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はじまりの夏
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「おい、ノルズ。生きてるかー?」
グロウのその声にハッと我に返って、道端で蹲っていたところをやっと立ち上がる。
「……グロウ」
「おう。今帰ったぜ。というか、お前が何やってるんだ? ここに居るってことは、キョウとオードのことはもうとっくに送り終わっただろうに。それにしても今日のオードへの大告白は凄かったな。あれ、もう町中で噂になってるぜ?」
「…………」
「……おい、なんだ? どうしたんだ?」
「どうにも、できなかった」
「は?」
「どうにもできなかったんだよぉ……」
そうしてそのまま、グロウに寄りかかって僕は涙を流す。
そう、僕は泣きたかったんだ。
情けなくてもいい。格好つける相手なんてもうとうにいないんだから、それでいい。
「お、おいおい。俺、男に抱き疲れる趣味はないんだが?」
そう言いつつも、あやすように愚弄は僕の背中をとんとんと叩いてくれて。
それがまた涙腺に来て、僕は大泣きする。
道端。
しかも男同士で抱き合って泣いている姿ってどうなんだろうと冷静な部分が思うのだけれども、それよりも辛くて悲しくて、それどころじゃなかった。
『キョウのこと大事にしてやってね!』
その言葉が頭の中でずっと呼応している。
違うよ、オードちゃん。
僕が大事にしたいのは君であって、キョウちゃんじゃない。
決して、キョウちゃんのことじゃないんだよ。
「えーっと……とりあえず俺の部屋に来るか?」
その言葉に頭を振って、否定する。
今はどうしたって、オードちゃんに会える気がしなかった。
「あー……じゃあ広場、はまだ多分片付け中だし……よし、海だ! 海に行こう!」
海。
そこはキョウちゃんとの思い出の場所だ。
今はキョウちゃんとの事も考えたくなくて、頭を振る。
「おいおい、じゃああどこに行けって……あー……今別れてきたばかりだけどあそこにするか。お前の家よりは近いし」
何かを決めたらしいグロウは、そういって僕の腕を取って歩き出す。
「……どこにいくの?」
「図書館。あそこならマリンが貸してくれるだろうし、話くらい聞けるだろう」
「でも、マリンさん……」
「二人っきりにして貰うから! って、ああ! なんかキモイな、これ!」
そう悪態をつきながらも、ズンズンと進んでいく。
そうして辿り着いた図書館でマリンさんと何事かを話すと、本当に二人きりで話すこととなった。
「で、泣いてばっかでこっちはさっぱりわけがわからんのだが? どうにもできなかったって何の話だよ?」
「……オードちゃんから、キョウちゃんを大事にしてやってねって言われた」
「あー……まあお前は元から鈍いからな。キョウの気持ち、気づいてやれてなかったんだろ」
「グロウは知ってたの!?」
「普通にエスコートしろなんて言ったらなんとなくは。にしてもそうか。別にお前がオードちゃんに振られたってわけじゃないんだな?」
「振られたも一緒じゃないか……。好きな子に、他の子を大事にしてやれだなんて……」
「じゃあ聞くが、お前、キョウと付き合うのか?」
「まさか!」
「じゃあ今までの状況と何が違うんだ? オードの気持ちがわかったってことくらいか? だったらむしろいいことじゃないか。今まであいつが何考えてるのかわからなかったんだろ? わかっただけで御の字だぜ」
「でもじゃあ、どうしろっていうんだよ!」
「じゃあ逆に聞くが、お前はどうしたい? このまま諦めたいのか?」
「それは! ……それは」
諦めたくなんて、あるはずがないじゃないか。
好きで、好きで、大好きで。
一目ぼれだったんだ。
運命の人はあの子しかいないって、そう思ったんだ。
「お前はあの子に何をした? 告白したか? 明確に。ここでの風習だと確かにエスコートを申し込むって言うのは告白と同義だけども、お前はまだここに来て一月だ。だから二人もの人間をエスコートできたんだろうが。そしてそれをみんなは面白おかしく語ってる。まあ正直、可能性はゼロじゃないな」
「ゼロじゃない?」
「今この町では、お前がキョウとオードで取り合いされてると思われてるんだぜ? 面白いだろ」
「いや、それって何も面白くない気が……」
「しかもお前は二人のどちらともラストダンスを踊ってない。つまり決着間持ち越しだって思われてるんだ。キョウは今からおそらく積極的にお前に来るぞ? あいつはそういうやつだ。だから町中ではキョウに軍配が上がると思われてる。言っておくが、オードはこない。絶対にこない。だったら、お前が行くしかないだろう?」
そこまで言ってから、がしりとグロウに両肩をつかまれる。
「お前がするのは、オードに気持ちを伝えることだ。それ以上もそれ以外もない。今までと、何が変わったって言うんだ?」
そう、何も変わってないんだ。
僕がオードちゃんを好きだって気持ちは。
伝えたいって、そう思うんだ。
「あとお前、明日から宿屋に泊まれ」
「……はい?」
「家の改築工事をする。だからお前は家がなくなる。だから宿屋に泊まれ」
「ちょ、ちょっと待って! それ初耳だよ!?」
「大丈夫、親父さんには話は通してあるから」
「僕にまず話を通してよ!」
思わずガシリとグロウの肩をつかみ返して揺さぶれば、グロウははっはっはっと笑うばかり。
今日こんなことがあったって言うのに、何だって明日からだって言うんだよぉ!
