ガチ・女神転生――顔だけ強面な男が女神に転生。堕女神に異世界の管理を押し付けられました!

昼行灯

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無人島漂流編

魔法 1

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 翌朝。

 天馬は土で汚れた体をむくりと起こし、自分の体をしげしげと観察した。

 デジャブである。

「……生きてる」

 あれだけの高さから落ちたにも関わらず、しかし天馬の体には目立った外傷などはなく、それどころか、足の裏や体中に負っていた無数の生傷まで綺麗に治っていた。

「なんだかなぁ……あ、そうだ! タブレット!」

 先日、天馬は落下する途中で、『天馬さん、このタブレットが壊れると、この先の女神活動に多大な支障がありますから、死んでも守りきって下さいね』とディーに言われ、色々と突っ込みたいものを我慢して胸の中にタブレットを抱えると、ふっと感触が消えた。

 天馬は慌てて自分の手の中を見たが、タブレットはまた、天馬の胸の間に消えただけだった。

 そうとは知らず、体中をまさぐり、周囲に目を向け、落下するまでの僅かな時間でタブレットを探し続けた天馬だったが、ついにタイムアップ。

 木に引っかかるということもなく、天馬の身体は地面に叩きつけられたのであった。

 地面に着地した天馬は、それは見るも無残な状態になってしまった。手足はあらぬ方向に折れ曲がり、体の中から骨が外にこんにちはしていた。常人なら間違いなく顔を背けてしまうほどグロテスクな姿。

 しかし、天馬の身体はその状態から少しずつ、ごきごき、ぐちゅぐちゅ、と嫌な音をさせながら、元の状態に戻っていった。

 まる1日という時間を掛けて、天馬の身体は完全に再生したのである。

「探さないと……でも、体中が痛いな。昨日もこんな感じだったっけ……」

 再生に伴い、天馬の体にはかなりの負荷が掛かったのだ。全身を覆う筋肉痛のようなものは、それが原因である。

「……でも、これで俺が死なない体である事は、はっきりしたな」

 意図せず、ディーが要望してきた事を実践してしまったわけだが、結果からすれば、天馬は確かに【不死身】であることが実証されたわけあけである。

『おはようございます、天馬さん。体の調子はいかがですか?』

 すると、昨日と同様に、またしても唐突にディーの声が聞こえてきた。

 びくりと天馬は体を震わせるも、今度は取り乱したりすることなく、音の出所を探る。

『天馬さん? 聞こえていますか?』

 そして、二度目のディーの声で、音の発生源が自分の谷間からであることが判明。

 ためしに手を突っ込んでみると、硬い感触に触れる。そのまま取り出してみれば、やはりそこにタブレットはあった。

 なくなったわけではなかったことに、ほっと安堵しつつも、どういう原理になっているのか、天馬は首を傾げた。

 とはいえ、いつまでもディーを無視してはいられないので、とりあえず天馬は視線をタブレットに落とした。

「おはようございます、ディーさん。最悪の目覚めですよ」

 全身を苛む痛みは継続中。昨日と比べればまだマシではあるが、それでもまだ動くにはきつい。

『そうですか。ですが昨日の事で、天馬さんの身体が不死である事が分かりました。調べてみて色々と判明したこともありますから、ひとまず聞いて下さい』

 ディーいわく。天馬の身体は、外部からの影響を全く受けないわけではない、ということが判明。強い衝撃を受ければ骨は砕けるし、刃物で刺されれば肉を抉られ、毒が体内に入れればその効果をもろに受けてしまう。

 そして絶命する一歩手前まで来ると、身体が再生を始めるというプロセスになっている。
 身体が再生される際に、一部の魔力を使用することによって、体内の栄養状態も万全になる。

 しかし、再生が始まるまでは、傷が急激に治るということもなく、栄養失調時はそれが改善されることもない。

 再生に掛かる時間も、体の状態によってまちまち。一定というわけではないようだ。

『――そんわけですので、今後は色々と注意してくださいね。もしこの世界の住人に、天馬さんが不死の存在であるこることがばれると、大変なことになりますから。具体的には、人族の実験体にされたりとか、魔物……主にゴブリンやオークに捕まって、一生子供を生み続ける存在になるとか、ろくな目に遭いませんので』
「うわぁ……」

 生きたまま体を開かれて内臓を弄くられたり、緑色の肌をした小さい化け物に中も外もぐっちゃぐっちゃのどろどろにされる場面をイメージしてしまい、天馬は露骨に顔を顰めた。

「気を付けます」
『そうしてください。ああそれと、昨日は伝え忘れていましたが、天馬さんの胸の間には、【アイテムボックス】となる四次元空間が存在します。時間経過による物質の劣化もない、時間が停止した空間なので、うまく活用して下さい』

「そこはせめて適当な空間に手を突っ込むんじゃダメだったんですかね?」というツッコミが今にも溢れそうになる天馬だったが、昨日のことで、ディーに対して胸の話はタブーであることは分かっている。

 故に、何も言わずに黙っていることにした。

『最後に、これを……』

 と、ディーが口にすると、天馬の目の前に【靴】が出現した。革を縫合して作られた、非常に簡素な物だ。

『先日の空に転移させてしまったお詫びです。あまり大きな支援を『今は』してさしえげることができませんので、今回はそれでご容赦ください』
「……今は?」
『ええ、今は……ですが、その疑問については、現状お答えする必要はないでしょう。まずはそちらでの生活に慣れて、実際に活動を始めてから、こちらからできる支援活動についてお教えします。それと、この通信回線はこれからしばらくの間は使えなくなりますので、ご留意を。あと、昨日も言いましたが、このタブレットはとても重要なものなので、くれぐれもなくしたり、壊さないように注意して下さいね。では天馬さん、今日のところはこれで失礼します。私も別の業務がありますので……』
「は? いや、ちょっと待って!」
『頑張ってください』

