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はじまりの夏
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「今日からお世話になります!」
仕事を終えた僕は、酒場に来ていた。
そこでテッドさんに挨拶をして、現在オードちゃんにも同じ挨拶中だ。
「そんなにかしこまらない、かしこまらないー。あ、必要なものがあったら何でも言ってね。大抵のものは揃うと思うけど、もし揃わなかったらキョウの家にお願いするから」
「りょ、了解です」
キョウという言葉に無意識にビクリと身体が震えたけれども、恐れることは何もない。
ただ問題なのは、僕に対人スキルがほとんどないってことだけだ。
特に、恋愛スキル的なのとか。
「んじゃ、とりあえず食事かな? 食事は酒場のほうで取ってもらうことになるんだ。朝と夜はついてるけど、昼は……って、昼はお野菜があるから大丈夫かな? それとも別料金になるけど、お弁当にする?」
「お弁当?」
「うん。うち、グロウみたいな人向けにお弁当もやってるんだ。そっちは私担当だから、味の保障はできないんだけどね」
へへへと頭をかいてそういうオードちゃん。
それがかわいいなぁと思いつつも、今はそれ以上に違うことに思考がいく。
オードちゃんの手作り弁当。オードちゃんの手作り弁当が食べられるのか……!
「お、お昼もお願いしようかな……」
その欲だけに突き動かされて、口も思わずそう動く。
そうすると一瞬少し驚いた顔をしたオードちゃんだったが、快くオーケーしてくれた。
「じゃあお昼は私が農場に届けることにしよっか。その方がノルズくんも助かるだろうし」
「え、いいの!?」
「いいよー。今までは一人分だったからグロウに朝食の余り物をつめてたんだけど、二人分ってなるとそうもいかないしね」
「じゃ、じゃあ是非それで! あ、でも朝に山に行くのは……」
「あ、そのことなんだけどね。二人で一緒に行こうよ。農場に一回よって卵
を採って、ついでにその時にいつもの卵の納品をしてもらっちゃえば、手間も減るし」
「なるほど、そうしよっか。じゃあ一緒に朝待ち合わせて出るようにしようね」
「うん、そうしよ! お父さんは私が山に毎日行ってるの知ってるし、ノルズくんは農場で早めに出るの知ってるし、多分疑わないと思うよ」
そうして、明日からの予定が決まるのだった。
次の日の朝、約束通りにオードちゃんと待ち合わせて山に向かって歩き出す。
そうすると、丁度海に向かって歩いているキョウちゃんと出会った。
「なになにー? 早朝デートですか、お二人さん」
「ち、違うよ! 今から私はいつもの散歩! ノルズくんは農場に行くんだよ!」
「あ、そっか。ノルズ今酒場に宿取ってるんだっけ。そういえばオードからそんな話聞いたね」
「もう! だから変な誤解はしないでよね!」
「はいはーい! キョウちゃんはおとなしく朝の海に素材採りに行ってきますよー」
キョウちゃんにはあのエスコートの日から初めて会ったけれども、いつも通りで。
グロウが気をつけろって行ってたけれども、何も気をつける必要なんて……。
「ノルズも一緒に行く? ちょっとだけ私とデートしない?」
なくもなかった!
「あ、あのさ! エスコートの件なんだけど!」
「うん?」
「ぼ、僕あれが恋人同士が行くものとか、そうすることだって知らなくて! だからその、キョウちゃんには悪いんだけど――」
「ストーップ! 違う違う、そんなことわかってるから。もともとお父さんの代わりにって私言ったでしょう? だから気にする必要なし。もうラストダンスの清算も済んだし、エスコート交代の清算っていうか理由もわかったしね」
そう言ってウィンクをしてみせる。
「オードもオードでなんか勘違いしてたみたいだけど、違うから。二人揃って真面目だなー。おまつりくらい楽しまなきゃって気持ちくらいでいなきゃ、だめだよ?」
じゃあねーとそのまま海の方へと行ってしまうキョウの後姿を二人でポカーンと眺める。
「私たち、考えすぎだった?」
「……なんか、そうだったみたいだね?」
そう考えるとなんだか笑えてきて、二人でくすくす笑い出す。
「それじゃ、いこっか」
「うん」
そう言って二人で農場までの道を歩き出す。
さて、ここで困ったことがある。
キョウちゃんのおかげで僕は今これが早朝デートなのではないかと気づいてしまったのだ!
言われてみれば二人きり。
いつも通りといえばいつも通りなのに、意識してしまうともうだめで。
何を話していいのかわからなくて、とたんに黙り込んでしまう。
オードちゃんといえば、鼻歌交じりにルンルンと早朝を満喫しているだけで、特に意識をしている風な様子もない。
喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。でも僕がデートだと思えばデートなんだから、これはデートなんじゃないのか!?
「あ、そういえば」
「はいぃ!」
「え!? ごめん、そんなに驚かせちゃった!?」
「あ、いや。ちょっと考え事してて……こちらこそごめんね?」
「あ、ううん。そんな時に話しかけちゃってごめんね? 大丈夫?」
「大丈夫大丈夫! で、どうしたの?」
「こんなにゆっくりで大丈夫? 確か卵もとるのに時間かかるんだよね?」
「あ、うん。そこは大丈夫。うちは自動で卵が採れる様に、グロウのやつが細工してくれてるんだ」
「へー……。グロウにも特技ってあったんだねぇ……」
「ああ見えてグロウはすごいよ? 畑の水撒きも自動で出来るようにって細工してくれて、おかげで山に登る時間が出来たんだ!」
「じゃあ、こうして私が毎日温泉卵をもらえるのもグロウのおかげなのかー」
「そうそう!グロウのおかげで……」
って、グロウの株を爆上げしてどうするんだよ僕ぅ!
