高校生、戦国を生き抜く ⚠️〜無自覚⁇勘違い⁇居候のドタバタ大騒動〜👀

神谷アキ

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2、居候が3人

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「では、こちらにて決定ということで」

細かい取り決めまで終わったらしい。
敏之とムーバさんは二時間近く話し込み、時々通訳も交えながら合意内容を記録していた。

……その紙に「チーズ輸入」って一行、こっそり書いてくれないかな。

早く拠点に案内してほしい。
俺はもう、昔のポルトガル産チーズで頭がいっぱいだ。

「今日は、お時間をいただき感謝します」
「こちらこそ、良き取引ができた。礼を言う」

ムーバさんが頭を下げ、退出の準備を始める。俺も腰を上げた。

「敏之、俺ムーバさんと一緒に拠点に行ってくる」
「わかった」

軽く頷いてくれた。
二郎丸派が何か仕掛けてくると思っていたけど、結局最後まで何もなかった。

ムーバさんに続いて部屋を出ると、外で鉄が柱にもたれて待っていた。

「どうだった?」
「これからムーバさんの拠点に行く」
「は? あの宣教師の?」
「うん。チーズをもらいに」
「ちーず?」
「俺の大好きな食べ物」

説明になってないけど、鉄は黙ってついてきた。

「俺も行く。で、交渉は?」
「大体飲んでくれたらしいよ」
「は? ほんとか? 鉄砲まで?」

鉄が素で驚いている。
真人も驚いたが、まあチーズが手に入れば何でもいい。

門の前まで来たところで、スキップをしそうな衝動を抑えていると、ムーバさんがこっちを見ていた。

なんだろう。取り敢えず笑っとこう。
そう思ってにっこり笑おうとすると、突然鉄が叫んだ。

「伏せろ!」

「うわっ!」

鉄に頭を押さえつけられ、地面に叩きつけられた。鼻を強打して涙目になる。
ブッと変な声が出てしまった。

手よりも先に顔がついてしまったおかげで鼻が痛い。
句を言おうとした瞬間、すぐ横に矢が刺さっていた。

「ひっ」

戦で矢を受けた記憶がフラッシュバックして体が硬直する。
鉄は射手のいた方向を睨みつけたが、すでに逃げられたようだ。

そういえばムーバさんは?

「ムーバさん! 大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」

驚いてはいるものの、ケガはしていないようだ。
胸を撫で下ろす。

鉄は苛立たしげに吐き捨てた。

「やり方が汚ぇな。最初からこれを狙ってたか」
「たしかに……。城で客人がケガでもしたら、接待役の敏之の責任になるもんな」

「誰がやったとかわからないの?」
「矢を放った瞬間に逃げ出したみたいだ。今からだと追いつけない」

悔しそうにしている鉄を見ていたが、真人はハッとして慌ててフォローをする。

「あの、これは敏之が命令をしたとかじゃないんです。今いろいろと派閥争いみたいなのが起きてて、多分それで……」

これで取り引きはやめだって言われたらどうしよう。
そうなったら、計画した家臣全員に、鉄に頼んできっつーいお仕置きをしてもらおう。

鉄が顎で人をこき使う様子が目に浮かぶ。
ムーバさんを見ると、思っていたよりは怒っていない様子だが、どうか取引破談になりませんように。

「私は、大名には複雑な事情があることを知っています。かつて会った大名は、弟を始末したと笑っていました。危なかったですが、敏之様を恨んでなんていません」

……その大名って、やっぱり信長じゃないか?

「では行きましょう」

ビクビクしながら門をくぐり、周りを注意しながら進んで拠点についた。
斎賀に居るときの仮住まいだそうで、結構大きい。

中に進むと中は南蛮の品々であふれていた。
よくわからない物も幾つか置いてあるが、金平糖がたくさん入っている容器を見つけた。

「金平糖がいっぱい……!」
「これは自分たち用や贈答用のものです。こちらではコンペイトウといいますが、故郷ではconfeito、つまりコンフィエイトと発音します」

