高校生、戦国を生き抜く ⚠️〜無自覚⁇勘違い⁇居候のドタバタ大騒動〜👀

神谷アキ

文字の大きさ
2 / 27
1、戦国時代へ

2

しおりを挟む
翌日。
昨日と同じ時間に小屋で待っていると、ガサガサと草をかき分ける音。

「ごめん、じいが離してくれなくて」

「じい?」

「小言ばかり言う人のこと」

ごまかされた気がしたが、それ以上は聞かないでおく。

代わりに、風呂敷に目がいった。
遅れてきた敏之の膝の上に、小さな風呂敷が置いてある。

「待たせました。これ、家から持ってきたんです」

そう言って広げられた布の中には、丸い白い饅頭が並んでいた。

「……ま、饅頭!?これ、食べていいの!?」

「もちろん。そのために持ってきたんだから」

「うわっ、ありがと! いただきます!」

俺の手が勝手に動く。
久しぶりの甘味。
一口かじると、やさしい甘さがじわぁっと広がった。

「……うま……」

言葉にならない。
あんこの香ばしい甘さが舌に染みて、涙が出そうになる。

現代じゃコンビニで百円で買える。
でも、ここではきっと貴重なご馳走だ。

「そんなに気に入った?」

ちびちび食べる真人に、敏之が笑ってもう一つ差し出す。
敏之が笑ってもう一つ差し出す。

「……いいのか?」

「ええ。ほら、これもどうぞ」

二つ目も遠慮なくいただく。

その様子を見て敏之が声を立てて笑った。
その笑いが妙に心地よくて、俺まで笑ってしまう。

二つ目もすぐに食べ終わり、手についた餡をぺろりと舐める。

そんな中、敏之が真面目な顔でこちらを見た。
しばらくして、敏之がぽつりとつぶやいた。

「昨日話していたこと、もう少し詳しく教えてくれない?」

昨日――畑仕事が大変だの、朝が早いだの、味が薄いだの。
愚痴ばっかりだったのに、それでも彼は真剣に聞いてくれる。

それが嬉しくて、止まらなかった。
世話になってるお爺ちゃんお婆ちゃんへの感謝、不安、畑の臭さ、疲労。

全部吐き出すと、敏之は顎に手を当てて静かに聞き、最後にこう言った。

「よく頑張ったね」

その一言に、胸が熱くなった。
この時代で初めて、“認められた気がした”。

今度は敏之が自分の話をした。
家が厳しいこと、昨日は家を抜け出したこと――。
彼も彼で、いろいろ抱えているらしい。

楽しい時間はあっという間だった。
日が暮れる前に、それぞれ家路につく。

就寝する準備を整え、体を横たえた後。

「そういえば…敏之ってどこに住んでいるんだ?」

そんな疑問を胸に、真人は眠りについた。


一方、斎賀家――。

夜の屋敷は行灯の明かりだけが淡く揺れ、しんとした静けさに包まれていた。

家臣たちの間では「若様がまた屋敷を抜け出した」と小声が交わされていたが、当主は黙して語らない。
ただ「目を離すな」とだけ命じ、皆は従うしかなかった。

その頃、敏之は自室でひとり、障子にもたれてクスッと笑っていた。

「朝が早すぎる、肥料が臭い……ふふっ」

真人の顔を思い出すと、自然と口元が緩む。
“堆肥”という聞き慣れない言葉も、やけに耳に残っていた。

「牛糞を発酵させる、か……面白い」

彼は障子の向こうに声をかける。
「誰かおるか」

すぐに家臣の一人が現れた。
「如何なさいました?」

「近くの農村で試してみてほしい。『堆肥』というものを」

敏之は真人から聞いた方法を説明する。
牛糞に空気を入れる、枯葉を混ぜる――理屈はわからない。

だが、なぜか妙に説得力があった。

「臭くないんだから!」と必死に力説していた真人の顔を思い出し、思わず笑みがこぼれる。

「一体どこで暮らしてきたのか……」

不思議な青年だ。
そう呟いて蝋燭の火を吹き消そうとしたその時――。

「若様! また屋敷を抜け出されましたな!」

障子をガラリと開けて入ってきたのは、野呂田寛斎――通称“じい”。

「じい、あの小屋に行ったんだけど、人がいたんだ」

「ほう……どんなお人で?」

「同い年くらいで、とても面白い人だよ。畑仕事が大変だとか、堆肥を撒けばいいのにとか言っててね」

「堆肥……ですか……。それはともかく! 護衛も付けずに!」

くどくど続く小言に、敏之は苦笑する。

「わかってるよ。でもまた会いたいんだ」

「若様……」

「それより、じい!これから母上に会いに行くから、支度を」

「まったく……。かしこまりました」

じいが渋々頭を下げる中、敏之は口元に笑みを浮かべ、静かに部屋を出ていった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

聖女召喚に巻き込まれたけど、僕は聖者で彼女よりも優れた能力を持っていた。

アノマロカリス
ファンタジー
僕の名前は、凱旋寺聖(がいせんじひじり)という厳つい苗字の高校2人生だ。 名前から分かる通り、僕の家は300年続く御寺の一族だ。 その所為か、子供の頃から躾は厳しく育てられた…が、別に跡を継ぐという話は出た事がない。 それもその筈…上に、二人の兄と姉がいるからだ。 なので、兄や姉が後継を拒まない限り、跡目争いに巻き込まれるわけではないのだ。 そんなわけで、厳しく育てられては来たが…抜け道を探しては良く遊んでいた。 …という、日頃の行いが悪い事をしていた所為か… まさか、あんな事に巻き込まれるなんてなぁ? この物語はフィクションです。 実在の人物や団体とは一切関係がありません。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

「ただの経費削減ですが?」 銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです

空木 架
SF
日本の企業で総務として働く星野明日虎(32歳)は、ある日突然、見知らぬ宇宙の帝国へと転移してしまう。彼が配属されたのは、整理整頓もままならない「銀河最弱」の補給艦隊だった! ひょんなことから戦艦の艦長に任命されてしまった明日虎だが、宇宙の戦い方など全く分からない。そこで彼が武器にしたのは、長年の社畜生活で培った「経費削減」と「在庫管理」のスキルだった。 「弾薬の無駄遣い禁止!」「エンジンはこまめに切れ!」――ただ徹底的なコストカットと業務効率化を推し進めただけなのに、それがなぜか「天才的な軍事戦略」として周囲に大勘違いされていく。 個性豊かな仲間たちと共に、最弱だった倉庫部門を最強の組織へと育て上げる、痛快・お仕事&成り上がりSFファンタジー! ※この作品は、「小説家になろう」「カクヨム」でも連載しています

処理中です...