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59.魔獣について②~予言の女神~

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「実は『千年に一度の魔獣(ラムル)現れる時、予言の女神現る』という言い伝えが王家にはあるのだ。そして予言の女神のみ、まぼろしの薬を作ることができるはずなのだがなぜか、マリー嬢も知っての通り、ブロッサ嬢もまぼろしの薬を作れる。」
私がこの世界に転生したことで色々と話にほころびが出ているのかもしれないわ。

「そうですか。私は夢のおかげでラムルのことは知ってはいますが、皆さんもご存じの通り、戦うとなるとたぶん役にたたないでしょうから、その予言の女神様はブロッサ嬢のことでしょうね。」

それから私はラムルのことを詳しく話した。大きさは二倍どころではないこと。弱点は真ん中の尻尾。真ん中の尻尾を必ず、金色のもので縛れば手のひらサイズにまで小さくなること。ただし、尻尾はとても敏感だから一瞬で縛らないといけないとか。視野は狭いから横とか後ろとかから狙えば見つからないとか。好物は白パンで、お肉ではないから好物の白パンの焼き立てのいい匂いでおびき寄せればいいなど…。

みんな口をぽかんと開けて聞いていたわね。そりゃそうなるわよね。知りすぎだわ。私でもそう思うわ。それにしても、ぽかんと口を開けた間の抜けた顔もカッコいいとか、流石イケメンさんたちね。お父様が最初に我に返って、
「では、私が、ラムルの尻尾をひもで縛ろう。」
って言ってくれたけど、たぶん、お父様でも無理…。
「お父様、先程も言いましたけど、尻尾はすごく敏感で一瞬できゅっと縛らないといけないんです。たぶん、チャンスは一回のみかと。」

「そうか。」
「実際お父様は何でも一瞬でやられてしまいますので出来るのかもしれませんが、私はたぶん、ブロッサ嬢とピゴくんにしかできないような気がします。ピゴくんに黄金の蛇様に戻ってもらって、きゅっと巻き付いてもらわないと難しいと思います。それに、ピゴくんはブロッサ嬢の言う事しか聞かないでしょうからブロッサ嬢のお力も借りた方がいいと思います。」

「なんてことだ。たぶん先程言った瘴気を魔の森に投げ込んだのは、そのブロッサ嬢だ。チェリー男爵に頼まれて仕方なくやったのかもしれないが。」
陛下はなんてことを言うのかしら。ありえないわ。
「そんなこと彼女がするわけありません。彼女は優しい子ですわ。光魔法で平民の方々を助けていたではありませんか。」

「それはそうだが、その辺りで彼女の目撃情報もある。」
「ブロッサ嬢は家族を魔獣に殺されたと言っていたんですよね。そこにお墓があってもおかしくありませんわ。私は絶対に信じません。」
ルドとシルバーとレッドが私を見て頷いてくれた。そしてルドが、

「父上、とにかく時間がありません。僕たちでブロッサ嬢に頼んでみます。断られたらその時はまた考えてみませんか。父上にはとりあえず、大きな白パンの準備とブロッサ嬢が練習できる場所の確保をお願いします。クライム殿には魔獣の訓練用の魔道具をラムル型で作るように魔法省に指示を出してもらえませんか。なるべくマリー嬢の言った通りの細かい動きをする魔道具をお願いしたいします。」
今度はシルバーが

「念のため、第一騎士団に連絡し、マルク殿と、アーサー殿にも、一度戻って来てもらってはどうでしょう。大きな結界は必要ありませんが、白パンでおびき寄せて失敗した時にラムルに一時的に入ってもらう結界を張ってもらうのはどうでしょうか。好物は白パンでも他のものを食べないかは分かりませんし、踏まれたらひとたまりもないですから。」

ルドとシルバーの意見に私も頷いていると、シルバーが、
「マリー嬢、確認だけど、手のひらサイズになったら、金色のひもでもいいのかな?」
「その通りなんです。可愛いリボンでも金色で取れなければいいですよ。」
「リボン…。マリー嬢、よく分かりましたありがとう。」
「そう言えば、好物は白パンでしたが、雑食だったと思います。」

だって、元々は怪獣ですからね。あれ?国王陛下とお父様が少し嬉しそう?
「クライム、私たちの子供は頼もしいのぉ。」
「ええ、本当に。」
ほんの少しだけど、お父様が笑ってくれた。これでお父様が暴走する心配はもうなさそうね。

あとはブロッサ嬢のことだけど直接話せばすぐに誤解は解けるわよね。あんなに素敵な子はいないわ。だって、本当のヒロインなんですもの。安心したらまた眠くなってきちゃったわ。さっきからちっともぐっすり眠っていないんですもの。
「お父様、少し休んできてもいいでしょうか?」
「ああ、もちろんだよ。ゆっくり休んできなさい。」
「皆様、おや…。」
あら、少しだけ、タイミングを間違えちゃったわ。でも本当にこのブレスレットは便利ね。私はもちろん、転移して寝たの。ただ次に起きたのが三日後でびっくりしたわ。時間が無いのに、私だけゆっくりしてごめんなさい。

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