仕事を終えた僕は、酒場に来ていた。
そこでテッドさんに挨拶をして、現在オードちゃんにも同じ挨拶中だ。
「そんなにかしこまらない、かしこまらないー。あ、必要なものがあったら何でも言ってね。大抵のものは揃うと思うけど、もし揃わなかったらキョウの家にお願いするから」
「りょ、了解です」
キョウという言葉に無意識にビクリと身体が震えたけれども、恐れることは何もない。
ただ問題なのは、僕に対人スキルがほとんどないってことだけだ。
特に、恋愛スキル的なのとか。
「んじゃ、とりあえず食事かな? 食事は酒場のほうで取ってもらうことになるんだ。朝と夜はついてるけど、昼は……って、昼はお野菜があるから大丈夫かな? それとも別料金になるけど、お弁当にする?」
「お弁当?」
「うん。うち、グロウみたいな人向けにお弁当もやってるんだ。そっちは私担当だから、味の保障はできないんだけどね」
へへへと頭をかいてそういうオードちゃん。
それがかわいいなぁと思いつつも、今はそれ以上に違うことに思考がいく。
オードちゃんの手作り弁当。オードちゃんの手作り弁当が食べられるのか……!
「お、お昼もお願いしようかな……」
その欲だけに突き動かされて、口も思わずそう動く。
そうすると一瞬少し驚いた顔をしたオードちゃんだったが、快くオーケーしてくれた。
「じゃあお昼は私が農場に届けることにしよっか。その方がノルズくんも助かるだろうし」
「え、いいの!?」
「いいよー。今までは一人分だったからグロウに朝食の余り物をつめてたんだけど、二人分ってなるとそうもいかないしね」
「じゃ、じゃあ是非それで! あ、でも朝に山に行くのは……」
「あ、そのことなんだけどね。二人で一緒に行こうよ。農場に一回よって卵
を採って、ついでにその時にいつもの卵の納品をしてもらっちゃえば、手間も減るし」
「なるほど、そうしよっか。じゃあ一緒に朝待ち合わせて出るようにしようね」
「うん、そうしよ! お父さんは私が山に毎日行ってるの知ってるし、ノルズくんは農場で早めに出るの知ってるし、多分疑わないと思うよ」
そうして、明日からの予定が決まるのだった。
次の日の朝、約束通りにオードちゃんと待ち合わせて山に向かって歩き出す。
そうすると、丁度海に向かって歩いているキョウちゃんと出会った。
「なになにー? 早朝デートですか、お二人さん」
「ち、違うよ! 今から私はいつもの散歩! ノルズくんは農場に行くんだよ!」
「あ、そっか。ノルズ今酒場に宿取ってるんだっけ。そういえばオードからそんな話聞いたね」
「もう! だから変な誤解はしないでよね!」
「はいはーい! キョウちゃんはおとなしく朝の海に素材採りに行ってきますよー」
キョウちゃんにはあのエスコートの日から初めて会ったけれども、いつも通りで。
グロウが気をつけろって行ってたけれども、何も気をつける必要なんて……。
「ノルズも一緒に行く? ちょっとだけ私とデートしない?」
なくもなかった!
「あ、あのさ! エスコートの件なんだけど!」
「うん?」
「ぼ、僕あれが恋人同士が行くものとか、そうすることだって知らなくて! だからその、キョウちゃんには悪いんだけど――」
「ストーップ! 違う違う、そんなことわかってるから。もともとお父さんの代わりにって私言ったでしょう? だから気にする必要なし。もうラストダンスの清算も済んだし、エスコート交代の清算っていうか理由もわかったしね」
そう言ってウィンクをしてみせる。
「オードもオードでなんか勘違いしてたみたいだけど、違うから。二人揃って真面目だなー。おまつりくらい楽しまなきゃって気持ちくらいでいなきゃ、だめだよ?」
じゃあねーとそのまま海の方へと行ってしまうキョウの後姿を二人でポカーンと眺める。
「私たち、考えすぎだった?」
「……なんか、そうだったみたいだね?」
そう考えるとなんだか笑えてきて、二人でくすくす笑い出す。
「それじゃ、いこっか」
「うん」
そう言って二人で農場までの道を歩き出す。
さて、ここで困ったことがある。
キョウちゃんのおかげで僕は今これが早朝デートなのではないかと気づいてしまったのだ!
言われてみれば二人きり。
いつも通りといえばいつも通りなのに、意識してしまうともうだめで。
何を話していいのかわからなくて、とたんに黙り込んでしまう。
オードちゃんといえば、鼻歌交じりにルンルンと早朝を満喫しているだけで、特に意識をしている風な様子もない。
喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。でも僕がデートだと思えばデートなんだから、これはデートなんじゃないのか!?
「あ、そういえば」
「はいぃ!」
「え!? ごめん、そんなに驚かせちゃった!?」
「あ、いや。ちょっと考え事してて……こちらこそごめんね?」
「あ、ううん。そんな時に話しかけちゃってごめんね? 大丈夫?」
「大丈夫大丈夫! で、どうしたの?」
「こんなにゆっくりで大丈夫? 確か卵もとるのに時間かかるんだよね?」
「あ、うん。そこは大丈夫。うちは自動で卵が採れる様に、グロウのやつが細工してくれてるんだ」
「へー……。グロウにも特技ってあったんだねぇ……」
「ああ見えてグロウはすごいよ? 畑の水撒きも自動で出来るようにって細工してくれて、おかげで山に登る時間が出来たんだ!」
「じゃあ、こうして私が毎日温泉卵をもらえるのもグロウのおかげなのかー」
「そうそう!グロウのおかげで……」
って、グロウの株を爆上げしてどうするんだよ僕ぅ!
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