不吉な九番目の子だろうと、妾が次代のドラゴニア皇帝に決まっておろう!

スズキヒサシ

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犬ぞりレース part3

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 さて、ここで順位のおさらいをしておこう。
 とはいっても、わかっておるのは棄権した者が三名。
 一番目の姉フレアと二番目の姉コーラル、そして五番目の兄フェニックス。
 三番目の兄ドーンを抜いたので、妾は最下位ではない。
 前にいるのは一番目の兄ホムラと二番目の兄レッカ、四番目の兄アカネ、そして三番目の姉サクラ。
 まだまだ勝負はわからぬ。

 犬たちは颯爽と雪道を走っていた。
 妾はようやくそりに慣れてきたので、時々ふんにゃらころころ~ふんにゃららら~と得意の歌など歌ったりしておる。
 このままいけば前を走る四人に追いつくかもしれぬ。
 そう思っていた矢先、またまた立ち止まっているそりを発見!

「何をやっておるのじゃ?」
「あら、バーミリオン」

 三番目の姉サクラがそりに座り込んでいた。

「バーミリオンも棄権した方がいいわよ。もう、バカらしくなっちゃうわ」

 サクラは膝に頬杖をついて口を尖らせている。
 何のことやら、妾は前方を見た。

「ん? なんじゃこのトゲトゲは?」

 ここより先の雪道が十センチほどの高さのとげに覆われている。
 どうやら氷の棘らしい。

「これは魔術かの?」
「そうよ。アカネったら他の人が追って来れないようにしたのよ」

 なるほど、見事じゃ。
 妾にはできぬな。
 まだ魔術は初心者と言ってもいいからの。
 アカネは国立魔導学園では成績も良いらしく、腕はなかなかのものと聞く。

「炎で溶かしてみたけどキリがないのよ」

 サクラはなんとか炎の魔術で道をならそうとしたらしく、よく見ると妾が来た道は確かに雪が半分溶けていた。

「魔力もなくなってきたし疲れたから、わたしはもういいわ」

 サクラはすっかりやる気を失っておる。
 妾もどうしたものかと首を傾げた。
 このままでは、これ以上進むのは無理そうじゃ。
 炎の魔術で溶かすにしても妾はそれほど魔力がないし。
 竜化して炎のブレスでも吐けば道は進めるじゃろうが、父上に怒られるのはわかりきっておる。
 竜化は妾たち竜族にとってピンチのときの切り札で、おいそれとしてはならぬと決められているからの。
 無理に通って犬たちの足の裏が大変なことになるのもかわいそうじゃし。

「うむむむむむ」

 唸っておると、サクラがちらりと妾を見た。

「バーミリオン、もしかしてまだ諦めてないの?」
「もちのろんじゃ!」
「そう・・・・・・」

 どの勝負事でも言えることじゃが、諦めるのは本当によくよく考えた後にしなければならぬ。
 どんな勝負だって負けるよりは勝ちたい。
 いずれ皇帝となる妾の過去は栄光に満ちているべきだからの。

「まだ何か手があるかもしれぬ」

 妾がそりの上で腕を組んで考えておると、座り込んでいたサクラがなぜか「ふふふっ」と笑った。

「わたし、バーミリオンのそういうところ好きよ」
「ふえっ!? と、と、突然何を言うんじゃ! すすす、好きとか簡単に言う者は信用ならぬとミンミンが言うておったぞ」

 妾があわあわしていると、サクラが胸元からスッと魔術の杖を取り出した。

「*レガービカウ*」

 ふいに妾のそりが犬たちと共に浮かび上がった。

「そんなに魔力が残っていないから百メートルも持たないと思うけど、おそらくこの棘の道もアカネの魔力量ならそう長くはないわ」

 浮き上がったせいで犬たちは脚をばたつかせて混乱していたが、すぐに体勢を整えて宙を蹴って走り出す。

「サクラ!」
「気をつけてね、バーミリオン」
「あ、あの・・・・・・く、苦しゅうないぞ」
「せめてそこは素直にありがとうでしょう」
「あ、そうじゃな。あ、ありがとうじゃ」

