高校生、戦国を生き抜く ⚠️〜無自覚⁇勘違い⁇居候のドタバタ大騒動〜👀

神谷アキ

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2、居候が3人

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宣教師とは。
真人の知識は教科書の片隅にあるものばかり。実際に目にするのは初めてだ。


広間の前に着くと、少数の家臣がずらりと並んでいた。
誰もが背筋を伸ばし、ざわついた空気を必死に抑え込んでいる。

「真人、ここからは頼むね」

敏之が小さなで告げる。
俺はこくりとうなずいた。

敏之の後に続いて入っていく。
皆が敏之に頭を下げるから、真人まで偉くなったみたいだ。

そのまま真っ直ぐ歩いて行き、段差のあるところに敏之が座る。
俺は上座に近い場所で指定された位置に座り込んだ。

するとすぐに、小姓さんが声を上げた。

扉が開かれる。
差し込む陽光の中、異国の装束をまとった一団がゆっくりと足を踏み入れてきた。
背は高く、肌の色も、髪も、俺たちとはまるで違う。まさに歴史の教科書から抜け出してきたような光景だった。

思わず口を開けそうになるのをこらえる。
今はただ、敏之の交渉を見届ける役目だ。

俺は息をひそめ、胸の鼓動を抑えようとした。

――南蛮の客人。
この出会いが、斎賀の未来を大きく変えるのかもしれない。


 若様モードの敏之が命令する。皆一斉に頭を上げ、敏之を見た。

「はるばるご苦労。よくぞ参った。名を名乗れ」

「お招きいただき感謝いたします。私は、パッシデ・ムーバと申します」

思った以上に流暢な日本語だ。
独特のイントネーションはあるが意味は通じる。通訳の出番はほとんどなさそうだ。

「どこで学んだ?」
「三年、日本に住んでおります。人々と話して覚えました」

「そうか。では、この地へ来て何を望む」

 敏之が本題を切り出す。家臣たちの視線が一斉にムーバへ注がれる。

「私はこの国でキリスト教を広めたい。イエズス会は主の教えを世界に広げる使命を負っているのです」

「キリスト教か。新たな宗教を広めるという行動に異論はない。しかし、この地で広めるためには条件が二つある。まず鉄砲の取引。二つ目は、それに伴う技術の教授だ」

ムーバは隣にいる人と数言交わし、やがて頷いた。

「一存では決められません。他の宣教師と相談し、後日答えをお持ちします」

そう言って深く頭を下げた。
続いて、横に置いていた風呂敷から何かを取り出した。

「こちらは、祖国から持ってきたものです。コンペイトウと絹の刺繍です。コンペイトウは、他の大名が召し上がって大層気に入ったようでしたので、お持ちしました」

コンペイトウを渡した大名って、ひょっとして信長だったりして。

小姓さんが敏之の近くまで持ってくる。
綺麗な容器に入ったコンペイトウと模様が刺繍されている絹織物だった。

「これは……」
「なんと美しい……」

息をのむ家臣たち。真人も身を乗り出すと、模様がはっきり見えた。

「あ、フラミンゴだ」

刺繍されていたのはフラミンゴだった。
沢山のフラミンゴの模様が適切に配置されていて綺麗だ。

ポルトガルってフラミンゴがいるんだな。
テレビでしか見たことなかったけど、大群とか1度見てみたかったよ。
ピンク色の体毛って不思議だよな。

1人でうんうん納得していると、ムーバさんが驚き表情で真人を見ている。
えっ?

「あなた、この鳥を知っているのですか?」

「詳しくは知らないけど、ピンクで細長い鳥っていえばフラミンゴしか。ポルトガルにいるんですね」

「はい。その通りです。特にテージョ川という所は、河口一帯がフラミンゴやコウノトリなどの北からの渡り鳥の越冬地となっているんです」

「へえ、そうなんですね。初めて知りました」

宣教師、もといムーバは、じっと真人を見ている。
敏之も真人を凝視している。

何!?もしかして無礼だった!?

謝るべきか考え始めたところで、料理が並べられる。
いつもより豪華な食事でおいしそうだ。

この料理が食べられるだけでも、参加した意味がある!

すると、ムーバが豆腐を指差した。

「これはチーズですか?」

――チーズ!? 耳がダンボになる。

「ムーバ殿、チーズとは?」

「はい。これとよく似た、牛の父から作る食物です。柔らかいですがこれは何でしょう」

まあ、少しだけ見た目は似てるわな。
だが、それよりも大切なことがある。

今チーズと言ったよね? この時代チーズがあったの!?

