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はじまる冬
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さて、次の鍛冶屋が休みの日のこと。
僕とグロウは防寒着を来て、山の八合目の湖まで来ていた。
手にはクワと鉱石を入れるかご、背には色々なものを詰め込んだリュックである。
「ここのも滝の裏にあるって話なんだけどなー……っと、あったあった。おいノルズ、ここだぞ、ここ」
先行しているグロウが手招きする凍った滝の裏には、確かに人が五人入れるかどうかの洞穴のような洞窟があって、地面は土で出来ている。
「ここを掘っていくのか……」
「おう。ノルズ、お前の出番だぜ!」
そう言って自分もクワで土を耕し始めたグロウは、随分と張り切っている様子だった。
僕はと言えば、張り切っていると言うよりもつい来てしまったみたいな感覚があって……。
「って、あ」
「ん? どうした?」
クワを一振りしたところで、マンホールの蓋のようなの物が出てくる。
「これって……」
「でかした! 一振りでこれとか、お前ついてるなぁ」
その蓋を二人で開けると、はしごがあって下の階へと行けるようになっているようだった。
「じゃ、先に見つけたお前から行っていいぜ」
「え!? 僕が先行なの!?」
「そりゃあお前が見つけたんだからお前が先行だろうさ」
グロウから背を押され、渋々はしごを降りていく。
降りた先は先程と同じような大きさで、やはり地面はまた土であった。
「これを掘って進んでいくのか……」
「鉱石は地下の結構深いところにあるって話だからな。まだまだ先は長いぜ?」
「何階分あるの、これ」
「さあ? 聞いた話だと十階以上はあるらしいけど」
「鉱石持ってあげるのも大変じゃないか……」
ますますげんなりする話にやってしまった感みたいなのがついてきて、更にやる気ゲージが減っていく。
でも思い出すんだ僕! 憧れだってオードちゃんが言ってたじゃないか!
「お、今度はこっちで出たぞ」
僕が考え込んでるうちに地面を耕していたらしいグロウが、再びマンホールのふたを見つける。
「じゃあ今度はグロウが先行で」
「おう、任せとけ」
そうやって僕らは土を耕し、地下へ地下へと潜っていく。
八階くらいに来た辺りから、金鉱石や銀鉱石も見られ始めた。
他にもアダマンタイトとかいう鉱石が出てきてグロウが興奮していた。
なんでも、牧場に役立たせてやるから絶対持って帰れとのことだった。
そうして地下十階。
「うわぁ!」
今までと変わらない光景かと思えば、先行していた僕はいきなりボチャンと水に落ちた。
「グロウ、ここ水! 水が溜まってるから気をつけて!」
「水ぅ!? なんでこんなところに……地下湖ってやつかぁ?」
「深さはそんなにないみたいだけどって……うわぁ……」
「なんだー? どうしたー?」
「いいからグロウも来てみなよ! すごいよ、ここ!」
そこに広がっていたのは、水晶でできた一面の壁。
僕らが持ち出したランプの光を何重にも反射して、綺麗に光の世界を作り出す。
天井を見上げれば僕らの持ってきたランプの光とは違ったエメラルドグリーンの光が行き来をしていて、僕らはしばしそこで呆然とその光景に見惚れた。
「なんだいなんだい、人間の子。また水晶を貰いに来たのかい? 君たちも好きだねぇ」
そのエメラルドグリーンの一つがちょろりと僕らの近くまで降りてきて、話しかけてくる。
「え、妖精? え、本当に?」
「本当にも何も、僕らは妖精だよ。僕らはここで、この町の水の管理をノールオルド様から任されてるのさ。だから水は綺麗だろう? それが僕らの誇りなんだ」
くるくると僕らの周りを妖精は回って、えっへんと胸を張る。
僕らがポカーンとしていると、他の何匹かの妖精が水晶を運んでくるのが見えた。
「君らの望みはこれだろう? いいよ、一個ずつ持っていくと良いよ。そのくらいじゃ、この町の水は汚れたりしないからね」
そう言って僕とグロウの手に一個ずつ水晶を渡すと、妖精たちは天井の方へと戻っていく。
「おや?」
そうして僕らの近くに居た妖精も上へと戻ろうとした時に、僕らの方を見てなにかに気づいたように目を見開く。
「驚いた。君たちはノールオルド様の祝福を受けているんだね。よし、じゃあ特別だ。上まで連れて行ってやるよ」
「え」
それだけつぶやけたかと思うと、僕らの周りがパーっと白い光に包まれて。
気づいた時には水晶を持って洞窟の前に立っていた。
「……今の、夢?」
「いや、でもこれ……」
お互いに何が起きたのかよくわからなくて、顔を見合わせる。
けれども確かに僕らの手には水晶があって、それが今までの出来事を夢じゃないと証明していた。
「お」
「お?」
「うおぉー! フェアリークリスタル、手に入ったぞ! これでマリンにプレゼントが作れる!」
「え、あ。そうだね。僕も手に入れたんだから、これでオードちゃんにプレゼント作れるや」
「今起こったことは訳が分かんなかったけど、とりあえず目標は達成だ! やったぜノルズ、これで俺が最高のプレゼントを作ってやる!」
「あ、うん。何に、しようかな……」
「なんだよ、嬉しくないのか?」
「嬉しいんだけど、さっきの光景が凄すぎてなんだか頭が追い付かないや」
「なにはともあれ、目標も他の鉱石も手に入ったんだ! 腕がなるぜ! お前の分も、最高のプレゼントにしてやるからな」
「うん、ありがとう」
そうして僕らは、プレゼントを何にするのか話しながら山を降りていく。
それでも僕は色々と情報が多すぎて、ついていけなくて生返事が多くて。
ノールオルド様って誰だろう? それより祝福って、なんの話?