グロウのその声にハッと我に返って、道端で蹲っていたところをやっと立ち上がる。
「……グロウ」
「おう。今帰ったぜ。というか、お前が何やってるんだ? ここに居るってことは、キョウとオードのことはもうとっくに送り終わっただろうに。それにしても今日のオードへの大告白は凄かったな。あれ、もう町中で噂になってるぜ?」
「…………」
「……おい、なんだ? どうしたんだ?」
「どうにも、できなかった」
「は?」
「どうにもできなかったんだよぉ……」
そうしてそのまま、グロウに寄りかかって僕は涙を流す。
そう、僕は泣きたかったんだ。
情けなくてもいい。格好つける相手なんてもうとうにいないんだから、それでいい。
「お、おいおい。俺、男に抱き疲れる趣味はないんだが?」
そう言いつつも、あやすように愚弄は僕の背中をとんとんと叩いてくれて。
それがまた涙腺に来て、僕は大泣きする。
道端。
しかも男同士で抱き合って泣いている姿ってどうなんだろうと冷静な部分が思うのだけれども、それよりも辛くて悲しくて、それどころじゃなかった。
『キョウのこと大事にしてやってね!』
その言葉が頭の中でずっと呼応している。
違うよ、オードちゃん。
僕が大事にしたいのは君であって、キョウちゃんじゃない。
決して、キョウちゃんのことじゃないんだよ。
「えーっと……とりあえず俺の部屋に来るか?」
その言葉に頭を振って、否定する。
今はどうしたって、オードちゃんに会える気がしなかった。
「あー……じゃあ広場、はまだ多分片付け中だし……よし、海だ! 海に行こう!」
海。
そこはキョウちゃんとの思い出の場所だ。
今はキョウちゃんとの事も考えたくなくて、頭を振る。
「おいおい、じゃああどこに行けって……あー……今別れてきたばかりだけどあそこにするか。お前の家よりは近いし」
何かを決めたらしいグロウは、そういって僕の腕を取って歩き出す。
「……どこにいくの?」
「図書館。あそこならマリンが貸してくれるだろうし、話くらい聞けるだろう」
「でも、マリンさん……」
「二人っきりにして貰うから! って、ああ! なんかキモイな、これ!」
そう悪態をつきながらも、ズンズンと進んでいく。
そうして辿り着いた図書館でマリンさんと何事かを話すと、本当に二人きりで話すこととなった。
「で、泣いてばっかでこっちはさっぱりわけがわからんのだが? どうにもできなかったって何の話だよ?」
「……オードちゃんから、キョウちゃんを大事にしてやってねって言われた」
「あー……まあお前は元から鈍いからな。キョウの気持ち、気づいてやれてなかったんだろ」
「グロウは知ってたの!?」
「普通にエスコートしろなんて言ったらなんとなくは。にしてもそうか。別にお前がオードちゃんに振られたってわけじゃないんだな?」
「振られたも一緒じゃないか……。好きな子に、他の子を大事にしてやれだなんて……」
「じゃあ聞くが、お前、キョウと付き合うのか?」
「まさか!」
「じゃあ今までの状況と何が違うんだ? オードの気持ちがわかったってことくらいか? だったらむしろいいことじゃないか。今まであいつが何考えてるのかわからなかったんだろ? わかっただけで御の字だぜ」
「でもじゃあ、どうしろっていうんだよ!」
「じゃあ逆に聞くが、お前はどうしたい? このまま諦めたいのか?」
「それは! ……それは」
諦めたくなんて、あるはずがないじゃないか。
好きで、好きで、大好きで。
一目ぼれだったんだ。
運命の人はあの子しかいないって、そう思ったんだ。
「お前はあの子に何をした? 告白したか? 明確に。ここでの風習だと確かにエスコートを申し込むって言うのは告白と同義だけども、お前はまだここに来て一月だ。だから二人もの人間をエスコートできたんだろうが。そしてそれをみんなは面白おかしく語ってる。まあ正直、可能性はゼロじゃないな」
「ゼロじゃない?」
「今この町では、お前がキョウとオードで取り合いされてると思われてるんだぜ? 面白いだろ」
「いや、それって何も面白くない気が……」
「しかもお前は二人のどちらともラストダンスを踊ってない。つまり決着間持ち越しだって思われてるんだ。キョウは今からおそらく積極的にお前に来るぞ? あいつはそういうやつだ。だから町中ではキョウに軍配が上がると思われてる。言っておくが、オードはこない。絶対にこない。だったら、お前が行くしかないだろう?」
そこまで言ってから、がしりとグロウに両肩をつかまれる。
「お前がするのは、オードに気持ちを伝えることだ。それ以上もそれ以外もない。今までと、何が変わったって言うんだ?」
そう、何も変わってないんだ。
僕がオードちゃんを好きだって気持ちは。
伝えたいって、そう思うんだ。
「あとお前、明日から宿屋に泊まれ」
「……はい?」
「家の改築工事をする。だからお前は家がなくなる。だから宿屋に泊まれ」
「ちょ、ちょっと待って! それ初耳だよ!?」
「大丈夫、親父さんには話は通してあるから」
「僕にまず話を通してよ!」
思わずガシリとグロウの肩をつかみ返して揺さぶれば、グロウははっはっはっと笑うばかり。
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