「なるほど」
「食べ物!? なあ、この綺麗なやつ食べていいか?」
「ばか! 砂糖の塊だぞ、超高級品!」
「砂糖!?」
「少し違うけどほぼ砂糖だったような」

 金平糖を食べたそうにしている鉄と言い争っていると、ムーバさんがじっと真人を見つめてきた。

お城でも何度か見ていたけど、こうもあからさまに見られると居心地が悪い。

「あなたは、私の故郷のことをよく知っていますね。どうして我が国のことをそんなに知っているのです?」

答えようもない質問に、緊張で喉をごくりと鳴らした。

――やばい。答えようがない。

いつの間にか鉄もこっちを向いているし、逃げ場がない。
こうなったら、最終奥義のあれを使おう。

とっさに「記憶喪失」を切り札に使おうとした、その時。

「実はですね、俺記憶が……」

「ムーバ様! またカメレオンがいなくなりました!」

説明しようとしたとき、ものすごい勢いで部屋に駆け込んできた男が叫ぶ

「またか!」
「体の色を変えるので見つけにくいのです。献上品なのに困った……」

「真人、かめれおんって知っているか?」
「色を変えて周囲に溶け込む生き物。へー、カメレオンもいるんだ」

「あなた、カメレオンも知っているのですか?」

耳ざとくムーバさんが振り返る。
しかし、そんな俺に構うことなく、急かされて下にカメレオンを探しに行った。


「日本の大名にカメレオンを献上したって、ちゃんと育てられるのか?」
「すぐに死んでしまう生き物なのか?」
「わりと早いけど、それでも数年は生きられるはず。そうじゃなくて、餌が難しいんだ。他にも食べるかもしれないけれど、基本的には虫しか食べない。カメレオンのためにわざわざ虫を捕まえる人なんて、屋敷にいるか?」

「いや、思わねえな」
「でしょ?」

二人で笑っていると、若い男の人がやってきた。
何かあったのだろうか。

「ムーバ様からの伝言で、チーズを持ってまいりました。直接渡したかったのですが、カメレオンを見つける必要があり、すみません、と謝っておられました。また、いつでもお越しくださいとのことです」

「え? 俺また来ていいんですか?」

「はい。そうおっしゃっていました」

 チーズを受け取りながら考える。――ということは、なくなったらまたもらいに来てもいいってこと!?

手にしただけでもかなりの量だが、こんなの一瞬で消えるに決まっている。
なんて優しい人だ!

よし、今度は現代風のチーズ料理を作って食べてもらおう。

「ありがとうございます! また来ますね!」

そう言うと、笑みを浮かべながら見送ってくれた。
城へ戻る途中、俺は鉄に自慢げにチーズを掲げてみせる。

「鉄! やっと念願のチーズだ! なんちゃってドリアでも作ってみるか。あとはおやつに部屋で食べよ」
「そんなにうまいのか?」
「もちろん! 溶けたチーズのまろやかさは格別だ。敏之にも食べさせてやりたい」
「なあ、それ俺も食べたい」
「いいよ。無くなったらまた貰いに行けばいいし」

帰り道、ずっとチーズの良さを熱弁したが、だんだん鉄の返事が薄くなってきた。
夕飯の皆がいる時にまた説明しよう。
そう決めて、二人で敏之の部屋に入る。

「敏之、見て! これがチーズ!」
「真人! 門で矢を射られたと聞いたが、本当に無事か?」
「あ、うん。鉄が庇ってくれた」
「誰も怪我はなかったけど……あまりに卑怯だ」

そうだった。チーズに夢中で忘れていたけれど、矢の恐怖がよみがえり背筋が冷える。

「せっかく交渉が無事に終わったのに、最後の最後で妨害してくるなんて」
「ほんとだよ。……でも、条件はほぼ通ったんだろ?」
「うん。最初は渋っていたのに、真人の話を聞いたあと考えを変えてくれた。今回は真人に助けられたね」
「そんな大袈裟な……」

思わず頬が熱くなる。
熱弁してたらいつの間にか了承もらえただけなんだけど、結果オーライだ。

「二郎丸派は面白くないだろうね。敏之を失敗させようと推薦したのに、逆に大成功してしまった」
「だからこそ警戒が必要だよ。次に何を仕掛けてくるかわからない」
「おー、こわ!」

大げさに震える鉄。
その姿にツボってしまい、真人は腹を抱えて笑い続けた。
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