 ブツン。
 天馬の静止も虚しく、タブレットの画面からディーが消え、代わりに普通のデスクトップ画面に切り替わった。

「頑張れって、ここ、無人島なんだけど……」

 ひともいないこんな絶海の孤島で、いったい何ができるのか。
 いやそもそも、文明が存在しないここでは、天馬は自分の生活基盤もなく、全て0からのスタートなのだ。
 衣食住。衣類は今着ているものがはあるが、食と住は何もない。完全に手探り状態だ。
 しかし、唯一の服もまた、

「……取り合えず、服を洗おう」

 天馬の汗や土でドロドロになっており、正直、少し臭うくらいだ。

「女の子は臭くない……誰だ、そんな無責任なこと言ったのは」

 女性だって、汚れりゃ多少は臭う。天馬は、女性に抱く幻想を、自分自身でブレイクしながら、貰った靴を履いた。
 天馬は岩山の上から、泉が見えたことを思い出し、記憶を頼りに歩き出す。

「あ、やっぱり靴あると全然違う……」

 文明の利器とまではいかずとも、やはり靴というのは偉大な発明であると、天馬はつくづく思った。
 しかし、それと同時に、「あの高さから落とされて靴一つがお詫びの品ってのは、色々と間違ってるだろ……」という思いを抱かずにはいられなかった。



「おお~っ、水だぁ!」

 藪を掻き分けた先に、天馬は泉を見付けた。
 ムシムシとする森に中にあって、ここだけが僅かに空気が冷たく感じられる。
 近付いてみると、ハッキリとした気温の差があることが分かった。

 天馬は泉の縁に膝を着くと、手を入れてみた。

「冷たいなぁ……気持ちいい……」

 火照った体には心地よい水の温度。
 汚れた手を水で洗い流すと、そっと手で掬い上げて、口に運ぶ。

「はぁ……おいしい……」

 水をここまで美味しく感じたのは、生まれて初めてではないだろうかというほど、天馬は恍惚とした表情を浮かべた。

「……そんなに深い泉じゃなそうだし、中に入っても大丈夫かな……?」

 奥を見ても、その透明度のお陰で水底まではっきりと見える。
 水深は深くても天馬の腰まであるかないか位だ。
 水底からは、ぷくぷくと泡が立ち上っている。
 ここは、地下水が地表に溢れることでできた泉なのだろう。

「服を洗いながら、水浴びでもするかな……さっぱりしたいし…………よし」

 天馬はいそいそと靴を脱ぎ、衣服の裾を腹部まで持ち上げたところで……止まった。

「あれ? このまま服を脱いで、これを洗ったりしたら、俺、他に着るもの、ないじゃん……」

 持ち上げていた服を戻し、顎に手を添えて考える。
 服は洗いたい。着た切り雀でいてもいいが、臭いのは嫌だ。故に、洗いたい。
 しかし、これ以外に着る物などない。
 いまのところ、野生の獣には遭遇こそしていないが、森の中で女性が1人、裸になっているというのは、如何なものであろうか……。
 マイナスイオンを全身に浴びて森林浴、と言えばそれっぽいが、服が乾くまではずっと裸というのは、やはり考えてしまう。

「あ……魔法。そう言えば、世界に浸透しきっていないだけで、使えるって話だよな……」

 それなら、この状況もどうにかなるかもしれない、と一先ず水浴びは後にして、天馬は魔法に手探りで挑戦してみることにした。

「えと、確かディーさんは、イメージの明確さが魔法の発動には重要って言ってたけど、どういことだろ?」

 天馬は、試しに手の中に、目の前にある泉が湛えるような水が、掌から沸き出してくるイメージを浮かべた。
 すると、

「っ?! お、おおっ……!」

 開いていた掌に、じんわりと冷たい物が溢れてくる。
 それは徐々に勢いを増し、水道から水が流れるような強さで、数秒間の間、天馬の手から溢れ続けた。

「すごい……これが、魔法」

 濡れた掌を見つめて、天馬は感嘆の呟きを漏らした。

「これなら、どうにかなるかな……でも、その前に、もう少し練習だな……」

 その一言から、天馬の魔法を使う練習が始まった。

 漠然と、空気中の水分が球体状に集まるイメージを作り出し、空中で制止させる。大きさは大体20センチほど
 しかし、水球を作り出せたことで笑みを浮かべた瞬間、水は纏まりがなくなり、爆ぜて天馬をびしょびしょにした。

「うう……」

 水浴びの前に、全身が水浸しである。
 だが、天馬は頭を振って水気を飛ばし、原因を分析する。

「雑念? 発動中にほんのちょっと集中が乱れたから、爆発したのか……? なら、今度はもっと集中して……」

 再度、天馬は水球を生み出し、感情の揺れを抑え込み、魔法を維持する。

「……飛ばしてみるか……えいっ」

 天馬は水球に手をかざし、後ろから前に押し出すイメージを加えて、前方に打ち出した。
 水球はバシャッと木の幹にぶつかって拡散、表面の皮に小さな亀裂を生じさせる程の威力に、ひとに向けて撃ったらダメだな、と天馬は思った。
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