 なんだか気恥ずかしくて感謝しにくかったが、サクラが笑ってくれたのでお礼を言えたのじゃ。
 棘の道を二メートルほど浮かんだまま、そりが走って行く。

「やはりサクラなのじゃ~! 最高で最愛の姉じゃ~!」

 妾は兄姉の中で一番優しいサクラを褒め称えながら進む。
 氷の棘に覆われた道はサクラが言った通り、次のカーブを曲がると消えていた。
 そりもゆっくり雪道に降りていく。

「なんとしても前に追いつくぞ! ワンワン隊、サクラの仇討ちじゃ!」

 道は下り坂になり、そりのスピードが上がる。
 犬たちも元気いっぱいに駆けていく。
 そりがゴーゴー滑っていくと、なぜか今度は雪道が黒くなってきた。

「なんじゃこれは?」

 そりの二本のわだちに沿って黒い線が続いている。
 段々と黒い線が太くなっていき、ついに前方に何か点々と動くものたちが見えてきた。

 ワンワン! ワオーン!

 五匹の犬たちがうろついておる。
 首輪は付いたままじゃが、そりも乗り手もいない。

「犬だけなんでここにおるんじゃ?」

 意味がわからぬまま、妾のそりが犬たちを追い越していく。
 すると、なぜか真っ黒で大きなすすの塊が道の真ん中に落ちていた。
 隣には二番目の兄レッカの姿がある。

「ああ、バーミリオン。見てよ、これぇ」
「見ておるが・・・・・・これはなんじゃ?」
「ぼくのそりだよぉ」
「なんで黒焦げなんじゃ?」

 そりは炭化して後ろについた二本の筒からボフボフ煙を吐いている。

「ちょっと改造・・・・・・じゃなかった、走りやすいように手入れしたら失敗しちゃったみたいだよぉ」
「レッカ兄じゃ、改造しちゃダメじゃろ。公平性ってものを知らんようじゃの」
「だって、ただの木の板に乗っかってレースなんてつまらないんだもん」

 二十一才にもなって『だもん』とか言うておるが、レッカは妾たち兄姉の中でもずば抜けた知能の持ち主なのじゃ。
 おそらく魔術か何かで速度を上げる細工をしておったと見た。

「自業自得じゃな。妾、もう行くからの」
「そんなぁ! もうちょっといてよぉ。さっきから誰も来ないんだよぉ」

 自分で作ったらしきトランシーバーを手に振っておるが、近くに騎士や侍従の姿はない。
 みんなレースを見たいので先に行ってしまったのじゃろう。
 レッカは置いていかれるのが嫌なのか、妾のそりをチラチラ見ている。

「このそりは一人乗りじゃからな」
「どうせもう二人には追いつけないって」
「わからんじゃろ!」

 妾はそれならと、後ろでうろついているレッカの犬たちを指差した。

「あの犬たちにまたそりを引かせればいいんじゃ」
「そりが壊れちゃったもん」
「レッカ兄じゃの魔術で作ればいいじゃろ。氷とか土とかで」

 妾がそう言うなり、レッカの目がキラーンと輝いた。

「君は天才だぁ!!」

 叫ぶのと、レッカが氷でそりを作り出すのは同時だった。
 あっという間に妾のそりより速そうで機敏そうな・・・・・・。

「いやもう、それはそり・・じゃなかろう」

 どう見ても二本のスキー板です。

「それで勝っても妾、みとめんからの」
「わかってるよぉ。でもこれでバーミリオンと一緒に行けるね」

 妾は返答せずに、さっさとそりを出す。

「あああ、待ってよぉ」

 慌てて犬を集めて紐で繋いでおるが、あれならすぐに追いついて来るじゃろう。
 妾はワンワン隊と共に前へと急ぐだけじゃ。
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