農場経営?そんなことより僕は恋が仕事です!

ただのひと

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はじめての秋

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「朝からやって来ちゃいましたー!」

 朝、家のドアを開けるとそこにはキョウちゃんが陣取っていた。
「え? え? なに、どうしたの?」
 困惑しつつ用件を聞くと、前に渡されたよりも大きな紙袋を渡される。
「誕生日祝い! いやー、オードから聞いてびっくりしたよねぇ。誕生日が一週間後ならそれならそうと言ってほしかったよー。でもお祝いは二人でするって言うから? しょうがないからプレゼントだけ渡しに来ちゃったよ」
「え、え? あれ、もうそんなに経つっけ?」

 グロウのことで色々あったから、そんなことすっかり忘れていて。
 言われてそう言えば自分の誕生日だったということを思い出す。
 そういえば、オードちゃんと今日はふたりでお祝いしようて約束したんだった。
「オードは多分もう少しあとに来ると思うけど、その前にこのお祝いだけ。今回はチーかまちゃんを描いてみたんだよねぇ。思いの外上手くいったから、飾ってみてやってほしいな」
「あ、ありがとう」
「いえいえ。あ、じゃあどうせ朝のデートもあるんだろうし、私はこれで。ばいばーい!」
 嵐のようにキョウちゃんはそうして去っていって、僕は思わずズルリと肩を下ろす。
 な、何があったんだ今。
 そ、そうだ。チーかま描いてくれたって言ってたっけ。

 紙袋を開くと、そこには上目遣いでボールを咥えたチーかまの絵があった。
 それはとても可愛く描かれていて、いつのまにこんな場面に遭遇したのだろうと思うほどである。

「あ、遅れちゃう!」
 キョウちゃんから言われた通り、今日は朝からのデートでそのままオードちゃんは僕の家に来る散々になっていたはずだ。確か。
 グロウのことで頭が混乱してオードちゃんのことを忘れるだなんてと悔しく思いながらも、卵を収穫してそのまま山の中腹にある温泉まで急ぐ。
 そこにはもうオードちゃんが待っていて、こちらに気づくと笑顔で迎えてくれた。

「ごめん、遅くなって!」
「ううん、今来たところだから。それにしてもノルズくんの方が遅いなんて珍しいね?」
「あ、朝からちょっと強襲に合って……」
「強襲?」
 それから先程のキョウちゃんとのやり取りを話すと、オードちゃんの顔がみるみるうちにむくれていく。
「え、えっと……?」
「おめでとうは私が最初に言いたかったのに! プレゼントだって私が一番最初に……ノルズくんがしてくれたみたいにしたかったのにな」
「オードちゃん……」
 それだけでも十分胸いっぱいです。もう誕生日最高! 誕生日って素晴らしい!

「それにしてもキョウも考えてくれたっていいのに……あ、考えた結果か。うー……来年は絶対私が一番を取るんだから」
「ら、来年……」
 そうか、誕生日は毎年やってくる。それを当然のように来年はって言ってくれるオードちゃんの気持ちが嬉しくて、ごめん、鼻から何か出そう。
「でもそうやって強襲されるんならどうしたら一番になれるんだろう? ……前の日から泊まるとか」
 ぶつぶつとそう呟いて自分の世界に行っているオードちゃん。
 すみません、今泊まるとか聞こえたんですけど気の所為ですよね!?
「あ、ごめん。えーっと……とにかく誕生日おめでとう、ノルズくん! 私からのプレゼントはこれだよ!」
 そうして渡されたのは小さな包。
「これ、今開けてもいいの?」
「もっちろん!」
「じゃあ……」
 そうしてリボンを解いて出てきたのは、小さな犬笛だった。
「犬笛!」
「そう。そろそろチーかまちゃんにも必要かなーって思って。本当はもっっと違うものも考えたんだけど、実用性が一番嬉しいかなって思ってそれにしてみました」
「うわぁ、ありがとう! そうなんだ、そろそろ買わなくちゃと思ってたから嬉しいよ!」
「へへ、それならよかった! これでチーかまちゃんの冬の雪ぞりレース、頑張ってね!」
「うん!」
 そんな風にふたりでまったりとやっていると、いつのまにか十分を過ぎていて。
 今日の温泉卵はすこし固めに仕上がってしまったのでした。

「お、きたきた。待ってたぜ」

 そこで待っていたのはチーかまと遊んでいたグロウだった。
「お前、誕生日なんだって? 爺さんところに行く前にちょっと寄ってプレゼントをと思ってな。ちょっとこっちこいよ」
「え? いいけどなんでわざわざ……」
「いいからいいから」

 そう言ってオードちゃんから僕を遠ざけると、グロウは小さな紙包みを渡してくる。
「なんでこれ、隠す必要が?」
「いいから中身見てみろよ」
「うん?」
 そうして中身を開けると、そこにはシルバーのペアネックレスがあって。

「…………」
「…………」
「……あの、僕そういう趣味は」
「ちっげーよ! これ、いいタイミングでオードにプレゼントするんだよ。なんでお前はそういう発想に至る! 俺も気持ち悪いわ!」
 小声で怒鳴るという微妙に器用なことをしつつ、そのプレゼントをしっかりと僕に渡してくる。
「いいか? 女にはこういう形になるもんも必要だ。だから今回は俺が用意してやったが、今後は自分でしろよ? 俺が作ってやから、鉱石は自分で掘ってこい」
「う、うん」
「わかればよろしい! じゃあな!」
 そのまま背をバンと叩いて、グロウは牧場を去っていく。
 去り際にキューンと鳴かれたチーかまのことを他人なでしてやっていくのがグロウのいいところだ。

「何貰ったの?」
「へ? あ、なんかいいものだから後で確認しろって言われたからわかんないなー」
「へぇ。あのグロウがいいものだなんて言うの、なんだか怖い気もするけど」
「は、ははははは……」
 まさかあなたへのプレゼントですとは言えなくて言い訳をすれば、グロウが悪く言われている。なんかごめんグロウと思いつつも、こっそりその紙包みはポケットの中にしまっておいた。
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