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63.魔女ルーサside ~お茶会に乱入します~

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なんてことだい、あんなに汚いオーラは久しぶりに見たね。容姿はブローサ様にそっくりなのに、やっぱり別人だね。人を見下している時に出る黒紫に、自分の能力に酔っている時のうぬぼれの赤紫、よほど貴族が嫌いなのか、憎悪の黒まである。だけど救いは、そのオーラの周りを優しい心根の水色がぐるりと囲っているから、誰かにしっかりと愛情を注いでもらったことはありそうだね。根っからの悪い子ではなさそうでそれが救いか。

まるで、ブローサ様に会う前の自分を見ているようでちょっとほっておけないね。あんなにルドたちが頼んでいるのに、全く練習する気はなさそうだね。貴族が嫌いなのか、ただ単に、ぶっつけ本番でできると真剣に思っているのか?両方かね。

「はぁ、軽い気持ちでブロッサとルドたちとのお茶会を見に来たけど、これは乱入させてもらうしかないか。時間が無いことだし、とにかくブロッサにやる気になってもらわないとね。」
私はそう思ってお茶会の席に近づいて行ったのだけど、迷惑そうにシルバーに、
「魔女殿、本日のお茶会にお誘いした覚えはございませんが。」
と言われて、思わず、年甲斐もなく嫌味っぽい言い方をしてしまった。

「いやね。最近見たことがないくらいすごいオーラを見たものだから、どんな子なのかどうしても話してみたくなってね。名前は?」
「私ですか?チェリー男爵家の養女になりました。ブロッサと言います。」
「私はね、魔女のルーサだよ。魔女はね、人のオーラが唯一見える存在なのさ。今のブロッサのオーラはね…。」
すべて教えてあげた。ブロッサは赤くなったり、青くなったりして聞いていたけど、最後には、

「なんであなたにそんなことを言われないといけないのよ。そうよ、私はなんだってできるわ。私にできないことなんてないの。私には努力も苦労も必要ないの。この意味分かる?この世界は私の為にあるってこと。母さんと約束したんだから、私は絶対に幸せになるの。」

色々と困った子ではあるけど、ある意味素直な子だね。上手に悪だくみできるタイプではないようだね。
「そうかい?ブロッサの世界なのかい?じゃあ、ブロッサは神様なのかい?死んだ人間も生き返らせるっていうなら、私は何も言わないよ。」
「それは無理だけど。そんなことができるなら、私だって母さんを生き返らせたかったわよ。」
母親のことは本当に大好きだったようだね…。たしか、魔獣に殺されたんだったね。

「結局、魔女でも、予言の女神様ですら、なんでもなんて出来ないんだよ。命は平等に一つ限り、ブロッサがこの世界を守るために自分の魂と引き換えに千年前の予言の女神様のようにラムルを封印してくれるならありがたいけど、してくれるのかい?」
「はぁ、する訳ないじゃない。私はこの世界で一番幸せになる為にいるのよ。」
「では、ブロッサの幸せって何だい?」

「そりゃあ、誰よりも贅沢をして、みんなからうらやましがられるくらいイケメンキャラに愛されて、最高にカッコいい彼氏と結婚することに決まっているじゃない。そうしたら母さんのお墓に報告に行くんだから、母さんのお墓の前で約束したのよ。幸せになって、母さんの愛した村の人たちにも贅沢させてあげるって。」

「そうかい、でも、ラムルを止めなきゃブロッサの母さんが愛したって言う村が一番先に被害にあうだろうね。魔の森の入り口だからね。贅沢も出来ないよ。この国は亡びるんだから。」
「なによそれ、脅しているつもり?私が手を貸さなかったらこの国は亡びるのよ。」
「そうだね。ブロッサのいう通りだよ。ブロッサは唯一この国を救える力を持っているんだからね。ねぇブロッサ、初めての努力って言うのをしてみないかい。」

「私は優秀だってなんで分からないの?手を貸さないって言ってないじゃない。努力や練習なんてしなくても大丈夫なんだってば。」
「ブロッサの母さんもそう言うかね?」
母さんは努力は裏切らないっていつも言っていたけど。母さんのこと言われるとむかつく。
「母さんのこと知らない癖に言わないで、母さんは努力は裏切らないって言っていたけど、関係ないでしょ。」
「そうだね、悪かったよ。それじゃあ、ブロッサがラムルを見ても同じことを言えたら信じてあげるよ。」
「分かったわよ、ルーサは母さん並みに口うるさいわね。やればいいんでしょ、やれば!」

「ふふふ…。」
「なによ。急に笑い出して、王太子殿下まで、私を馬鹿にしているの?」
「違うよ。早速練習をお願いするよ。俺のことはルドと呼んでくれ。本来の俺はこんな感じだ。俺も性格はいい方じゃないと思っている。人を信じるより疑ってかかるし、俺も今まで努力なんてしたことないな。何でも出来ちまったからな。たぶん今回が初めてだ。」

「はぁ?ルドがこんな性格って聞いてないわよ。バグってるの?大体魔女って何よ。ラムルも聞いてないし、バージョンが違うの?」
「何ぶつぶつ言っているんだい?さぁお茶会は終わりだよ。とっとと、魔法の練習場に行くよ。」
嫌々だけど、なんとかブロッサもついて来たね。少しは現実を知るといいよ。

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