献花の花の管理を二十四時間体制で行っております。床屋室は司祭様など聖職者の髪型はすべて役職で決まっておりますので、一般的な床屋ではできません。」

なるほど、結構大変なのね。たしかに司祭様たちって、いつもさらさらで同じ髪型よね。髭もないし。あちらは何の部屋かしら。私がわくわくしだしていると、お父様が、
「チャング殿早速で悪いが実験室を使えるように手配してくれないだろうか。すぐに調べたいことがあるんだ。」
流石お父様。仕事熱心ですね。こういう時のお父様は本当にカッコいいわね。今朝のお父様とは別人みたい。私もわくわくしている場合ではなかったわね。シルバーの方を見ると、
「薬師様、今から王太子殿下と私で救護院の方に行こうと思っておりますが薬師様も一緒に行かれますか?」

みんなお仕事モードね。私も薬師のおばあさんになりきらないとね。
「ええ、私もこの目で薬の効果を確かめたいと思っておりました。薬の改良点があれば、取り掛かりたいですし。」
「分かりました。では、一緒に行きましょう。救護院までは歩いて五分もかかりません。その間にお伝えしたい情報もありますので、すぐに向かいましょう。」
「はい、わかりました。」

たぶん、ヒロインの話よね。ついに会えるのね。シルバーの話は予想通りだった。
「実は昨日、平民出身で光魔法を使える者が治療の手伝いを申し出てきたそうです。その者の光魔法の力はすばらしく、昨日だけで今にも死にそうだった重傷な者を五人も完治させたというんです。患者は三千人以上いると言われているので、全く楽観視はできませんが、平民からは救世主様と言われているそうです。」
その人はヒロインですから当たり前ですね。本当の救世主ですよ。疑う余地はありません。

「それは素晴らしいですね。そんな素敵な人が現れたなら神様に感謝しないと。」
「ええ、僕たちもそれが事実なら素晴らしいことだと思います。それに、その子は僕たちと同じ十五歳の女の子で名前をブロッサというそうです。」
ここはものすごく驚くところよね?薬師のおばあさんだけどいいわよね?よーし!
「えー!何ですって!」
「驚きますよね。」
よしよし、私の演技もなかなかね。

「ええ、私の魔力は少しずつしか出ないので、世の中には素晴らしい人がいるんだなーと。」
ちょっと、二人とも、私のことを憐みの目で見るのやめてくれないかな。別に私全然気にしていませんからね。だいたい、まぼろしの薬は沢山の思い?を魔力に乗せるから、どちらにしても一瞬では私には無理だもの。だから残念だけど、沢山あるどくろたちの出番も今回はないわけだし。だからって、ちょろちょろ~は、ないなーって私だって思ってるわよ。今の二倍いや五倍の速さは欲しいわよ。でも贅沢言っても仕方ないでしょう。
「一つの瓶に二十分くらいかかっているものね。」
「何か言いましたか?」
「いいえ、何でもないですよ。」

「それで今から会えるんですか?」
「直接会うことは今はできません。今日は防音と目隠しの結界を王太子殿下に張っていただくので、結界の中から治療風景を見ます。もちろん離れたところからになります。後ほど、こちらもまぼろしの薬で治療を始めますので、その時はこちらも姿を見せます。なのでその時には彼女にも私達が来ていることは分かるでしょうが、最初から警戒されたくないのでそのような形をとります。」

警戒しなくていいんだけどな。その子絶対にヒロインだから。あー言いたい。あなたたちが目の色を変えて好きになる人よ!

ヒロインも頑張っているんだから私も頑張らないとね。アーサーと約束したもの。私は私なりにできることを精一杯頑張るわ。


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