僕とグロウは防寒着を来て、山の八合目の湖まで来ていた。
手にはクワと鉱石を入れるかご、背には色々なものを詰め込んだリュックである。
「ここのも滝の裏にあるって話なんだけどなー……っと、あったあった。おいノルズ、ここだぞ、ここ」
先行しているグロウが手招きする凍った滝の裏には、確かに人が五人入れるかどうかの洞穴のような洞窟があって、地面は土で出来ている。
「ここを掘っていくのか……」
「おう。ノルズ、お前の出番だぜ!」
そう言って自分もクワで土を耕し始めたグロウは、随分と張り切っている様子だった。
僕はと言えば、張り切っていると言うよりもつい来てしまったみたいな感覚があって……。
「って、あ」
「ん? どうした?」
クワを一振りしたところで、マンホールの蓋のようなの物が出てくる。
「これって……」
「でかした! 一振りでこれとか、お前ついてるなぁ」
その蓋を二人で開けると、はしごがあって下の階へと行けるようになっているようだった。
「じゃ、先に見つけたお前から行っていいぜ」
「え!? 僕が先行なの!?」
「そりゃあお前が見つけたんだからお前が先行だろうさ」
グロウから背を押され、渋々はしごを降りていく。
降りた先は先程と同じような大きさで、やはり地面はまた土であった。
「これを掘って進んでいくのか……」
「鉱石は地下の結構深いところにあるって話だからな。まだまだ先は長いぜ?」
「何階分あるの、これ」
「さあ? 聞いた話だと十階以上はあるらしいけど」
「鉱石持ってあげるのも大変じゃないか……」
ますますげんなりする話にやってしまった感みたいなのがついてきて、更にやる気ゲージが減っていく。
でも思い出すんだ僕! 憧れだってオードちゃんが言ってたじゃないか!
「お、今度はこっちで出たぞ」
僕が考え込んでるうちに地面を耕していたらしいグロウが、再びマンホールのふたを見つける。
「じゃあ今度はグロウが先行で」
「おう、任せとけ」
そうやって僕らは土を耕し、地下へ地下へと潜っていく。
八階くらいに来た辺りから、金鉱石や銀鉱石も見られ始めた。
他にもアダマンタイトとかいう鉱石が出てきてグロウが興奮していた。
なんでも、牧場に役立たせてやるから絶対持って帰れとのことだった。
そうして地下十階。
「うわぁ!」
今までと変わらない光景かと思えば、先行していた僕はいきなりボチャンと水に落ちた。
「グロウ、ここ水! 水が溜まってるから気をつけて!」
「水ぅ!? なんでこんなところに……地下湖ってやつかぁ?」
「深さはそんなにないみたいだけどって……うわぁ……」
「なんだー? どうしたー?」
「いいからグロウも来てみなよ! すごいよ、ここ!」
そこに広がっていたのは、水晶でできた一面の壁。
僕らが持ち出したランプの光を何重にも反射して、綺麗に光の世界を作り出す。
天井を見上げれば僕らの持ってきたランプの光とは違ったエメラルドグリーンの光が行き来をしていて、僕らはしばしそこで呆然とその光景に見惚れた。
「なんだいなんだい、人間の子。また水晶を貰いに来たのかい? 君たちも好きだねぇ」
そのエメラルドグリーンの一つがちょろりと僕らの近くまで降りてきて、話しかけてくる。
「え、妖精? え、本当に?」
「本当にも何も、僕らは妖精だよ。僕らはここで、この町の水の管理をノールオルド様から任されてるのさ。だから水は綺麗だろう? それが僕らの誇りなんだ」
くるくると僕らの周りを妖精は回って、えっへんと胸を張る。
僕らがポカーンとしていると、他の何匹かの妖精が水晶を運んでくるのが見えた。
「君らの望みはこれだろう? いいよ、一個ずつ持っていくと良いよ。そのくらいじゃ、この町の水は汚れたりしないからね」
そう言って僕とグロウの手に一個ずつ水晶を渡すと、妖精たちは天井の方へと戻っていく。
「おや?」
そうして僕らの近くに居た妖精も上へと戻ろうとした時に、僕らの方を見てなにかに気づいたように目を見開く。
「驚いた。君たちはノールオルド様の祝福を受けているんだね。よし、じゃあ特別だ。上まで連れて行ってやるよ」
「え」
それだけつぶやけたかと思うと、僕らの周りがパーっと白い光に包まれて。
気づいた時には水晶を持って洞窟の前に立っていた。
「……今の、夢?」
「いや、でもこれ……」
お互いに何が起きたのかよくわからなくて、顔を見合わせる。
けれども確かに僕らの手には水晶があって、それが今までの出来事を夢じゃないと証明していた。
「お」
「お?」
「うおぉー! フェアリークリスタル、手に入ったぞ! これでマリンにプレゼントが作れる!」
「え、あ。そうだね。僕も手に入れたんだから、これでオードちゃんにプレゼント作れるや」
「今起こったことは訳が分かんなかったけど、とりあえず目標は達成だ! やったぜノルズ、これで俺が最高のプレゼントを作ってやる!」
「あ、うん。何に、しようかな……」
「なんだよ、嬉しくないのか?」
「嬉しいんだけど、さっきの光景が凄すぎてなんだか頭が追い付かないや」
「なにはともあれ、目標も他の鉱石も手に入ったんだ! 腕がなるぜ! お前の分も、最高のプレゼントにしてやるからな」
「うん、ありがとう」
そうして僕らは、プレゼントを何にするのか話しながら山を降りていく。
それでも僕は色々と情報が多すぎて、ついていけなくて生返事が多くて。
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