「ムーバさん!」

 勢いよく声を上げた俺を、皆が一斉に見る。広間中がぽかんとしているが、知ったことか。

「チーズがあるんですか!?」

ババッとムーバさんの元へ駆け寄る。
何を隠そう、俺は大のチーズ好きなのだ。

家族で行くファミレスは、必ずチーズインハンバーグかチーズたっぷりドリアを注文していた。

何年か前に流行ったチーズタッカルビは美味しすぎて、定食屋にもぜひ導入すべきとバイト先の店長に直談判したくらいだ。
即却下されたけどね。

ムーバさんは体を引きながらも答えてくれる。

「はい。祖国ではよく食べていました」

その瞬間、俺の中でスイッチが入った。
今日の使命はチーズを手に入れること。

真人はチーズを手に入れるため、慣れない交渉を始めようとした。

……が、開始前に気づいた。
そもそも交渉ってのは「自分の利益と相手の利益を照らし合わせる」ことである。
でも真人は、差し出せるものが何ひとつない。

鉄への褒美だって夕飯の焼き魚だったのだ。
これでは話にならない。

だから残された手は――土下座するのみ!

「ムーバさん! お願いします、チーズを分けてください!」

「田辺殿!?」

突然の土下座に広間がざわめく。
普段は小心者の俺だが、チーズとなれば別だ。

ここで逃したら、現代に帰るまで口にできない! 
チャンスを逃してたまるか!

畳に額をつけ、返事を待つ。
やがてムーバが驚き混じりに言った。

「あなたはフラミンゴだけではなく、チーズまで知っているのですか」

「もちろん! そのままでも最高ですが、火を入れてとろけたら……もう絶品ですよ!」

口に出した途端、想像が暴走する。チーズフォンデュにパンを浸し、ソーセージに絡めて
……あぁ、食べたい!

「……武士は私たちに頭を下げないと思っていました。チーズはそこまでする価値があると?」

当たり前だ! 
俺は武士じゃないからプライドもない。

チーズのためなら額の皮くらいすり減らしてやる!。

「はい! チーズを考え出した人に感謝したいくらいです。ポルトガルのチーズは品質が高いって有名ですよね。小さな工房で作られて流通が少なく、なかなか手に入らないとか。俺、ずっと食べたかったんです!」

実際、ポルトガル産は希少で日本じゃまず口にできない。
そう思うと余計に渇望が募る。

――チーズ……食べたい……!

頭の中がチーズに埋め尽くされていた時、敏之の焦った声が飛んできた。

「ムーバ殿!?」

なんと俺に向けて頭を低く下げている。

え? 何が起きた?

「私は、この日の本に住んでいる人々に異教徒めと言われて石を投げられたこともあります。主の教えを広めるためには仕方がないことと、耐えてきました」

「そ、そんなことが」

「はい。なので、あなたのように私の故郷を知り、食文化を認めてくれる方は誰1人としていませんでした」

それはそうだろうなぁ。この時代に知られていたら仰天するもん。

「私も、チーズは大好きです。あなたのように私の国を認めてくださる方に敬意と感謝を示したいと思います」

……いやいや、そこまで大げさに言わなくても。
でも感謝されてるみたいだから、素直に聞いておこう。

「先ほどは『仲間と相談してから』と申しましたが……私の権限で、もっと深く関わらせていただきたい」

「……では!?」

敏之の声が一段高くなる。

「はい。布教活動を認めていただけるのであれば、代わりに鉄砲とその技術をお伝えしましょう」

「おお!」
「これで鉄砲の件は……!」
「さすが敏之様!」

家臣たちが色めき立つ。
やった、敏之の交渉は大成功だ!

 ……で、俺のチーズは?

そう思ってムーバさんに視線を送ると、にっこり頷いた。

「もちろんチーズも差し上げます。今から我らの拠点に来ますか?」
「いいんですか!? 行きます!」


即答だ。行くに決まってるだろ!

ようやく食べられる……パンがないからそのままか? いや、溶かして野菜につけるのもありだし、無理やりグラタンもどきにしてみるのも……。

妄想でメニューを膨らませているうちに、敏之とムーバさんはいつの間にか真剣な話を進めていた。
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