農場経営?そんなことより僕は恋が仕事です!

ただのひと

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はじめての秋

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「ノルズちゃん、連れてきたわよー」

 次の日、そう言って牧場の先まで羊を連れてきてくれたのはカノンさんだった。
「わわ! わざわざ連れてきてくださってありがとうございます!」
「いいのいいの。うちはここほど大きくやってるわけじゃないから、そんなに人も来ないしね。にしても、立派になったわねぇ、この牧場」
「そ、そうですかね? そうカノンさんに言っていただけるととても嬉しいです」
「まうで一番最初に迷子みたいにやってきたあの頃とは大違いで、ノルズちゃんも大きくなったわ! 頑張れ、牧場主!」
 そう言ってどんと背中を叩かれ、背筋がぴしりと伸びる。
「が、がんばります!」
 そう言って敬礼して、羊の綱を受け取ると、カノンさんとは別れた。

「おー。とうとう来たか、羊。よし、俺が名前をつけてやろう」
「めいだよ」
「あ?」
「だから、めいだよ。もうずっと前から決めてたから、変な名前にはさせないからね」
「……ラム」
「だーかーらー! 食べ物の名前をつけようとするのやめてくれる!?」
 前にも言ったけど、縁起が悪いからぁ!

「さ、めい。行こうか。君のお家はあっちだよ」
 そう言って手綱を引くと、めいはおとなしくついてきてくれる。
「おーおー、慣れたもんで。さすが牧場主様ですなぁ」
「羊は初めてだけどね」
「だからそれを皮肉ってるんだよ」
 ケッとグロウはいいなあらも、そのままついてきてくれて。
 そして僕に手製の毛刈りばさみを手渡した。

「ほれ、最初の毛刈りだ。失敗しないように気をつけろよ」
「う、うん」
 ドキドキしながらハサミを毛に当てて、ジョキジョキともこもこの毛皮を切っていく。

 十分後。
「ふぅ……」
 そうしてどうにかこうにか全部切り終わったところで息を吐き、綺麗にカットできた毛皮を広げてみた。
 我ながら見事である。

「……まじでやりやがったよ」
「え? なにが?」
「普通失敗するだろうが、どう考えてもー!」
「そこは多分、ゲーム補正?」
「ああ、ゲーム補正……そう言われるとなんか納得せざるえない……」
 ゲームでは毛刈りばさみと使っただけでもこもこの毛皮が取れていたから、その補正の御蔭なんだろう。
 すっきりしたらしいめいは、めぇ~と鳴いて早速牧草地をゆっくりと歩き回り始める。
 どうやら気に入ってくれたようだった。

「まあなにはともあれ、これで全部揃ったわけだな。牛馬羊。それっぽくなってきたんじゃねーか?」
「だね! あとはあの荒れ地をどうにかして牧草地を広げて……あ、厩舎も広げて他にも仲間を増やしてあげきゃ。どんどん忙しくなるよー。グロウも――」
 頼んだよ、と言いかけて、その顔を見て言葉が止まる。
 グロウはどこかバツの悪そうな顔をして、こちらを見ているのだ。
 そうしてひとこと、こう言った。

「わりぃ。その夢、すぐには実現できねぇわ」
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