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2、居候が3人
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しおりを挟む鉄の予想が当たったようだ。今日、また会議が開かれて宣教師の出迎えに敏之が推薦された。1週間後にここにやってくるらしい。
今は、俺、敏之、鉄の3人で話し合っている。
「やっぱり敏之が推薦されたな」
「一体何を仕掛けてくるのか……」
宣教師がくるなんて初のことだ。初めての試みで絶対に失敗してはならないのに、他のことまで心配しなくちゃいけない。敏之はもう少し怒ってもいいと思うんだけど。
前に誰かが言っていたよな。属している組織が痛手を被っても、自分個人の利益を求める人。まさにこれだ。
「とりあえず、どんな手でくるかわからないうちは接待の準備だけでも完璧にしよう」
「そうだな」
「鉄も前みたいに、何かわかったことがあったら俺と敏之にも教えて」
「わかった」
ひとまずそこで解散をして、それぞれの部屋に戻った。
俺は自室に戻って、宣教師のことを考える。宣教師はルイス・フロイスが有名だよな。
教科書を開いて、ルイス・フロイスを探す。
「あった! えーと、ポルトガルのカトリック司祭、宣教師なのか。織田信長や秀吉と関わったから有名なんだ。日本史で先生が話してたな。宣教師の来日がきっかけになって南蛮貿易が活発になったとか。まてよ……」
ルイス・フロイスについて読みながら宣教師とはどんな人だったかを調べる。でも、南蛮貿易について思い出したときにあることが閃いた。
「たしか金平糖も宣教師からのプレゼントだったよな……。信長もその形と味に驚いて、金平糖がお気に入りになったんだよ。じゃあ、今回来る人も外国からいろいろな物を持ってきているってことだよね?」
金平糖はとても珍しくて、公家や一握りの武士しか食べられなかったって聞いたけど、それ以外にもたくさん持ってきているはず! 戦国時代の人には価値のないものでも、俺からしたら凄い価値のものや、美味しいお菓子があるかもしれない!
これは何としても宣教師の人からおこぼれを貰わないと!
戦国時代に来る前、テストの日に剛が雑学なんて役に立たないみたいなことを言っていたけど、これ知ってるのと知らないのじゃかなり違うからな! 日本史の先生ありがとう。
日本史オタクの先生に感謝をして、絶対に今回の接待は失敗できないと再確認する。もしこれで仲良くなったら、たくさん美味しいものや珍しいものが手に入るんじゃ?
ニヤニヤとして、ここでは食べられないお菓子に囲まれている自分を妄想する。甘いものも最近食べてないし、お菓子が食べたい!
敏之達とは別に、俺は俺でどうしたら宣教師の人たちに気に入ってもらえるのかを真剣に考えた。
そして一週間後。宣教師達の来る日。
「もうできるだけのことはやった。あとは、もうなるようになれだ」
「おい真人は何もしてなかっただろ」
「いや、お菓子のためにたくさん考えたんだ」
「お菓子?」
鉄と軽口を言い合って、敏之の部屋に向かう。いつもよりピシッとした格好をして小姓さんと話をしていた。
「今のところ問題はない?」
「うん、大丈夫。確認したけど、食事や広間も準備はしっかりできているって」
「いつ頃来るんだ?」
「あと一刻ほどみたい」
「真人、俺は広間に入れないから何かあったら真人が敏之を手助けしてやれよ」
「言われなくても」
「鉄さんはどうしてるの?」
「俺は広間の外にいるから、何かあったら呼べばいい。でも、多分他の家臣達に入らないようにじゃまされるはずだ」
鉄がこう言うのも、広間には最低限の人しか入れないらしい。これも二郎丸派の策なのはわからないが。
「ところでさ、宣教師って布教をする許しを求めてくるんでしょ? それはどうするか決まっているの?」
宣教師の人達がくる根本的な理由を尋ねる。布教を許さないところも多いらしいからね。
「うん、父上達と話し合って布教活動のみに止めるなら許可するって。その見返りとして、鉄砲やそれに伴う技術を教えてもらう」
「布教活動を許可するだけで、そんなに条件があるの?」
「宣教師達は、まず第一に布教することを目的にしている。他にも様々な理由があるだろうけど、自分たちが日の本に居続けるために少しは条件をのむと思う」
「鉄砲は今やどこの武将でも欲しがっているからな」
「そう。最低限、鉄砲のことは確保したい」
すごいな。俺より若いのに家の将来をかけて交渉するとは。さすがと思いながら、3人で談笑をしていた。
1時間くらい話していると宣教師の人達が到着したようだ。小姓さんが知らせてくれる。
「よし、行くか敏之」
「そうだね」
「頑張れよ」
鉄から頑張れと言葉をもらい、広間へ歩いていく。どんな人なんだ、宣教師。
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