不吉な九番目の子だろうと、妾が次代のドラゴニア皇帝に決まっておろう!

スズキヒサシ

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会議は踊る、廃墟へと

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 会長のシルマリアが妾の呪いをどれだけ理解しているのかわからぬが、あっさり「ラジャラジャ!」などとアホなSF映画のロボットみたいに了承するわけにはいかなかった。
 妾は手首に嵌めた金のブレスレットをもう片方の手で触りながら言った。

「妾の呪いは一つ間違えば人が死ぬこともある。ここで発動させるなど危険すぎる」

 会長が首を傾げる。

「魔力を吸い取るだけでしょう? そんなに危険かしら?」
「妾は・・・・・・人を死なせてしまったこともあるのじゃ」
「幼少期のことでしょう?」
「そ、そうじゃが・・・・・・」

 妾が物心つかぬ頃のことだ。
 急な発熱で苦しんでいた妾に、一人の侍女が触れ、呪いを受けて亡くなってしまった。
 体質で元々、魔力量が少なかったらしい。
 妾は彼女の顔も覚えておらぬが、十七歳の勤勉な侍女だったと聞いている。

「あなたの心配もわかるけど、呪いを解くためには何でもやってみなければならないわ」
「・・・・・・」

 もちろん呪いは心の底から解きたい。
 でも、人を傷つけるのは絶対にイヤじゃ。
 どんよりと停滞した空気が部室に流れる。
 と、ふいにシェン君が妾に言った。

「おれにやってみればいい」
「えっ?」
「おれは多分、この中で一番魔力量が多いからさ」
「そ、そんなのダメじゃ」

 シェン君は軽く微笑んだ。

「大丈夫だって。呪いが発動したときにミリィに触るだけだろ? それならちょっとだけ触って、すぐに手を離せばいい」
「そううまくいくかどうか・・・・・・」
「ミリィ、学園の初日にブレスレットが呪いを止めたことがあったよな」

 そういえば、そんなこともあったのぅ。
 妾はたった二月ふたつきほど前のことを思い出した。

「ブレスレットですごく痛がってただろ。呪いを解いて、そんなブレスレット捨ててしまえよ」
「シェン君・・・・・・」

 な、なんかちょっぴり、本当にちょっぴりだぞ。
 かっこよく見えたり見えなかったりして・・・・・・。
 思わず頭を左右にぶんぶん振ると、隣のジョーが「なんなのよ」と胡散臭そうに身を引いた。

「ぼくもそれがいいと思う」

 ポーキュリが眠そうにも見える無表情で告げた。

「ウーイェはアラガンの龍人族だから、ぼくら竜族と魔力の質が少し違うはずだよ。それに、その中でも魔力が多いとされる王族だからね。ひめ様の呪いに抗う力があるかもしれない」
「ほらな!」

 シェン君がにっこりしているので、妾も少し緊張がほぐれてきた。
 ポーキュリの言う通りなら、確かに試してみてもいいのかもしれない。

「なんだかよくわかんないけど! そうと決まればすぐにやりましょう」

 そう言うジョーは本当にわかってなさそうだった。
 妾たちは部屋の中央のテーブルや椅子を端に片付けて準備に取りかかった。

「前から気になっておったんじゃ。これは何なのじゃ?」

 テーブルを片付けると床に古そうな魔法陣が現れる。
 最初に部室に来た時からこの魔法陣はあった。
 当初はこの上に不気味な祭壇まで置いてあったが、撤去して、普通のテーブルに置き替えたのじゃ。

「黒魔術の魔法陣よ」

 会長が答えながら床を指差す。

「これは、わたしが研究して描いたの。でも魔法が起動したことはないわ。条件が合わなかったんでしょうね」
「どうして会長は黒魔術なんか研究してるの?」

 不思議そうにジョーが訊ねると、会長は笑った。

「もちろん異界との繋がりを持つためよ」
「そ、そうなのか?」

 ここにも異界関係者が!?
 驚いた妾に、会長が頷く。

「わたしの父は病気で急死したことになっているんだけど、実際にはホロウバステオンで遺体となって発見されたの。何年も前のことよ」

 ホロウバステオン・・・・・・。
 どこかで聞いたような名前じゃ。
 妾はハッと気づいた。
 あの子供用ホラー小説『ホロウバステオンのゆうれい』じゃ。
 去年読んで震え上が・・・・・・ってはいないぞ。
 ホラー小説なんて作り物じゃからな。うむ。

 会長は続けて言った。

「父の遺体はどう見ても普通ではなかったから、呪われて死んだんじゃないかって噂になったの。もともとホロウバステオンの廃墟は不吉な場所で有名だったから」
「会長の父君はなぜそんな廃墟に?」

 シェン君も訊ねる。

「わたしの父は考古学が趣味だったんだ。あの廃墟はまだあまり人が入っていない場所だったから、興味を惹かれて調べに行ったのさ。でも何かが起こって・・・・・・」

 残念そうな会長の横でポーキュリが後をついで答えた。

「会長は父君が呪われていたのなら、それは黒魔術だろうと考えたんだ。本来、呪いというのは魔術をしきことに使って行われるからね。そして、ホロウバステオンが異界と繋がる場所の一つであることにも気づいた。それはぼくが教えたんだけど」

 会長が頷く。

「父と同じ廃墟巡りを趣味とするポーキュリのおかげで、ホロウバステオンに異界への入り口があるらしいことがわかった。ただ、その入り口を開くにはこれまた黒魔術が必要だったんだ」
「だから黒魔術の研究をしてたんですね」

 ふむふむとジョーが理解できたわと嬉しげにしているが、妾はちょっと恐怖を感じた。
 異界の入り口なんか開いちゃいけないはずじゃ。
 もしホロウバステオンに入り口があって、普段は閉じているなら、ずっと閉じていた方がいいに決まっておる。
 会長は父君の死の真相を知りたいのじゃろう。
 妾と動機が似ておる。
 異界からの干渉という点では同じかもしれぬ。
 妾は自分にかかった呪いを解きたい。
 じゃが、それが想像以上に得体の知れないもので、もしかしたら今よりずっと悪い結果をもたらすかもしれないとしたらーーー。
 それでもやるべきだと言えるじゃろうか?
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