お父さんですけど、頭に『義理の』って付くんだから別に恋しても結婚しても許されるもんねっ!

昼行灯

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アイリの思惑

 お父さんと混浴した。

 今も、同じ湯船に浸かって、私はお父さんの脚の間に挟まれながら、その立派な胸板に体を預けている。

「はぁ~、一仕事終えたあとの風呂は、格別だ~」

 なんて、お父さんはおじさんみたいなことを言っている。まぁ、周りから見れば、お父さんもそろそろ立派なおじさんになる歳だろう。
 
 でも、その体つきはとても逞しい。
 私が体を預けている胸板だって、とても硬くて分厚くて、すごく男らしい。
 体のあちこちに見える多くの傷跡は、お父さんが戦士である証だ。
 私にはそれが誇らしい。
 こんな人が、私のお父さんであることがとても……とても誇らしい。

 でもでも、さっきのはいただけないと思う。

 ……あれは、完全にエッチな流れだったじゃない!

 お父さんだって、一瞬とはいえ、男の人の顔になりかけていた。
 私も、お父さんのものを受け入れるつもりで、頭も体も熱くなって……もうあれは、完全に一線を越えるであろう雰囲気だったはず!

 それなのに……それなのに~~~~っ!

「いやぁ、それにしても、アイリも大きくなったなぁ。昔は俺が抱きかかえていないと、お風呂の中に入ることもできなかったくらいなのにな。あっははは」

 これである。完全に娘を見る表情に切り替わってしまっているんです!
 さっきまではちょっと妖しい桃色な空気だったのに、今では黄色とかオレンジとか、家族団らん、みたいな、暖かい蛍光色な雰囲気なんですよ?!

 それは、窓の中に差し込む夕焼けも後押ししてか、より一層そんな空気が浴室を包み込む。

 もしこれが先ほどまでの妖しく淫靡な状態だったなら、また違った空間になったのであろうが、今では見る影もない。

「本当に、大きくなったなぁ……」

 お父さんに頭を優しく撫でられる。
 それだけで私の体温は、お風呂に入っているのとは別に熱くなる。
 それは不快ではなく、むしろ心地いいくらいなのだけど。

「ぶくぶくぶく……」

 私はお湯に口をつけて、お父さんへの不平不満を、泡として吐き出す。

 こうして温かくも力強く、私を包み込んでくれる大きなお父さんは大好きだ。

 でも、私はこの大きな体に抱かれたかった。愛されたかった。初めてを散らしてほしかった。めちゃくちゃにされたかった! 孕ませてほしかった!!

「ぶくぶくぶくぶくぶくぶく~~~~~っ!!」
「ははは……何をしてるんだアイリ」

 お父さんの鈍感! 朴念仁! 唐変木! 色男! あ、最後のは悪口じゃないや……って、そんなことはどうでもいいのっ!

 とにもかくにも、私はお父さんと一緒にお風呂に入ることはできた。でも、それだけではダメなのだ。
 お父さんが私を愛してくれているという事実は、言質を取っている。(実際はただの家族愛なのだが)

 私たちは両思い。それは揺るがない事実。でも、お父さんはまだ私を娘としても見ている節がある。(いえいえ、娘としか見ていませんから)

 それはつまり、まだ私は完全には女として見られていないとうこと。(さっきは危なかった)

 そこで、今日のお風呂を切っ掛けにして、私に女を感じてもらいたかった。
 あわよくば、そのままお父さんと一線を越えてしまうことも視野に入れていたのだが、計画は失敗。

 お父さんは私のおっぱいを直に触っても、平然としていた。むしろ性感帯であるおっぱいに触れられている私だけが、勝手に感じて盛り上がっていたような気さえする。

 また触ってくれたら、もっと敏感になるかなぁ……って、今はそういう話じゃないの!

 また触って欲しいのは事実だけど、それよりもこれからのことを考えなくてはいけない。

 結局、前はおっぱい以外触ってもらってない。
 お腹から下は、全部自分で処理してしまった。
 その間にお父さんは自分で体を洗ってしまったから、私がお父さんの体に触れる機会は失われてしまったのも大きい失敗だ。

 色々とエロエロと試行錯誤していた計画は破綻。
 悔しくて涙さえ出てきそうである。

 でも、まだ終わったわけじゃない!

 そもそも私とお父さんは一つ屋根の下に暮らしているのだ。
 これからだって、お父さんをその気にさせる機会は巡ってくるはず。

 ……そうよ。まだ最初の一回が失敗しただけ。これからいくらだって、お父さんと結ばれるチャンスはきっとある。
 焦っちゃダメ。最初のエッチは大事だ。とても大事だ。

 それで今後の夫婦生活が円滑になるかが決まる、かもしれないのだ。

 だから、今さら強引に攻めても仕方ない。
 失敗は目に見えている。
 最悪、お父さんの気分を害することになるだろう。
 それだけは絶対に避けなくては。

 それなら、終わってしまったことにくよくよする時間は終わりにして、今この瞬間。
 お父さんと一緒に混浴している状況を楽しもう。

「お、どうした、アイリ?」
「うん、ちょっと。えへへ」

 私は体を捻ってお父さんの胸板に頬が当たるように姿勢を変える。

「どうしたどうした、甘えん坊め……」

 お父さんは、そんなこと口にしつつも、私の頭を優しく抱えるようにして、撫でてくれる。
 それはとても気持ちよくて、私はつい、お風呂の中で欠伸をしてしまう。

「そろそろ上がろう。このままだと俺ものぼせそうだし、お前も寝落ちしそうだからな」
「はい、お父さん」

 私とお父さんは、一緒に湯船から出る。
 するとお父さんはお風呂の底にある栓を抜いて、お湯を排水した。

 その瞬間、お父さんの背中が見えてしまう。

 すると、私の口から小さく声が出た。

「あ……」

 そこには、肩から脇腹にかけてできた、一際大きな傷があった。
 それを目にした瞬間、私の胸にはチクリと、小さな痛みが走る。

 さっきまでの、悔しさと幸せをない交ぜにした感情は鳴りを潜めてしまい、代わりに胸を締めたのは、過去の愚かな自分への憤りと、後悔であった……


 ・・・・・・


 翌朝。

 私は重度の筋肉痛を全身に味わい、ベッドから起きることができなくなってしまって……

 しかも、お父さんが急ぎ外出せねばならない、ということで、私は一時的に、リゼおば様の家に預けられることになったのだった。
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