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はじまりの夏
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目の前でキョウが嬉しそうにスキップしながら歩いている。
よほど今日のエスコートの話が嬉しかったのだろう。ノルズくんに半ば強制的に約束させたとはいえ、キョウはきっとノルズくんのことが好きなのだろう。
『二人の秘密だね!』
そう言って嬉しそうに笑っていた彼の顔が、脳裏にちらつく。
かと言って自分が誘ってもらえるとは思っていなかったし、誘ってくれとも言うつもりはなかった。
それなのに。
あの日の山の中腹で約束した二人の約束が、『二人きりの約束』ではなくなるかもしれないということがなぜだか気になって仕方なかった。
「ねぇ、オード! 当日はどんな服が良いと思う? やっぱり可愛い系かな? ノルズが可愛い顔してるから、綺麗系にまとめちゃったら二人で浮いちゃうもんね!」
「…………」
「……オード?」
「へ? あ、ごめん、ちょっと考え事してて!」
「あ、いいよいいよ! ちゃんと自分で決めるから! でも相談にはのってね、オード!」
「あ、うん。もちろん!」
夏のダンスパーティ。
ノルズくんは知っているのか知らないけれど、これにはきちんと意味がある。
収穫の神に普段からの祈りを捧げ、祝福を授かる日なのだ。
ノルズくんは牧場をしているからきっと特別な意味を持って、接しなければいけない日。
それを教えないまま、キョウと踊らせてしまっても良いのかな?
そんなことをつらつらと考えていると、キョウとの分かれ道へと差し掛かる。
「んじゃ、またねー!」
上機嫌に手を降って雑貨屋までの道を歩いていくキョウの後ろ姿を見ていると、何かがどろりと胸の奥から零れ落ちる。
私は恋愛はしない。
そう決めてもう何年も立つのに、この感情はなんだろうか。
ノルズくんと一緒にいると湧き上がるこの感情の正体は、何なんだろうか?
「……ううん」
頭を振って、自分自身の心に蓋をして。
そのまま私は、自宅への道を急ぐのであった。
よほど今日のエスコートの話が嬉しかったのだろう。ノルズくんに半ば強制的に約束させたとはいえ、キョウはきっとノルズくんのことが好きなのだろう。
『二人の秘密だね!』
そう言って嬉しそうに笑っていた彼の顔が、脳裏にちらつく。
かと言って自分が誘ってもらえるとは思っていなかったし、誘ってくれとも言うつもりはなかった。
それなのに。
あの日の山の中腹で約束した二人の約束が、『二人きりの約束』ではなくなるかもしれないということがなぜだか気になって仕方なかった。
「ねぇ、オード! 当日はどんな服が良いと思う? やっぱり可愛い系かな? ノルズが可愛い顔してるから、綺麗系にまとめちゃったら二人で浮いちゃうもんね!」
「…………」
「……オード?」
「へ? あ、ごめん、ちょっと考え事してて!」
「あ、いいよいいよ! ちゃんと自分で決めるから! でも相談にはのってね、オード!」
「あ、うん。もちろん!」
夏のダンスパーティ。
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ノルズくんは牧場をしているからきっと特別な意味を持って、接しなければいけない日。
それを教えないまま、キョウと踊らせてしまっても良いのかな?
そんなことをつらつらと考えていると、キョウとの分かれ道へと差し掛かる。
「んじゃ、またねー!」
上機嫌に手を降って雑貨屋までの道を歩いていくキョウの後ろ姿を見ていると、何かがどろりと胸の奥から零れ落ちる。
私は恋愛はしない。
そう決めてもう何年も立つのに、この感情はなんだろうか。
ノルズくんと一緒にいると湧き上がるこの感情の正体は、何なんだろうか?
「……ううん」
頭を振って、自分自身の心に蓋をして。
そのまま私は、自宅への道を急ぐのであった。
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